THE ALFEEが日本武道館で告げた、新たな始まり 2年ぶりの有観客ライブで直接ファンに届けた希望

 MCでは、2022年2月23日にオリジナルニューアルバム『天地創造』をリリースすることがアナウンスされる。そのタイトルに「大きく出たでしょ? これくらい言っても全然怒られないから、こういうベテランは(笑)」と高見沢。中身も、アコースティック、ハード、プログレッシブロック、48年のキャリアをこれでもかと見せつけるバラエティ豊かなものとなるという。この情報は、観客にとっての一番のクリスマスプレゼントとなったことだろう。

桜井賢(Vo/Ba)

 MCの後は、〈頑張ろうぜ〉とストレートな言葉で、未来の自分にエールを送ろうと呼びかける「もう一度ここから始めよう」、怒りは自分にぶつけて、その力で舟をこげ、と叫ぶ「天河の舟」。パワーをくれる2曲の後は、いきなりの桜井のボーカルから始まる『ウルトラマン列伝』主題歌となった「Final Wars!」。ここで再び客席は一斉に立ち上がる。桜井の艶やかなボーカルとマッチしたウルトラマンを思わせるシルバーとレッド、ときどきブルーが差し込む照明が美しい。教会の鐘が鳴り響き、「展覧会の絵」が演奏され、プログレッシブなナンバー「Gate of Heaven」に流れ込む。同じ曲とは思えないほどいろんな展開が詰め込まれた大作で、まさにTHE ALFEEにしかできないナンバーだ。高見沢のエンジェルギターのライト、一層艶やかにカラフルに移り変わる照明、ステージ前方には炎が上がり、ステージ終盤を盛り上げる。そして本編は、2019年6月リリースの最新アルバム『Battle Starship Alfee』から、自分たちのバンドのはじまりをモチーフにしたバラードナンバー「はじまりの詩」で幕を閉じた。

 メンバーが去ったステージに、一段と鳴り響く拍手。開演前に配られた、客席の赤いサイリウムの光がきらめく。ほどなくして、メンバーが登場。高見沢はエレガントなパープルのスーツだ。「Silent Night」から、高見沢ボーカルの「恋人たちのペイヴメント」、坂崎ボーカルの「泣かないでMY LOVE」、桜井ボーカルの「LOVE NEVER DIES」のサビをフィーチャーしたクリスマススペシャルメドレーが披露される。クリスマスムードが高まったところで、「White Christmas」から坂崎のアコースティックギターが鳴り響き、恒例のサンタクロースダンサーが登場する、THE ALFEEのクリスマスソング「聖夜 -二人のSilent Night-」。通常、ファンは赤い手袋をつけ手を振るところだが、今日は赤いサイリウムが一斉に揺れる。会場の多くのファンが「やはりクリスマスイブはこれだ!」と思った瞬間だろう。

 ロックンロールにアレンジされた「ジングル・ベル」の演奏の後は、サポートメンバーのドラムスの吉田太郎、キーボードのただすけ、そして再び3人のメンバーが紹介され、高見沢の「We are THE ALFEE!」のさけび声とともに「Stand Up,Baby -愛こそすべて-」が始まり、ステージ前方から銀テープが飛ぶ。ハンドマイクでステージ狭しと駆け回る、高見沢。ステージ前方に再び炎があがり、「星空のディスタンス」へ。 観客からは一斉に拳があがり、観客の声はなくとも会場のボルテージは最高潮に達していた。曲が終了すると、ジョン・レノン「Happy Xmas (War Is Over)」をバックに、ステージに並んだ5人は深々と頭を下げ、ステージを去る。

 2度目のアンコールはMCからスタート。「あり余るみんなの青春を預けてくれたALFEE銀行は決して破綻しません。利子を付けて返します!」と高見沢。「ライブは不要不急では決してない、みんなに愛をこめて」と語り、ラストナンバーはTHE ALFEE珠玉のラブソング「確かにFor Your Love」「至上の愛」のメドレー。2021年クリスマスイブの夜、この名曲2曲のドッキングを聴けたことはファンにとって忘れることはできない思い出になったはず。最後は3人のみが残り、肩を組んで左右中央に頭を下げ、ステージを後にした。

 2年ぶりの有観客ライブは「新たなる始まり」を意識したセットリストだった。2022年、世の中がどうなっていくのか、それは誰にもわからない。でも決して希望を忘れてはいけない。希望を持つことで日々は乗り越えていけるのだから。未来を感じさせるナンバーと全力投球のステージは、それを再認識させてくれた気がする。

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