突然のノミネート枠数増加、BTSへの冷遇……第64回グラミー賞ノミネートで浮き彫りになる音楽業界の今

 11月24日(現地時間)、第64回グラミー賞のノミネート作品及びアーティストが発表された。音楽業界における最大の権威とされている同アワードについて、ノミネーションを踏まえての注目ポイントや傾向を簡単にまとめていきたい。

BTS「Butter」

 まず注目するべきアーティストは、主要4部門(Record Of The Year / Album Of The Year / Song Of The Year / Best New Artist)のうちRecord Of The YearとAlbum Of The Yearを含む計11部門に名を連ね、今回のグラミー賞における最多ノミネートを果たしたジョン・バティステだろう。その名前にピンと来ない人も多いかもしれないが、映画『ソウルフル・ワールド』の劇中音楽及び主人公であるジョーの演奏を担当したアーティストと聞けば、納得する人も多いかもしれない(主題歌の「It’s All Right」も彼の楽曲である)。今年の3月には自身による最新作『WE ARE』もリリースしており、映画のサウンドトラックと自身名義の作品が揃って高い評価を獲得している。その結果、両方の作品が多くの部門に選出されたことで、今回の最多ノミネートに至ったというわけだ。

 また、デビュー曲でありながら「drivers license」を大ヒットに導き、2021年における最もブレイクしたアーティストとなったオリヴィア・ロドリゴは、その勢いのまま見事に主要4部門全てにノミネートを果たしている。そして、2020年に主要4部門制覇を制覇したビリー・アイリッシュも『Happier Than Ever』によってBest New Artistを除く主要3部門に名を連ねており、10代女性アーティストの勢いを感じることが出来る。ただ、実は今回、ビリーの実兄であり最重要制作パートナーとしても知られているフィネアス・オコネルが単独でBest New Artistに名を連ねており、フィネアス単体で見ればこちらもオリヴィア同様に主要4部門全てにノミネートされていることになる。このノミネート自体については”New Artist”の定義を巡る疑問の意見も多いのだが、少なくとも彼の手掛ける作品がグラミー賞に非常に高く評価されているということは強く伝わってくる。授賞式では、勢いのオリヴィアと安定のビリー、どちらが強みを発揮するかが見どころになりそうだ。

 オリヴィアと並んで2021年のポップ・シーンを象徴する存在の一つとして挙げられるのは、K-POPアーティストの世界的ブレイク、特に「Butter」で全米チャート10週連続1位を記録するという大ヒットを実現したBTSだろう。以前よりグラミー賞への憧れを公言しており、昨年はプレゼンターとして出演、今年はLill Nas Xとの共演による初の会場パフォーマンスの実現に加えてBest Pop Duo/Group Performance部門への初のノミネートを果たした彼らだが、今回も見事に同部門に名を連ねており、今年の勢いを踏まえればもはや最有力候補と言っても過言ではない。むしろ、考えるべきは「ここまでの躍進を果たしたにも関わらず、何故主要4部門へのノミネートが無かったのか」という点であり、BillboardやUSA TODAYなど複数のメディアが”Grammys 2022 snubs(2022年グラミー賞の冷遇)”としてBTSのノミネーションの少なさを挙げている。

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