センチミリメンタル、一人ひとりの“あなた”に奏でる真摯な音楽 『やさしい刃物』を再現した生配信ライブレポート

 3度目のMCでは、「(配信ライブも)これはこれで楽しいですね」「でも本当はみんなの目の前でやれる機会が増えていくといいなと思いますし、その“みんな”がまた増えていくと嬉しいなと思います」と素直な想いを語った。「いろいろなことが日々あって、落ち込むことやつらいこともあると思うんですけど、僕はなるべく“そういう日もあるよね”って言える存在でありたいし、僕の音楽はみんなにとってそういう曲でいれたらと思っています」という言葉からの「対落」は、徹底して孤独を描きつつその孤独をも肯定する曲だ。重心の低いところで壮大に鳴らす同曲に対し、次の「nag」では1曲かけてじわじわクレッシェンド。温詞のロングトーンを受けて他3人も楽器をかき鳴らし、さらにそれを受けて鍵盤のタッチも強くなっていき……というアウトロの演奏は特に素晴らしかった。

 「青春の演舞」演奏前、「配信ライブは拍手が聴こえないから寂しいですね」「でもカメラの向こう、そして画面の前にみんながきっといるんだと言い聞かせながら。次の曲、みんなの手拍子また聞かせてください」と話した温詞はきっと今年のツアーで目にした客席の光景を思い出していただろうし、画面の前で手拍子した人もいたことだろう。4ビートでガシガシと刻むパワー系の曲を鳴らす4人は楽しそうで、その横顔、少し上がった口角をカメラが捉える。

 ラストのMCでは、アルバム『やさしい刃物』に込めた想いを改めて言葉にした。

「僕は自分の音楽を力のあるものとはなかなか思えなくて。それでも音楽が支えになる瞬間はあって。でもそれは支えでしかないから、立ち上がる瞬間は自分の足で立ち上がらなくちゃいけないし、何かに立ち向かう時は自分で武器を持って、自分で戦わなくちゃいけない。だから音楽そのものは人を救えないんですけど、その音楽に支えられたり、それを武器として手に持ったあなた自身が頑張れば、戦えば、それで救われる瞬間はあると思うんです。何か困難があった時やつらい時、苦しい時、それでもやらなきゃいけない時は、センチミリメンタルの音楽が、そしてアルバム『やさしい刃物』の中に入っている楽曲たちが、あなたにとっての一つの武器に、あなたを守るやさしい刃物になると嬉しいなと思って、このタイトルをつけて曲たちを選びました。僕たちは上手くできた生き物でもないし、失敗するし、後悔するし、傷つけ合うし。それでも、それでもっていうその瞬間、諦めないその一瞬の力強さが命を繋いでいくと思います」

 そうして演奏されたのが最終曲「リリィ」だ。祈りのような咆哮のような、サビのロングトーンはビブラートが美しく、歌声に込められた想いを引き継ぐようにバンドも音を鳴らす。最後に温詞が繰り返した“大丈夫”はこれからを生きる私たちのお守りになってくれる言葉だ。温かな余韻を残してライブは幕を閉じたのだった。

センチミリメンタル HP

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