『D.LEAGUE』特別対談 第7回

HAL×神田勘太朗『D.LEAGUE』対談 互いの価値観を理解し合って築いていくチームとダンスカルチャー

「ダンサーとして社会人として、人間性の成長を見る」(HAL)

ーーディレクションする上での苦労や工夫などがあれば教えてください。

HAL:難しいなと思ったのは、私みたいにチームとして活動してきたメンバーが少なかったことです。振付や流れを組めたりしても、上手く踊ってもらうためにどんな言葉を選んだらいいかのアイデアがなかったり、人とどう接して作品を作っていけばいいのかを理解できていなかったりする。だから彼らに任せるとケンカまではいかなくても、気まずい空気が出て制作が進まない時もあって、結局は私が入った方が早かったりもしました。でも人との繋がりは大事だから、ケンカしてでもやらないとダメですよね。

神田:作品以前に人間関係は大事で、他のチームも同じです。最近はユニットとして、その現場で一緒に踊ったら解散するスタイルが主流なので、ケンカしても続けるチームを経験する人は少なくなっているんですよ。でも『D.LEAGUE』のチームは契約なので途中で辞めることはできない。嫌な人とも一緒にいい作品を作るために頑張るというのはサッカーなどのスポーツでも同じなので、いざこざを乗り越えていくことで精神的にタフになっていくんじゃないかなと。

HAL:人間性の成長を見ています。ダンサーとしてもそうですし、仮にダンスを辞めて社会に出ても、合わない人と仕事をするためには態度や言葉が大事。そう思っているので「言葉を勉強してこい」と指導した時もあります。メンバーがもし「自分もディレクターになりたい」と思うのであれば、その部分も成熟する必要があるので、今期は伝える勉強をしてもらいながら作っていますね。

神田:メンバーが替わったり、抜けたりする時に成長が起こるし、ケンカした後に結束することもある。会社やクラスでも合わない人がいたら、すぐ諦めることもあると思いますが、僕も経験的に乗り越えたからわかるんです。みんな得意な分野が違うんですよ。ブルドーザーみたいに進む人もいれば、堅実な人もいるので。MONOLIZのメンバーはどうですか?

HAL:以前はYUMERIに男気がある感じでした。今のメンバーの性格的には全員ガツンと行くタイプではないかもしれません。「今時の子」という感じで、人の目を気にするというか、当たってしまいそうな人を避けたり、自分を出し切れてない部分もあったんじゃないかなと。その点、今季から加わったkeijiroはジェンダーレスで「行けー!」というタイプなので今後も楽しみですね。年齢差とかも、うじうじ気にしないように伝えていこうと思ってます。

神田:お母さんですね(笑)。

ヴォーグのヒールダンスを貫く挑戦と工夫

ーー昨シーズンはヒールによるダンスについて、黒須洋嗣さんとKAORIaliveさんからかなり厳しいコメントが飛んだこともありました。今振り返るといかがですか。

HAL:普段ヒールで踊っていないと、わからないこともあるので仕方ないと思っていました。ヴォーグのヒールは、日本で主流のヒールの踊り方と全然違うんですよ。ヴォーグは膝を曲げないといけなかったり、ステップもお尻を揺らすのはNG。その後、会社とも協議したところ「次に言われた時は説明を」とのことだったので、一度だけパフォーマンス後のコメントで「実は膝を曲げないといけないジャンルで」と話させてもらいました。その後はヴォーグやヒールを知っているジャッジの方も入れてくださって、大会側から考慮していただきましたね。

 海外の人も観ているので、私たちが膝を伸ばしてヴォーグを踊ることはできません。もちろん、私は審査員の方々が精通しているダンスジャンルが全く違うことも知っているので、彼らが嫌いというわけではないんです。ただその審査について、逆にオーディエンスからディスられるところを見たので、大変だろうなと思いました。だから事前の説明があれば、すれ違いも減っていくのかなと。

神田:僕自身はハウスを主に踊っていますが、Bボーイのジャッジをすることもあるんです。派手な技で沸かせている人が勝っても、もう一方は超マニアックなことをやっている可能性もある。そのヴォーグにおけるヒールに関しては、HALさんの発言でみんな理解したんですよ。情報をアップデートしたら、次はそれを反映しないとダサくなってしまうので、見方も変わってくるはずです。だから少しずつ僕らも更新していかなければいけません。ジャンルも進化していくので、今の常識が10年後には変わっているはずですし、その部分は努力の必要がありますね。

ーーなるほど。avex ROYALBRATSのRIEHATAさんとUSEN-NEXT I'moonのRuuさんがディレクターを辞したことについて思うことなどはありましたか。

HAL:よく連絡を取り合っていたので残念でしたね。

神田:これからディレクターやメンバーが替わるのは当たり前になるはずです。サッカーだと3試合で監督が交代になってしまうこともあるんですよ。例えばHALさんが来年海外に行くとかでディレクターを外れるかもしれないし、第3シーズンは「ヒールでブレイキンをやりたい」と思うかもしれない(笑)。それも僕らは楽しまないといけないのかなと。移籍や退団、入団の情報はどの業界もニュースになりますし、増えていく可能性はあります。ディレクターも知らないところで、オーナー同士がこっそり選手をトレードするとかもあり得ますし。

ーー以前の対談で「ディレクターをシャッフルしたエキシビションマッチをしたら面白そう」という話が出たのですが、他チームでHALさんがディレクションしてみたいチームはありますか。

HAL:面白そうですね。SEPTENI RAPTURESは女の子が増えたのでディレクションしてみたいかも。MiYUちゃんはレッスンに来てくれていたので、ヴォーグもジャズもできるんですよ。あとは、海外でブレイクの技をヒールでやっている人も多いので、ISSEI君(KOSÉ 8ROCKS)にヒールを履いてもらったりとか(笑)。他にはFULLCAST RAISERZも面白そうです。

神田:アワードの時に全ディレクターのショウもできたらいいなと考えていたんですよ。彼らも踊りたそうでしたが、結局チャンピオンシップが終わった後の数日間で、コロナ禍のなか全員で練習するのは難しかったですね。いずれ実現したいなとは考えています。

ーーでは最後に、改めて今シーズンの意気込みをお願いします。

HAL:去年の悔しい結果から培ったものもある分、今年は絶対に勝ちたいです。

神田:僕がダンス大会に出ていた頃は「他のダンサーがやっていないマニアックなことをいかにカッコよく研ぎ澄まして出せるか」を考えていました。そうじゃないと勝てない世界だったんですよ。でも『D.LEAGUE』はダンス脳だけでも勝てないので、昨シーズンを経験したMONOLIZが、どんなバランスでパフォーマンスを見せてくれるかに期待しています。

【D.LEAGUE】ROUND.11 Benefit one MONOLIZ / Dai-ichi Life D.LEAGUE 20-21 ROUND.11

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