dTVは、なぜライブジャンルを新設したのか NTTドコモ田中伸明氏が語る新時代のサービス

dTV「ライブ」が担う新時代のサービス

トライできるのがdTV

ーーその取り組みのひとつとして、スチャダラパーのBoseさんときゃりーぱみゅぱみゅさんがMCを務める、無料配信のオリジナル番組『KPPとBose みんなの放課後』(毎月 第1、第3火曜日 18:00~)を無料生配信されています。

『KPPとBose みんなの放課後』

田中:世の中のトレンドとして、ポッドキャストやClubhouseもそうですが、これからは音声であろうが、テキストであろうが、映像ファイルであろうが、ユーザーが興味を持っているアーティストや人に紐付いているものを、どう提供していくかが大事だと思っていて。オリジナル音楽番組も、そのための様々な取り組みのひとつです。

ーー『KPPとBose みんなの放課後』は、地方の生放送番組のような緩さが魅力だと思いましたが、そういうテレビ番組を作りたいということでしょうか?

田中:『KPPとBose みんなの放課後』は、アーティストの特性を考えてああいう形になりましたけど、特段そこにこだわっているわけではありません。要は、dTVとして映画やドラマをお見せするだけではない、新しいサービスをどう作っていくか。ラジオのように1人でしゃべってもらうでもいいし、歌ってもらう形でもいいし、フォーマットにはあまりとらわれずにやっていきたいです。

ーー音楽にこだわるのであれば、いずれ『夜のヒットスタジオ』のような生放送の音楽番組も面白そうですよね。

田中:はい。それはぜひやってみたいですね、そういうアイデアは、どしどしいただきたいです(笑)。特に最近は昭和の歌がもう1回戻ってきて、若い方たちの間で人気が出てきているので、そういうカルチャーにもトライしていきたいです。

ーー昭和と言えば、dTVの「ライブ」の動画ランキングで、中森明菜さんがランキングに入っていましたね。

田中:はい。見ているのはその世代の50代とかもっと上の層の方が多いのですが、1周回って若い方にも影響を与えています。これは私事ですが、私はQUEENが最初に流行った時代の世代なので、高校生くらいの時から「ボヘミアン・ラプソディ」をカラオケでずっと歌ってきて。ある時、部下とカラオケに行って歌ったら、映画がヒットしたことでトレンドを追いかけていると思われて、「部長が無理して頑張っている!」と言われました(笑)。ほかにもジャッキー・チェンの映画『プロジェクトA』のテーマ曲も十八番なのですが、5月に『プロジェクトV』が公開された影響もあってか、部下からは「がんばってトレンドに注目している上司」として、高評価をいただけるようになりました(笑)。

ーー音楽や映画、ドラマなどのコンテンツが、古いとか新しいといった見方ができなくなっている。実際にインターネット上には古い番組も新しい番組も並列していて、古い曲が急にトレンド入りする事象もあります。

田中:今はそれを、チャンスとして捉えることができるんです。僕らが子供の頃から受けてきた、音楽はステレオやウォークマンで聴き、映画やドラマはテレビで見るものというエデュケーションとは、全く違った環境にいる若い方は、もっと違う楽しみ方ができていくのだろうと思います。そういう人たちからより支持を得るための工夫は、どんどんやっていかなきゃいけないと思っています。

ーー先ほどカラオケで「ボヘミアン・ラプソディ」を歌っていたと。田中さんは、もともと洋楽のロックがお好きだったのですか?

田中:嫌いではないです。ただここは沼のように深いところなので、大好きと言えるまでの深みには達していませんけど(笑)。小学生の時にラジオのFM放送を聞き始めて、QUEENなどから洋楽に入って、80年代前半にJourney、その後は西海岸の軽めのメタルに行って、NIGHT RANGER系に足を踏み入れながら、Scorpions、IRON MAIDEN、W.A.S.P.などなど。ちょうどVan Halenが、1番脂が乗っていた頃に音楽の洗礼を受けました(笑)。

ーーいずれはそういうハードロック、ヘヴィメタルの番組も?

田中:それこそ僕は、MTVや『ミュージックトマトJAPAN』など洋楽のミュージックビデオ番組を見て育った世代ですから、それはそれで、やってみたいとも思います。やってみてダメだったらやめればいいので。

ーーダメだったらすぐやめる。そういう英断が会社を成長させるんでしょうね。

田中:トライができるのが、dTVという箱です。もちろんしっかり考えて、何でもかんでもということではありません。「これなら絶対にお客さんが喜んでくれる」と自信を持って始めなければ意味がないし、結果として喜んでもらえなかったとしても、次に繋げることができます。僕としては、実際にサービスを作っているうちの若手に、どんどんそういう経験をしてチャンスを掴んでほしいと思っています。ダメだったらやめればいいという好状況を与えてもらっている環境で、失敗しても自分の役に立つし成功すれば大きな自信になる。企画の規模はこの際どうでもよくて、どういうストーリーラインを考えたか、そこに企画を考えた時のエッセンスがちゃんと組み込まれていれば、トライすることに意味がある。それに彼らが考える企画のほうが、僕が考えるよりもずっと面白いと思っていますので。

ーーコロナ以前は、ライブにもよく足を運ばれていたのですか?

田中:そこまでヘビーにではありませんけど、行っていました。

ーーそうしたご自身のライブ体験は、dTVの「ライブ」にも活かされているところはありますか?

田中:あくまでも音楽ユーザーとしての僕は、テクノロジーでは解決できないところに高まりを感じて、そこに対する期待がライブに行くモチベーションになっているので、そこはなかなか難しいですね。ただ、リビングで寝転がりながら見られるのは、オンラインライブのいいところです。何か食べたり飲んだりしながら見られますし。面白いなと思ったのは、どうしても家で見るので、僕が趣味で見ているライブを家族も一緒に見ることになるんですね。

ーー何を見ているのかと、家族がリビングに集まって来て。

田中:はい。家族が「これ誰?」と、興味を示してくれる。以前は自分だけのパーソナルな状態で音楽を聴いたり見たりしていたものが、一緒にライブを見るという行為になった瞬間から、僕は家族にそのアーティストをプレゼンする立場になるんです。コロナ禍ならではなのかもしれないですけど、こういう音楽の伝え方もあるかもしれないなと思って面白かったです。そのプレゼンで興味を持った子供や家族が、次にどういうリアクションを取るかというデータはまだありませんけど、ライブを配信した時にどういう検索ワードが動いているか、その後にどうSNSが動くかはある程度分かっていて。家族内での反応やその後のアクションも、何か検証することができたらいいなと思っています。

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