さんひ、mihoro*、上野大樹からyama、フレデリックまで シーンを担う5組が集った『BOOM BOOM BOOM LIVE vol.3』
プレイリスト企画「BOOM BOOM BOOM」によるライブイベント『BOOM BOOM BOOM LIVE vol.3』が10月11日に行われた。
本公演には、新人アーティスト応援企画「STARTERS MATCH」のプレイリストに参加する10組のうち、再生数と第一興商が展開する通信カラオケDAMのカラオケ歌唱ポイントが多かった上位3組が登場。さらに、音楽シーンを担うゲストも登場し、5組のアーティストがイベントを盛り上げた。進行は小関裕太が担当。各アーティストはMCの小関と話すトークパートで和やかな素顔を見せた。
はじめにライブに登場したのは、韓国生まれのシンガーソングライター、さんひ。呟くように、語りかけるように「アルコール、アンコール。」「♡いいね」「わかってるよ。」を披露。身体を揺らしてリラックスしたような半面、失恋や葛藤を描いた歌詞に生命を吹き込むような歌いっぷり。語尾の少し下がって聞こえる音程がダウナーな雰囲気を強調している。歌詞は具体的で切なさが胸をえぐり、さんひの歌い方がそれを加速させる。曰く「歌詞に没入している」そうで、特に繰り返すたびに表情が変わる「わかってるよ。」の終盤はむせび泣いているようで少し怒りをはらんだ凄みがあった。
シンプルなビートと流麗なピアノアレンジによって披露された3曲に続き、ラストを飾ったのは「銃口をこちらに向けて」。yamaの「春を告げる」を手がけたくじらが編曲を手がけたこの曲は、それまで披露された楽曲とは打って変わって、抽象的な言葉が創造力を掻き立てる。手数の多い跳ねたキーボードとドラムが高揚感を引き立てていく。巻き舌や下降気味の語尾は切なさを体現していたそれまでと一変し、クールな要素として楽曲を磨き上げていた。路上ライブ以外でははじめてのライブだというが、とてもそうは見えないパフォーマンスであった。
続いて登場したのはmihoro*。サビの少し不安げな雰囲気の高い歌声が一途な歌詞にマッチする「馬鹿な女」、一変してアコギとドラムが強気な「電車に乗って」を披露。3曲目に歌唱した「知らないワタシ」ではサポートドラムとして参加したDISH//の泉大智と目くばせをしながら楽しそうな表情を浮かべる。カントリー系の要素も感じ、曲ごとに異なるアプローチから引き出しの多さが印象に残った。
「『STARTERS MATCH』では2位だったんですけど、1番格好いいライブができたらなと思います」というMCに、ライブの経験を積んでいるからこそのモチベーションの高さを感じる。「また必ずライブハウスでお会いできたら」と語った彼女。SNSからのヒットが注目されがちな昨今、ライブハウスの存在を語る彼女は心強く思える。柔らかい歌声で歌われた「コドモノママデ」は子供のような無邪気さと大人の表情を見せるパフォーマンス、どちらも感じる今の彼女に似合う楽曲である。序盤のギターリフと歌詞が印象的な新曲「愛して欲しいの」を最後に披露し、ライブを終えた。
3組目の登場は、「STARTERS MATCH」1位を獲得した上野大樹。「今日はよろしくお願いします」と歌い始めたのは「同じ月を見ている」。続く新曲「海の目」は静かな海のような壮大さと静かさを備えた楽曲。トークパートでは歌詞を書く際に行またぎをしないように意識しているという話もあったが、そのことによって整然な印象をもたらしているのが分かる。静かな楽曲と整った文学的な歌詞は、不思議なぬくもりを備えていた。
上野の楽曲は、過剰な飾りのないシンプルな良さがある。「て」を経て演奏された「ラブソング」はそんな上野の楽曲の中でも異質な存在感を放っている楽曲だ。〈あの子は電車に飛び込んで この世をそっと去ってしまった〉といった歌詞が妙なリアルさを感じる。ただその後の〈無数の星の中に飛び込んだ〉といった歌詞や他の楽曲と変わらない温かみのある歌声には、楽曲を暗く悲しいものにしない力がある。まるで小説を読んでいるような没入を誘う生々しさと俯瞰の視点を感じた。