桐谷健太、菅田将暉、池田エライザ……篠原誠に聞く、au「三太郎シリーズ」CM曲に俳優陣を起用した背景

au「三太郎シリーズ」CM曲、制作の背景

菅田将暉や池田エライザの起用理由

――「海の声」もそうですが、菅田将暉さんの「見たこともない景色」、池田エライザさんの「みんなってエブリワン!」など、篠原さんの歌詞はCMのストーリーに寄り添いながらも、普遍的なものになっていると感じます。どういうところからインスピレーションを受けているのでしょうか?

篠原:「海の声」は、自分が浦島太郎だったら、どういう気持ちを乙姫に対して歌うだろうかということを想像して書きました。なので〈僕がおじいさんになっても〉という歌詞があったり、通信がなかった時代には人は自然の音の中に、相手の声を探したりしたんじゃないだろうかと思って歌詞を書きました。基本的には、毎回テーマを考えて、そのテーマをもとに、歌詞を考えています。ただ、僕は広告屋であって、作詞家ではないので、少し広告などの“コピー”に近いというか。何が違うかというと、わかる人にわかればいいというより、なるべくたくさんの人に理解されるよう、わかりやすく平易にしたり、あまり尖った言葉や、もしかしたら一部の人が傷つくかもしれないという言葉の使い方はなるべくしないようにしています。なので、基本的にポジティブな歌詞になります。あくまで広告なので、なるべくたくさんの人に、少しでも共感してもらえるものになればいいなと思って書いています。

――「海の声」は結果的に多くの人の共感を得ることになったかと思いますが、オンエア後に周囲からどのような反響がありましたか? ヒットした実感があったのはどのタイミングだったのでしょう。

篠原:コマーシャルで曲を書いたのが初めてだったので、こんなにヒットすることがあるんだと驚きました。でも、一番「ヒットしたんだな」と思ったのは、『紅白歌合戦』に出たことですね。「『紅白』に出るんです」と言われたときに、すごいな、こんなことあるんだなと。コマーシャル用に作った、一般に売り出すつもりでもなかったものが、CMとは関係なく、人に喜ばれたり聴かれたりするのは嬉しかったし、びっくりしましたね。

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――桐谷さんの後には同じく俳優としても活動する菅田将暉さんや池田エライザさんもCM曲を担当していますが、お二人を起用しようとしたきっかけは?

篠原:年末のCMスタッフの打ち上げに菅田さんと桐谷さんが来てくれた時があって。その時に桐谷さんが歌って、菅田さんがギターを弾いてくれたんですね。それで「菅田さんってギターが好きなんだな」と思って。撮影現場でも「浦ちゃんいいな、俺もああいう曲歌いたいな」とおっしゃっていた記憶があって、だったら歌ってもらったほうがいいなと(笑)。エライザさんは、YouTubeとかを見ていてすごく歌がうまくて。せっかくだったら歌ってもらえないかということで、お正月バージョンで歌っていただきました。

――では最後に、桐谷さん、菅田さん、池田さんのように俳優としても活動する方々に共通する歌の魅力を教えてください。

篠原:お芝居をされる方が歌うと、歌詞への気持ちののせ方が心地良いということと、エモーショナルな感じがする気がして。逆に、CMの締めのナレーションを、そういう気持ちをのせるのが上手なアーティストの方にお願いするときがあるんですが、歌を歌う気持ちでナレーションを読んでもらうと、普通のものよりもエモーショナルになったりするんですね。同じように、俳優の方が歌うと歌が上手い/下手ではなくて、気持ちがより伝わること、共感されることがあるんじゃないかなと。歌を聴いていて、うまいんだけど、うまいな、と思うだけで終わっちゃう人もいるじゃないですか。反対に、めちゃくちゃうまいわけではないんだけど、何となく聞き入ってしまう人もいますよね。俳優業をされている方が歌うことによって、より気持ちが世の中の人に届く可能性があるんじゃないかなと思います。歌は歌でも、詞に若干近いというか。詞の朗読にメロディが乗っている感じ。じゃないかもしれませんが(笑)。

【特集】演じること、歌うこと

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