『PHOENIX』インタビュー
EXILEが切り拓くエンタテインメントの新たな地平 アリーナツアーに懸ける想いや『PHOENIX』制作秘話を語り尽くす
EXILE TAKAHIRO、EXILE NESMITH、EXILE SHOKICHIという3名のボーカルと、EXILE AKIRA、橘ケンチ、黒木啓司、EXILE TETSUYA、EXILE NAOTO、小林直己、岩田剛典、白濱亜嵐、関口メンディー、世界、佐藤大樹という11名のパフォーマーで構成された新生EXILE。2021年も精力的に活動してきた彼らが、2022年1月1日、現体制では初となるオリジナルアルバム『PHOENIX』をリリースした。約3年半ぶりのアルバムリリースとなる今作には、14人体制以降に発表した楽曲に加えて、EXILE×三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのコラボレーション楽曲「VIRTUAL LOVE」を含む新曲7曲を収録。そのほとんどの楽曲をメンバー自らが作詞作曲しており、メンバー曰く、ジャンルレスで変幻自在な“ジェットコースターエンタテインメント”を提示した作品となっている。橘ケンチ、EXILE TETSUYA、EXILE NESMITH、岩田剛典、世界の5名に、今作に込めたメッセージや、実に13年ぶりとなるアリーナツアーへの意気込みを語ってもらった。(斉藤碧)
【オリジナル動画】お互いの第一印象を紹介
「たくさん挑戦をしてきた延長線上に14人のスタイルがある」
ーーまずはデビュー20周年、おめでとうございます!
一同:ありがとうございます!
ーーメンバーそれぞれ加入のタイミングも異なりますし、20周年に対して違う想いを感じているとは思いますが、2014年に始動した第四章から活動している岩田さんは、どういう気持ちでアニバーサリーイヤーを過ごしていますか?
岩田剛典(以下、岩田):僕はまだ加入して7年なんですけど、『ASAYAN』(テレビ東京系)世代なので、EXILEが生まれる前からATSUSHIさんやNESMITHさんの活躍をテレビ越しに見てきたんです。
EXILE NESMITH(以下、NESMITH):ありがとうございます(笑)。
岩田:だから、EXILEのこともデビュー作『Your eyes only ~曖昧なぼくの輪郭~』からずっと見ていて。当時の男子中学生や高校生は、みんなEXILEが好きだったと思うんですけど、僕にとっても憧れのグループで、ファッションを真似したりしていました。三代目 J SOUL BROTHERSとしてデビューするまではただの大学生だったので、自分がダンスと出会い、巡り巡ってこうしてLDHに所属できるようになったのは本当に運が良かったなって思います。ましてや7年前にはオーディションでEXILEメンバーになることができて、20周年という節目を一緒にお祝いできるのは不思議な感覚ですね。人生、何が起こるかわからないなって心から思います。EXILEというのは時代と共にメンバーが入れ替わり、新陳代謝を繰り返してきたグループですが、今の14人のメンバーで、ファンの皆さんと一緒に20周年の節目を迎えられて、すごく幸せな人生だなと感じています。
EXILE TETSUYA(以下、TETSUYA):しみじみ感じているんだね。
ーー1月1日にリリースされたニューアルバム『PHOENIX』は、前作『STAR OF WISH』以来、約3年半ぶりのアルバムとなりますが、今作を制作するにあたって念頭にあったことは何ですか?
