桑田佳祐、音楽で“楽しさや勇気”を届けた進化続けるパフォーマンス 「BIG MOUTH, NO GUTS!!」ファイナル公演

 ライブ後半の盛り上がりを象徴していたのは、ミラーボールの眩い光に照らされた「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」。桑田、バンドメンバーがハンドクラップを促し、ステージと客席の距離がさらに近づく。スクリーンには“3・11祈”と書かれた提灯、スクリーンには岩手県陸前高田の“奇跡の一本杉”、コロナ禍における医療従事者の姿も。今回のツアーは、万全の感染対策を施し、東北・仙台の地から始まった。「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」の演出からは、今もなお復興の途中にある東北への思い、そして、コロナ禍を乗り越え、この世の中に明るい兆しがあるようにという切実な願いがはっきりと伝わってきた。

 “ごはんEP”のリードトラックであり、桑田本人が出演しているユニクロ「ジーンズ」CMソング、Netflix映画『浅草キッド』主題歌としても話題の「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」は、桑田のエンタメ性が炸裂。モータウン系のリズム、華やかなホーンセクションとともに“ソウル×歌謡”と称すべきボーカルが鳴り響き、オーディエンスを圧倒的な多幸感への導いたこの曲は、今回のツアーの充実ぶりを象徴していたと思う。アントニオ猪木がハルク・ホーンガンにコブラツイストをかける映像、桑田を含むメンバーを全員の笑顔からも、ファイナル公演を心から堪能していることが感じられた。

 その他にも見どころは盛りだくさん。“崎陽軒のシウマイ”“野毛山動物園”など、歌詞に横浜の名所・名物を盛り込んだ「新YOKOHAMA LADY BLUES〜新・横浜レディ・ブルース〜」(原曲「OSAKA LADY BLUES〜大阪レディ・ブルース〜」)、“暗いこともあったけど、来年(2022年)こそはマスクを外したみなさんと一緒に歌いたい”という思いを込めた「どん底のブルース」、さらに「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」(間奏ではクラップによる観客との“コール&レスポンス”も)、デビュー曲「悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)」など、ソロアーティスト・桑田佳祐の代表曲、ヒット曲もさらにチューンアップした状態で披露され、“満員御礼”の観客を喜ばせた。

 すべての中心にあるのは、桑田のボーカル。本人もMCで語っていたように、ツアー当初は歌うための筋力に不安があったというが、この日のパフォーマンスはまさに絶好調。ソウルフルなシャウト、繊細にして奥深い表現力を含め、完全に復調していた。洋楽的なノリと歌謡的なわかりやすさを兼ね備えた桑田独自のスタイルは、今もなおさらなる進化を続けている。

 アンコールは、いぶし銀のギターリフを軸にした「真夜中のダンディー」から。続く「オアシスと果樹園」を演奏した後、カウントダウンに突入し、2022年へ。「今年も健やかで、元気に」と語り掛ける桑田佳祐は、「まずは好きな歌を歌わせて」と、ヒデとロザンナの「愛の奇跡」をコーラスのTIGER・田中雪子とデュエット。その直後に「波乗りジョニー」を放ち、水着姿のダンサーを交えたステージによって、新年をお祝い。ラストに「祭りのあと」を歌い上げ、ツアーは大団円を迎えた。

 1月3日19時からは、昨年11月20、21日に行われた埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演の模様が“オンライン特別追加公演”としてABEMA、PIA LIVE STREAM、U-NEXT、Rakuten TV、ローチケ LIVE STREAMING、ファンクラブ「サザンオールスターズ応援団」(LIVESHIP)で配信される。新作EP『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』の楽曲、ソロアーティストとして生み出してきた名曲、そして、“自分にできるのは音楽を届けることだけ”“みなさんに少しでも、楽しさや勇気を感じてほしい”という姿勢に貫かれた最新のパフォーマンスをぜひ“おかわり”してほしい。

 2022年は桑田佳祐にとって、ソロデビュー35周年の記念すべき年。MCのなかでも「今年もライブやりたいね」と語っていた桑田が今年、どんな音楽を我々に届けてくれるのか、期待に胸を膨らませながら待っていたい。

『桑田佳祐 LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」supported by SOMPOグループ』特設サイト
https://special.southernallstars.jp/kuwata2021/live/

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