May J.が2年ぶりツアーで届けたステージへの思い “Dark Pop”を経た歌手としての最新形

 自身にとって約2年ぶりのツアーとなった『May J. 15th Anniversary Tour 2021 -Euphoria-』のファイナル公演が9月26日、東京・Zepp DiverCityで開催された。15年分の軌跡を丁寧になぞっていきながら、ファンへの感謝を、そして未来に繋がる最新の姿をしっかりと伝えていくこととなった一夜。その模様をリポートしていく。

 ツアータイトルを盛り込んだオープニングSEに導かれるようにしてライブはスタート。最初の2曲、「Story of Love」と「Don’t worry dear my boy」はともに活動初期にリリースされたR&Bテイストのナンバーだ。女性ダンサー2人とグルービィな歌を届けていく姿には彼女自身のルーツがしっかりと滲むと同時に、キャリアのスタート地点を懐かしく振り返らせてくれる印象的なシーンを生んでいた。まさに15周年を祝うライブに相応しい幕開けだ。

「みんな窮屈な日々を過ごしてきたと思うから、今日は不安とか悩みとか全部忘れて思いきり楽しんで、みんなで一緒に最高に幸せな時間を過ごして行きましょう」

 そんな挨拶の後、「ふたりのまほう」では心を震わすロングトーンを響かせ、「Faith(Japanese Ver.)」ではたっぷりの感情を歌に乗せて聴かせていく。「今の時期に心があたたまるような2曲を厳選してきました」と言って披露されたのは、「ひまわりの約束」(秦基博)と「糸」(中島みゆき)のカバー。名曲へのリスペクトを注ぎながら、キャリアの中で培ってきたシンガーとしての鮮やかな個性を強く感じさせていく。

 「どんな瞬間も大切にして一生懸命生きていく、その意味を伝えたい」

 そんな思いを持って届けられた「ロンド」。ミラーボールによって光の粒が降り注ぐ美しい演出と、胸の内をリアルに掬い取ったメッセージが感動的なシーンを描き出した「TSUBASA」。自身の活動において重要なターニングポイントとなった大ヒットナンバー「Let It Go~ありのままで~」。そんな歌心を強く感じさせる3曲を連続で届けた後は、再びカバーコーナーへ。ここでは、最近始めたYouTubeチャンネル「May J.のはしもっちゃんねる」内でカバーしていたという楽曲群を披露。優里の「ドライフラワー」や玉置浩二の「メロディー」に続き、Adoの「うっせぇわ」が披露された瞬間、会場は大きな興奮に包まれた。そのエモーショナルに荒ぶるボーカリゼーションは、普段のMay J.楽曲からは想像できないほどの迫力で、曲が終わった瞬間には会場が割れんばかりの拍手に包まれることとなった。「本性が出ちゃった(笑)」と冗談めかして笑っていたが、15年を経てもなお秘めたる引き出しを持っているMay J.の可能性にはあらためて感嘆するばかりだ。

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