橘ケンチ(以下、橘):現体制になってからは初めてのアルバムなので、今の14人の等身大の想いを込めた作品という意味合いが強いですね。その代表的な楽曲が2021年1月1日に発表した「RED PHOENIX」で、アルバム制作はそこから始まりました。
ーー「RED PHOENIX」は新生EXILEとして初めて発表した楽曲でもありつつ、タイミング的には「Rising Sun」のような全国にエールを送る楽曲にもなりましたね。
橘:そうですね。2011年3月に東日本大震災が発生した時も「Rising Sun」をリリースし、“日本を元気に”をテーマに掲げて活動してきて。その中では、もちろん残念なこともたくさんありましたが、アーティストとしては自分達の存在を考え直すきっかけになりましたし、「自分達に何ができるのか」「エンタテインメントはどんな風に被災者の方の力になれるんだろう?」と考えながら活動してきた背景がありました。そんな時に、今度はコロナ禍という未曾有の事態が起きて、一度はエンタテインメントも東日本大震災の時以上に大打撃を受けて。今回は僕らも、もう本当にダメなんじゃないの? っていう雰囲気さえ感じるほど、追い込まれることになったんです。でもだからこそ、「日頃お世話になっているスタッフの方々、LDHに関わる全ての方々をまずは元気にしていくんだ!」「もとの生活に戻せるように、0からリスタートして完全復活するんだ!」という気持ちが強まって。メンバー全員が同じ想いを抱えていた時にSHOKICHIが書いてきてくれたのが、「RED PHOENIX」であり、アルバムタイトルもその想いを継いで、“不死鳥”を表す『PHOENIX』と名付けました。
ーー「RED PHOENIX」ではNESMITHさんがギター、SHOKICHIさんがドラム、亜嵐さんがDJなどを担当していて、クリエイターとしてのEXILE像を全面に出していましたが、それも今のEXILEが打ち出したいところなんでしょうか。
NESMITH:クリエイター思考という意味では、今までもずっとそうだったんですけど、2018年にATSUSHIさんを含む15人で再始動した時に、もっと自分達でクリエイティブなものを発信していこうという話になって、「PARTY ALL NIGHT ~STAR OF WISH~」から6カ月連続でメンバーがリリックビデオをプロデュースするという企画をやったんです。それと同時にライブでも、自分のストロングポイントを活かしたパフォーマンスをするようになって。そういったたくさんの挑戦をしてきた延長線上に、今の14人での音楽性やスタイルがありますね。
ーーアルバムには新曲が7曲も入っていて、皆さんの意気込みが窺えます。
TETSUYA:想いが溢れちゃいまして(笑)。新体制になったことも表現したかったし、コロナ禍を吹っ飛ばしたいっていう気持ちも強かったし……と思いながら制作していったところ、今の形になりました。でも、ケンチも言ったように、最初に「RED PHOENIX」があったことで『PHOENIX』というワードが生まれたりとか、『EXILE TRIBE LIVE TOUR 2021 “RISING SUN TO THE WORLD”』のオープニングを飾った曲だと思うと、やっぱり「RED PHOENIX」は特別な存在だなって思いますね。この曲があったからこそ、僕らは苦境でも折れずに立っていられた気がする。そんな“今の14人体制のEXILEを体現しているロックチューン”から始まり、いろんなふうに派生した楽曲たちが揃ったなと思います。今のEXILEの楽曲はSHOKICHIが作ることが多いですけど、アルバムの最後に収録されている「STAY WITH ME」では、先輩達から受け継いだEXILEの歌心をTAKAHIROくんが表現してくれていたり、ネッさん(NESMITH)が作詞をしてくれた「Freedom」が収録されていたり、亜嵐やメンディーも曲作りに参加していたり、本当にバリエーション豊かだなと。いろんなジャンルが入り交じっていて、今作を作ったことで、改めてEXILEはジェットコースターエンタテインメントだなと思いました。
NESMITH:「RED PHOENIX」はロックですが、「DOWN TOWN TOKYO」はニュージャックスウィングですし、僕が歌詞を書いた「Freedom」もJ-POPというか、EXILEの王道のキャッチーさを持っていると思います。EXILEの20年間をいろんな音楽ジャンルで集大成のように見せられたのが、今回のアルバムなのかなって思いますね。その上で、EXILEはまだこんなことができるんじゃないかっていうこの先への期待も、しっかり感じていただける作品だと思っています。
歓喜と驚きに満ちた三代目JSBとの共演
ーーもちろん全曲推し曲だと思うのですが、世界さんはあえて推し曲を挙げるとしたらどれですか?
世界:「NEO UNIVERSE」は次のツアーが初披露になると思うのですが、この曲を歌って踊っている14人、めちゃくちゃカッコいいんだろうなという予感があります。あと、趣味全開で選ぶなら「DOWN TOWN TOKYO」。特にTETSUYAさんとケンチさんはそうだと思いますが、ニュージャックスウィングといえばEXILEのバックボーンにあるような音楽ジャンルですし、それをTAKAHIROさんとSHOKICHIさんとNESMITHさんが歌って、さらに世界的ブランドであるラルフローレンさんのコレクションの曲にも起用されているので。この曲をパフォーマンスする時は、個人的には“1992”(ラルフローレン「ポロ スタジアム コレクション」の誕生年)を背負って、これ以上にないくらいHIP HOP色強めに踊りたいなと思います。
橘:世界って、何年生まれだっけ?
