スカート、Official髭男dismら擁するIRORI Recordsレーベル長インタビュー 徹底した“アーティスト・ファースト”の姿勢

ヒゲダンと一緒に1から階段を上ってこられたのはよい経験になった

ーーヒゲダンは、タイアップのハマり具合も抜群ですよね。「Pretender」(映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』)、「I LOVE...」(ドラマ『恋はつづくよどこまでも』)、「Cry Baby」(アニメ『東京リベンジャーズ』)など、主題歌としての役割を果たしながら、バンドの音楽性の高さも存分に発揮されていて。

Official髭男dism - I LOVE...[Official Video]
Official髭男dism - Cry Baby[Official Video]

守谷:それはもう藤原聡(Vo/Key)の才能でしょうね。いろいろな依頼をいただきますし、彼もいろんな思いのなかで制作していると思いますが、テーマの噛み砕き方がすごいんですよ。たとえば「Pretender」もそう。いまだから言えますが、先方から提示されたリファレンスが“The Who”だったんです。メンバーは「あまり聴いたことないですね」という感じだったんですが、「The Whoとヒゲダンの着地点はどこだろう?」と話すなかで、彼が作ってきたのが「Pretender」だったという。

Official髭男dism - Pretender[Official Video]

ーー全然“The Who”じゃないですよね?

守谷:そうですね(笑)。先方とも何回かデモのやり取りはさせてもらったんですけど、とても良い形に落とし込むことができたのかなと。

ーーヒゲダンは作品を重ねるごとにリスナーの幅を広げ続けている印象がありますが、守谷さんやスタッフのなかで、「あれがポイントだった」という楽曲は?

守谷:今振り返ってみると、「Stand By You」(2018年10月)がキーだったと個人的には思いますね。「ノーダウト」から半年後のリリースだったんですが、「Stand By You」は、まさに本人たちが「これを出したい」と強く希望していた曲で。タイアップを付けることも考えたんですが、曲の力を大事にして、あえてノンタンアップでリリースしました。あの曲が耳の肥えたリスナーにも届いたことで、その後の「Pretender」をしっかり聴いてもらえる土壌が出来たのかなと。あと、今の映像チームとの付き合いが親密になったのも、「Stand By You」だったんです。もともと僕ともつながりがあった新保拓人(映像ディレクター)を中心としたチームなんですが、MVやアーティスト写真、アートワークでも新しい見せ方をしたいと思って、みんなでロサンゼルスに行って撮影して。「FIRE GROUND」のMVとの2本撮りで、最少人数で行ったんですが、当時としてはかなりがんばって予算を捻出しました。それ以降、メインの楽曲のMVはほぼ新保監督に撮ってもらっていますね。

Official髭男dism - Stand By You[Official Video]
Official髭男dism - FIRE GROUND[Official Video]

ーー映像、音響のチーム作りも重要ですよね。

守谷:むしろそっちがメインでしょうね。曲を作るのはあくまでもアーティストですが、レコーディングの環境だったり、MVに関してはチーム作りが大事なので。レコーディングエンジニアや楽器テックをはじめ、アーティストがやりやすい環境を作ることで、作品もより良くなるはずなので。ヒゲダンの場合、「Stand By You」の制作の時期にそこが形成できたのかなと。「ここからいくぞ!」というエネルギーが生まれたし、ラジオのオンエアも増えて、リリース後にApple MusicのCMソングにつながって。

ーーヒゲダンと関わることになったとき、これほどの成功は想像していましたか?

守谷:もちろん「そうなってほしい」と願っていましたけど、ここまでの姿は想像できていなかったかもしれません。目に見える形で大きくなったし、ヒゲダンと一緒に1から階段を上ってこれたのは僕にとってもすごい経験になってますね。

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