Kアリーナ横浜、ぴあアリーナMM、東京ガーデンシアター……大規模なライブ会場が続々誕生している理由

大規模なライブ会場が続々誕生

 2023年秋に世界最大級の音楽特化型アリーナ「Kアリーナ横浜」が、横浜みなとみらいにオープンすることが発表された。横浜アリーナとぴあアリーナMMに続く、横浜市内で3つ目のアリーナ会場になる。人気アーティストの関東公演は、これから横浜に集中することが予想される。

 ここ最近は関東を中心に大規模の会場が増えている。2020年6月には東京有明に東京ガーデンシアターがオープンした。約8,000人を収容する日本最大規模のホール会場で、扇状で4層の立体的な客席フロアが特徴だ。この客席配置により離れた席でも他の同キャパの会場よりもステージを近く感じる設計となっている。このように近年オープンした大規模会場は「どの席でも見やすくて近い」ということを意識した設計されている場合が多い。2020年7月にオープンしたぴあアリーナMMもそうだ。天井高が33メートルで客席の列が上に伸びる縦長の構造になっている約1万人を収容する会場である。上から見下ろす形になるものの、ステージとの距離感は近く感じる。このような設計にできるのも音楽、エンターテインメントに特化した施設であることの強みだ。

 大規模なライブ会場が続々と作られている背景には、日本の音楽産業はライブで利益を出す傾向が強まっている事情があるのだろう。一般社団法人コンサートプロモーターズ協会によるライブ市場調査によると、2009年に約17,000件公演が行われ年間売上1,255億円だったライブ市場は、2019年には約32,000件公演で年間売上3,665億円となっている。10年で公演数は約2倍になり、売上規模は約3倍になった(※1)。それによってライブの開催に業界が力を入れるようになり様々なノウハウが蓄積され、最も優れた構造のライブ会場がどのようなものなのか研究されたのだろう。その結果として大規模な会場が続々と作られ、優れた環境で音楽を楽しめる会場が増えたと感じる。2028年には現在約2,000人を収容する中野サンプラザが再開発され、約7,000人収容するホールになることが決まっており、2021年末に閉鎖されるZepp Tokyoの跡地にも1万人規模のアリーナ会場が建設されることが発表されている。これからも大規模なライブ会場は増えていくのだろう。

 それと比べると中規模会場は、閉鎖の知らせを聞くことが多い。約1,500人収容のマイナビBLITZ赤坂はTBSの観覧機能付きスタジオにリニューアルすることを理由に、2020年に閉鎖されてしまった。1,000人規模や2,000人規模のライブハウスは他にもあるものの、その中間の規模であるライブハウスは珍しい。特に必要性が高い規模に思う。また新木場STUDIO COASTやZepp Tokyo、中野サンプラザなど、閉鎖が決まっている2,000人規模の会場がいくつかある。その代替となりうるZepp HanedaやKT Zepp Yokohama、立川ステージガーデンなどの同規模の会場が建設されたものの、全体的な数はそれほど増えたわけではない。

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