『Kan Sano Talks About Pop Music』第4回

Kan Sano、山下達郎が奏でるハーモニーの秘密を実演解説 『Kan Sano Talks About Pop Music』第4回(前編)

 ソロアーティストとして話題作をリリースする一方で、国内外の様々な作品のプロデュースや演奏にも参加してきたKan Sano。絢香、Uru、CHARAといったアーティストの作品に携わるなど、2010年代以降のJ-POPシーンのキーパーソンの一人だ。

 本連載『Kan Sano Talks About Pop Music』では、彼のルーツとなったり、愛聴していたというアーティストを取り上げていき、そのアーティストの魅力や、現在の音楽シーンに与えた影響を解説してもらう。第4回目は、山下達郎をピックアップ。コード進行に様々な音を加えていくことで、独自のハーモニーを生み出していった“山下達郎サウンド”の秘密を解説する。

 なお本連載は動画でも公開中。動画ではKan Sano自身による実演を交えながら、山下達郎の魅力を解説していく。(編集部)

【Kan Sanoが実演解説】山下達郎が奏でるハーモニーの秘密とは?

山下達郎が進化させた日本のポップス

 僕が山下達郎さんの音楽を聴き始めたのは20歳過ぎてからなんですけど、10代の頃は、僕も達郎さんのようにブラックミュージックをずっと聴いてきて、それを日本語のポップスとしても表現したいと思うようになっていきました。そうやって自分で音楽を作っていくうちに、「これもすでに達郎さんがやっていたんだな」と気づくことが結構あって。だから、僕は達郎さんの影響を受けたというより、ブラックミュージックの影響を受けて音楽を作っていく中で、「これは達郎さんがすでにやっていたんだ」「何十年も前に先を越されていたんだな」という感覚なんですよね。

 前々回もお話ししたスティービー・ワンダーみたいな70年代のソウルなど、自分が10代のころ聴いていた音楽を、達郎さんはほぼリアルタイムで聴いて、それを自分の音楽に反映させていて。1970〜80年代って、アルバムを出すごとに音楽性も変化していて、特に初期の達郎さんの音楽は、日本語で歌っているけれど、サウンドはほぼ洋楽と一緒だと思うんです。それだけ海外志向だったと思いますし、実際にアメリカに行ってレコーディングされているアルバムもあるんですけど、1980年代以降『RIDE ON TIME』のような有名なアルバムから、だんだん日本のポップスの土壌によりフィットするような音楽になっていて。まさにブラックミュージックの影響を受けた日本のアーティストの進化の記録ですよね。それを聴いて、結局僕も知らないうちに同じことをやっているんだなって。僕もブラックミュージックの影響を受けて、最初はすごく海外志向の音楽をやっていたんですけど、日本語で歌詞を書いて歌うようになったり、徐々に日本のポップスのフィールドでもハマるような方向に変化していったんです。

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