世界:僕、1991年生まれです。
橘:ほぼ生まれ年じゃん(笑)。
世界:あははは。でも、1992年にはHIP HOPとファッションが合体していたという歴史がありますし、AKIRAさんとラルフローレンさんとの関係だったり(AKIRAはラルフローレンのグローバルアンバサダー兼モデル)、それがEXILEと繋がってコラボレーションが実現したことを考えると、胸が熱くなります。ダンサーだったら国内外問わず誰もが憧れるコラボレーションだと思うので、すごく誇りだなと思います。
ーーまた、今作にはEXILEと三代目 J SOUL BROTHERSのコラボ曲「VIRTUAL LOVE」も収録されています。歌唱しているNESMITHさんは、どんなことを考えながら楽曲と向き合いましたか?
NESMITH:「VIRTUAL LOVE」はYVES&ADAMSさんやJAY’EDさん、T.Kuraさんといった、EXILE TRIBEの楽曲を多数手がける皆さんが作ってくださったんですが、デモを聴いた時からすごく鮮やかな楽曲で、ここに僕ら6人(TAKAHIRO、SHOKICHI、NESMITH、登坂広臣、今市隆二、ELLY)の声が乗ったらどうなるんだろう、と思いましたね。そして2組で何ができるかを模索した結果、6人とも声が全然違うので、次は誰が来るだろうっていうボーカルリレーを楽しんでもらうのが一番いいんじゃないかなと。そういった仕掛けを随所に散りばめました。6人の歌い分けは作家さんと話し合って、各メンバーのストロングポイントが出るように作っていただいたので、それぞれの良さが上手いことハマって、すごく聴き応えのある1曲になっていると思います。歌詞の運びというか、英語と日本語の入り交じり方や韻の踏み方がすごく絶妙ですし、リフレインしているところはしっかり耳に届いてくるし、それがこの6人で歌う意味なんじゃないかなって、完成した楽曲を聴いて思いました。
岩田:EXILE TRIBE名義ではコラボ曲をリリースしていますが、各グループの名前を背負ってリリースするのは今回が初ですし、今回はELLYのラップも入っていますし、両方に所属している自分としては、満を持してという感じでMV撮影に臨みました。普段からコミュニケーションの多い2組なんですが、MV撮影をしている時は、EXILEメンバーと一緒に作品を残せる嬉しさから、三代目JSBメンバーのテンションがちょっと上がってて(笑)。これで世の中に2組の良さを届けたいというか、「かましていくぞ!」っていうパフォーマンスになっていましたね。アルバムの中では今後の広がりを感じさせる1曲だと思いますし、曲順もメンバーで話し合って3曲目に収録することにしたので、早い段階でEXILEと三代目JSBのコラボ曲が聴けることも、このアルバムの魅力になっているのかなと思います。
ーーMVも話題になっていますが、仕上がりの手応えについても教えてください。
岩田:MVはとにかく豪華ですね。近年稀に見る映像美になっています。
橘:本当に“近年稀に見る”だよね。今回はCGが占める箇所が本当に多かったので、MVを撮影している時は想像力を使ってやるのみだったんです(笑)。最初にCGのイメージをいくつか提案していただいて、「ここはこういう都市で、こういう設定で……」というのを考えてパフォーマンスしていました。
世界:今回の振付はAkanen(振付師)が作ってくれたんですが、〈VIRTUAL LOVE〉の歌詞のところでは、両手でそれぞれL字を作って画面を縮めるような動きがあったり、歌詞と振付がすごくリンクしているなと思います。歌詞も1980~90年代の日本が作ったサイバーな感じとか、当時流行していた世界観を上手く取り入れつつ、「VIRTUAL LOVE」の“LOVE”の部分をボーカリストの皆さんが伝えてくれていると思いますし、“VIRTUAL”な部分と“LOVE”の部分、両方がバランス良く伝わる楽曲になっています。
TETSUYA:振付に関しては、T.Kuraさんが曲を作った時にマイケル・ジャクソンをイメージしていたとお聞きしていたので、それも踏まえて、ちょっとだけオマージュした振りが入っているのも見どころですね。MVの世界観もすごく激しいものでしたし、アカツキ(EXILE TRIBEのリズムゲームアプリ『EXtreme LIVES』を制作した会社)さんとのタイアップも決まっていたりと、規模感の大きい楽曲なんですが、それに匹敵する振付と言いますか。このメンバー全員で表現するならこの振付がベストだよねっていう、すごく映える振付になりました。
NESMITH:あとMVには、これまでEXILEや三代目JSBがテーマにしてきたロゴなども盛り込まれているので、繰り返し観て、そういった隠れたアイテムを探していただくのも面白いかもしれませんね。「このロゴはあのツアーの!?」っていう、驚きがあると思うので。