Ado、Da-iCE、櫻坂46、ずっと真夜中でいいのに。……閉塞感漂う現代に生まれた強烈なメッセージ放つ楽曲たち

 強いパンチラインを持つ楽曲というものは、一度刺さってしまうと抜けない棘のようなものだ。リリックに歌い手の実感が込められていればいるほど、そのメッセージに共感すればするほど、その音楽は忘れられないものになるだろう。そんな、強いメッセージ性を持った、棘のような楽曲について考察していく。

Ado「うっせえわ」

 この1年を振り返った時、「強烈なインパクトの曲」として真っ先に思い浮かぶのは、Ado「うっせぇわ」だ。

Ado「うっせぇわ」

 2020年10月に彗星のごとく現れた「うっせぇわ」が、音楽シーンの話題をさらってから約1年。もはや一過性の流行ではなく、時代を体現する一つの金字塔となったと言っていいだろう。

 サビの〈うっせぇうっせぇうっせぇわ〉はもちろん、全編に渡りパンチラインしかないと言っても過言ではないこの曲は、一見言葉の鋭利さや乱暴さが目立つ。だが、曲の主人公が反社会的かと言えばそれは真逆で、社会人のマナーも最低限のルールもよく知っており、それを実行することもできる人物であることがわかる。でなければ〈ちっちゃな頃から優等生〉や、〈模範人間〉という言葉は出てこないはずだ。

 ボーカルのAdoや、作詞作曲を務めたsyudouら若い世代は、世の中をよく見ている。彼らは、反発心を露骨に出したり、ルールを破ったりすることが得策でないどころか、かえって厄介ごとを招くだけだと知っている。だが、その内面に怒りや鬱憤がないわけではない。社会の中でうまく立ち回るしたたかさと、その内面に秘めた爆発するような世の中に対する「うっせぇわ」という本音、その両面を押さえていることが、うまく世渡りしながら生きる人々に刺さった理由かもしれない。

【Ado】うっせぇわ

櫻坂46「BAN」

櫻坂46『BAN』

 櫻坂46の2ndシングルの表題を飾った「BAN」は、タイトルからしてすでに尖っている。欅坂46時代から、いわゆる「王道のアイドル路線」とは一線を画したパフォーマンスを見せてきたグループではあるが、冒頭から始まる〈明け方までスマホで動画観てた/それじゃ起きられるわけがない/全てのことに遅刻して/今日もサボってしまった/カップ麺 お湯を注いで/「それなら寝てりゃよかった」/なんて あくびしてたら麺が伸びた〉という部分の生々しいほどの生活感の描写には度肝を抜かれる。

 タイトルの「BAN」は禁止や追放を意味し、ゲームなどのアカウントが停止させられることを指して俗に「垢BAN」と言ったりもする。この曲は、突然社会から“BAN”を喰らったことへの戸惑いと怒りが爆発した曲だ。そして、それを歌う櫻坂46は、2020年10月に欅坂46から改名したばかり。リスタートを切り、新しい姿に適応しようとする過渡期にいる彼女らが〈「変わらないっていけないことなの?」〉と歌うのは、生傷を見ているようなグロテスクささえある。それでも、最後には〈どんな状況に追い込まれても/僕は絶対BANされるものか〉と真っ向から立ち向かうのが、これからの櫻坂46が進むストロングなスタンスを象徴しているようだ。

櫻坂46 『BAN』

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