『BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE』

BTS、7人がARMYに届けた現時点での最大限のパワー オンラインコンサートを振り返る

 BTSが10月24日、約1年ぶりとなるオンラインコンサート『BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE』を開催した。今回のライブではソロコーナーはなく、すべての場面で7人でのパフォーマンスが披露された。それはVが最後の挨拶で「僕たちのスタートとエンドを見せたくて」と話していたように、現時点のBTSがもつ最大限のパワーを、この7人だからこそたどり着いたものを届けようという気概を感じられるステージだった。

 開演時間になると、映し出されたのは真っ白な衣装に身を包んだ7人のVTR。彼らの手には、大ヒットソング「Butter」のMVを彷彿とさせる数字を記したボードが。「Butter」MV公開時には、その番号の意味をARMY(ファン)たちが考察して大いに盛り上がったが、今回もV「200901」、SUGA「130613」、JIN「101101」、JUNG KOOK「190601」、RM「180924」、JIMIN「1365244」、J-HOPE「141017」と意味深な数字が並ぶ。いつかまたメンバーが数字の真相に言及してくれるまで、じっくりと考える楽しみも用意してくれたということだろうか。

 そんなことを考えてニヤリとしていると、その白い衣装のままの姿で7人が囚われの身となってステージに現れる。バックダンサーたちによって鎖が外され、牢獄の中から開放される一同。そのままマーチングのリズムに合わせて聞こえてきたのは「ON」だ。

 多くのバックダンサーを引き連れて踊るBTSのオーラたるや、まさにグローバルスターの風格。この日、残念ながらリハーサル中に足を怪我してしまったVは椅子に座ったままでの参加となったが、その姿さえも“ボスキャラ感”を漂わせる。どこまでも“7人で”。そんな強い意志を感じたのは曲終わりの肩を組んだ決めポーズだった。ARMYならきっと想いで補ってくれると信頼をしてくれているかのように、Vのいない部分もそのままの振り付けで行なわれたのだ。

 続いて、監獄の格子が燃え盛る中披露されたのは「FIRE」。SUGA、RM、J-HOPEとラップラインのエネルギーが画面越しでもジリジリと伝わってくる。まるでオーディエンスが見えるかのような熱気に包まれながら、花道を練り歩きセンターステージへ。そして、迫力満点のステップを見せてくれるのだった。

 さらに、日本語で言う“ヤバい”という言葉をタイトルを冠した「DOPE」へ。一糸乱れぬダンスを見せると、すでにJUNG KOOKの首筋には汗がキラリと光っており、大型スタジアムでのライブならではの姿に心を奪われる。さらに、曲の終わりに見せたJIMINの不敵な笑みも破壊力十分だった。

 そんなクールなパフォーマンスを見せてくれた後には、彼らの等身大の表情がにじみ出るMCタイムへ。RMの合図で挨拶をスタートさせると、SUGAはイヤモニを外してモニター越しにいる世界中のARMYたちの歓声を聞こうと耳を傾ける。また、JINは渾身の投げキスを披露して場を盛り上げた。そして、この日のために「派手な髪色にしました」というJUNG KOOKに負けじと、J-HOPEも「僕はみなさんのHOPE!」と言いながらサングラスを外してキメ顔。「悪い役みたい」とイジりで笑いを誘うのだった。そして今回のライブでは「Just Enjoy!(ただ楽しんでほしい)」という7人。「体が動くまま、僕たちと楽しんで!」とライブの幕開けを改めて宣言した。

 「DNA」ではJINがVが座る椅子のところへ向かうなど、激しく動くことが難しいVを気遣うシーンも垣間見え、ARMYの心を温める。観客席にARMYがいないこと……まだまだ完全体とはいえない部分はあるかもしれないが、それでも今できることで楽しもう、それがBTSとARMYじゃないかと、このライブ全体で語りかけてくれるかのようだった。

 そして、ライブを前に公開され注目を集めたティザー映像が、場面転換のVTRとして登場。RM、V、JUNG KOOKのもとに届いたピザ箱には謎のカードと薬品が入っており、それでなにやら配合していく3人。そしてJIN、SUGA、J-HOPE、JIMINのいる部屋に届いたアタッシュケースのボタンは、カラフルな煙が上がる花火のスイッチだったことがわかる。パフォーマンスはクールに、そしてMCやVTRでは変わらぬ仲睦まじい顔を見せたBTSが、中盤に披露したのは叙情的な楽曲たち。「Blue & Grey」では黒のインナーとシルバーのロングジャケットの衣装にチェンジし、ミラーのように見えるディスプレイを見つめる演出。同じ動きをしているかと思いきや、ディスプレイが幻影のように手を伸ばしてくる。ブルーのライトの中で、シルバーの満月が浮かび上がり、ギターのサウンドとメンバーの歌声が響く幻想的な空間が広がった。

 するとバックダンサーの腕には羽が生え、やがて組み合わさることによって大きな翼のように変化。舞い散る白い羽根が、いつの間にか黒く変化していくと、メンバーの衣装もフルブラックに変わっているのに気づく。そして、「Black Swan」の世界へといざなわれていくのだった。見事なフォーメーションダンスを披露していくメンバーたち。その表現力の幅広さに改めて心動かされる演目だった。

 「久しぶりで体力的にキツい?」なんて会話を交わし合いながらも、彼らが考えたというセットリストは「燃え尽きても悔いはない」といわんばかりの選曲だった。スモークとレーザー光線が飛び交う中で激しくダンスした「Blood Sweat & Tears」。Vも手振りで参戦する。そして「FAKE LOVE」では立ち上がったVをJIMINが抱きしめる振りがいつもよりぐっとドラマチックに見えた。

 「Life Goes On」「Boy With Luv」では、白を貴重とした淡い色合いの衣装に着替え、大きなベッドやソファを模したトロッコのような装置に乗り込む。これは、それぞれの家から参加するARMYたちに寄り添っての演出だろうか。リラックスタイムを挟むと、再び「Dynamite」でスタジアムは巨大ディスコホールに。紙吹雪や花火が打ち上がり、まさにパーティタイムといった雰囲気だ。ミラーボールから黄色のライトに変化したら今度は「Butter」と、ヒットソングの連続に早くもクライマックスといった様子だった。

 そして、今回のライブのイメージカラーに近い暖色系の衣装へと着替えると「Airplane pt.2」「Silver Spoon」「Dis-ease」「Telepathy」と、彼らの歩みを振り返るようなナンバーが続く。Vの椅子にみんなが集まったり、縦揺れで踊ったりとノリノリだ。「Stay」ではトロッコから先に降りたメンバーが観客の真似をして、上に残ったJUNG KOOKに向かって「JK!JK!」と小さなライブステージのように振る舞う様子も見受けられた。

 アーティストにとって観客の声援は何よりのエネルギー。メンバーから自家発電的にそれを受け取ったJUNG KOOKは、「So What」で「僕のことをあまり好きじゃない人たちに言いたいことがあります!」と語りだす。メンバーも「何なに?」といった顔で見つめていると、「어쩌라고(オッチョラゴ〜※訳:どうしろっていうの〜)!」と大絶叫して見せるのだった。

 そんなふうに率直な言葉を述べてしまうところもBTSらしさなのだろう。「I NEED U」「Save ME」「IDOL」とライブの終盤でハードな楽曲で畳み掛けてくるあたりも、小さくまとまることはせず、自分たちの表現にまっすぐに突き進もうという気概を感じる。

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