ØMI(登坂広臣)「You」も話題 BTS SUGA、楽曲プロデュースの特徴は?

 SUGAの楽曲プロデュースは、“語らい”なのだと改めて思った。彼がこれまでプロデュースしてきたアーティスト、例えばアメリカのシンガーソングライターのHalsey(ホールジー)がアルバム『Manic』で「SUGA’s Interlude」を発表した際、「このアルバムはとても自伝的で、まるで彼が心から話しているような感じ。私はただ彼が今作に完璧な存在だとわかっていました」と語っていた(※1)。

Halsey, SUGA, BTS - SUGA's Interlude (Lyric Video)

 また、「歴代級のコラボ」と言われた2020年発表のIUとの楽曲「eight(Prod.&Feat. SUGA of BTS)」は、彼女と親しかった友人たちへの想いを連想させるという点でも大きな話題になった。「曲調は明るいけれどポジティブなメッセージではない」「あなたという仮想の人物と様々な比喩を使い、私の28歳を告白した短い小説のような曲」と明かしているように、彼女のまっすぐな思いが投影された楽曲に仕上がっている(※2)。

[MV] IU(아이유) _ eight(에잇) (Prod.&Feat. SUGA of BTS)

 SUGA自身もAgust D名義でソロ楽曲を発表した際には、長年の苦しみや心に秘めた痛みを吐露する歌詞で注目を集めた。まるで口下手な青年が何度も書き直してようやく手渡す手紙のような、不器用で繊細で大切な想いが綴られた歌を彼は作り出す。

 例えば、絵で何かを訴えるように、写真に伝えたいメッセージが宿るように、SUGAの音楽は言葉とはまた違う形でそれぞれの想いを届ける手段の一つなのだろう。だからこそ、コラボレーションするアーティストたちも率直な気持ちを彼なら受け止めてくれると信じて、オファーを出しているのかもしれない。

 「BTSは世界でNO.1アーテイストだけれど、それだけじゃなくて1人の音楽好きな青年の一面も持っている」というØMIの言葉を聞いて、『In the SOOP BTS ver.』でSUGAがひとり音楽機材を持ち込んでいたことを思い出した。休暇のような日々を過ごすことをテーマにしながらも、やはり機材を手放すことができなかったSUGA。

 誰かに「やれ」と言われるわけでもなく、自然とそれをしたくなるのが本当の“好き”だと聞いたことがある。SUGAにとって音楽とは、仕事である前に“好き”なことのひとつなのだろう。そして、メンバーが歌ったメロディををすぐさま編曲していたのも印象深い。自分の思い通りの作品を作るというよりも、今目の前で見つけた音楽の種を育て、開花させたいという愛情を感じる視線だった。

 もともとSUGAはプロデューサー志望で活動をスタートさせたという背景もあり、こうしたコラボは今後も広がり続けるのではないかと期待が高まる。今やグローバルグループとなったBTSだから歌えることもあれば、それぞれのアーティストの立場だからこそ伝えられる歌もあるだろう。今度はどんなアーティストがSUGAのフィルターを通じて内に秘めた想いを歌にしていくのか。BTSの活躍と共に、プロデューサー・SUGAの躍進も心から楽しみにしている。

※1:https://www.kpopmonster.jp/?p=33616
※2:https://mdpr.jp/k-enta/detail/2062488

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