TENDRE、バンドと観客が一体となった完璧なライブ 温かい歌とグルーヴが冴え渡ったツアーファイナル

 今年9月29日にメジャー1stアルバム『IMAGINE』をリリースしたTENDREこと河原太朗が、全国ツアー『TENDRE ONE-MAN TOUR 2021』のファイナル公演を11月12日、東京 Zepp DiverCityにて行った。

 個人的にコロナ禍以降、2000人を超えるキャパシティのライブ会場がしっかり埋まっている光景を目にしたのは初めてのことで、それだけでも胸がいっぱいになる。感染予防対策のため、もちろんオーディエンスはマスク着用で声は出せない「制約」はあったものの、フロアは開演前からただならぬ高揚感に満ちていた。

 客電が落ち、ステージ袖からTempalayのAAAMYYY(Cho/Syn)、CRCK/LCKSの小西遼(Sax/Flu/Syn)、BREIMENの高木祥太(Ba)、She Her Her Hersの松浦大樹(Dr)、松井泉(Per)が姿を現すと、破れんばかりの拍手が巻き起こる。最後に登場した河原がキーボードの前に立ち、「ツアーファイナル!」と叫ぶとバンドが一斉に音を出す。予想以上の爆音にオーディエンスのボルテージは一気にヒートアップ。オープニングから総立ちのまま、『IMAGINE』の冒頭を飾る怒涛のファンクチューン「AIM」でこの日のライブはスタートした。

 お馴染みのメンバーたちによる鉄壁のアンサンブルに心地よく身を委ねていると、続く「PARADISE」では高木のワウベースが松浦のタイトなドラムと絡み合いながら楽曲を牽引していく。エンディングでは河原がキーボードから素早くエレキギターに持ち替え、凶暴なフレーズを放ってみせた。

 「今日はツアーファイナル。皆さん、とことん自由に踊って帰ってください!」そう挨拶すると、2nd EP『IN SIGHT』から「VARIETY」を披露。浮遊感たっぷりのサウンドスケープの上で、ジャジーかつスリリングな小西のサックスソロが繰り広げられ、ひときわ大きな拍手が会場に鳴り響いた。

 続いては2018年のデビューアルバム『NOT IN ALMIGHTY』から「RIDE」と「LATELY」をつなげて演奏。高木はシンセベースのパラメーターを手動でグリグリと回しながら、地を這うような低音を繰り出し、かと思えば後半ではスピリチュアルなベースソロで楽曲にストーリー性を持たせていく。それにしても、素のままでエフェクトがかかっているような、艶やかかつ倍音たっぷりの河原の歌声ときたら。そこに、透明感溢れるAAAMYYYのハモリが乗ることによって、唯一無二のハーモニーが目の前で生み出されていく。まるで巨大な繭に包まれているような、温もりと優しさにうっとりしていると、いつの間にかステージにはストリングスを含めた象眠舎バンドが。小西の指揮のもと「MAXWELL」では美しく壮大なアンサンブルを奏でていた。

 The Jackson 5「I Want You Back」を引用したベースラインから、「LONELY」(『LIFE LESS LONELY』収録)へとなだれ込む心憎い演出にニヤリとさせられ、メンバー紹介のあと演奏された「LIFE」の、体を芯から温めていくような抑制の効いたグルーヴに思わず唸らされる。「今日が今までで一番仕上がっているよ!」と高木が興奮気味に言うと、「そんなことを素直に言えるところが祥太らしいよね」と小西が照れ臭そうに混ぜ返す(翌日彼は、「TENDRE史上一番いいライブだった」とツイート)。そんな和気あいあいとした雰囲気からも、TENDREバンドが最高に充実した状態であることが窺える。

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