プロジェクトセカイ、つんく♂リビルドシリーズ、MAISONdes…ヒットの鍵はクリエイターとアーティストの共創に

 クリエイターとアーティストの共創から生まれるクリエーションは無限の可能性を秘めている。実際に、昨今の音楽シーンでは、ボカロPが歌い手をフィーチャリングしたり、アーティスト同士がユニットを組んだり、と横のつながりの価値が以前に増して高まり、できることのバリエーションが広がってきている。そしてこのような共創が、ひとつのヒットの法則へと結びついていることは否めない。そんな共創を生み出しているプロジェクトを本稿では取り上げる。

 まず紹介するのは、今年7月26日にユーザー数500万人を突破したiOS/Android向けゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(略称:プロセカ)。ボカロ曲を楽しみながらプレイできるリズムゲームのパートとアドベンチャーゲームのパートが呼応しあいながら意味を成す『プロセカ』のストーリーで登場するのは、初音ミクなどのバーチャルシンガーをはじめ、少年少女たちが集結した5つのユニット。ストーリー単体での密度の濃さのほか、ボカロシーンに関わるクリエイターやアーティストがこの5つのユニットにオリジナル曲を書き下ろすことで、よりストーリーに奥行きが出ているのが、『プロセカ』の醍醐味の一つでもある。例えば、バンドユニット「Leo/need」への夏代孝明による書き下ろし曲「フロムトーキョー」は、少年少女たちと同様に誰もが一度は抱える将来への不安を描くことで、『プロセカ』支持層と言えるデジタルネイティブ世代の共感を呼んでいる。同時に、ボカロシーンを構築してきたクリエイター、アーティストによる既発曲や書き下ろし曲とストーリーが一緒になることで、ボカロシーンへの愛着が湧きやすいのも『プロセカ』の美点だ。

フロムトーキョー / 初音ミク - Music Video (From Tokyo / Hatsune Miku)

 モーニング娘。を中心としたつんく♂による名曲のうちの8曲を8名のボカロPがリアレンジし、24名のVTuberが歌唱するアルバム『リビルドシリーズ①「でっかい宇宙に歌がある!」』。この作品は、つんく♂×CAMPFIREの夢支援型プロジェクト「Dooon!」に応募されたクラウドファンディング企画のうちの一つ。ピノキオピーによるリアレンジ曲「ザ☆ピ~ス!」をボーカルのCiとラッパーのFraからなるバーチャルアンデッドユニット・BOOGEY VOXXが歌唱したり、YASUHIRO(康寛)によるリアレンジ曲「♡桃色片想い♡」をバーチャルシンガーユニットのココツキが歌唱したり、名曲が新しい表情を見せる作品が誕生した。最もマークしたいのは、2000年代のヒット曲がボカロPの手腕により、現代風のサウンドへとブラッシュアップされていること。いまのデジタルネイティブ世代が好むトレンディなサウンドを生み出している彼らだからこそ可能な作品だ。本企画は、アレンジャーがいまのトレンドを的確に映し出す鏡のような存在であることを知らせるコラボレーションといえる。

リビルドシリーズ①「でっかい宇宙に歌がある!」ダイジェスト動画(60SPOT)

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