THE SUPER FLYERS×SKY-HI×origami PRODUCTIONS 特別インタビュー “架空の音楽フェス”に詰まったコロナ禍への思い

THE SUPER FLYERS『Here, We Live』座談会

国内大型フェスの開催中止「納得のいくような経緯ではなかったのは確か」

ーーKan SanoさんとNenashiさんは、THE SUPER FLYERSとの共同制作の話を日高さんからもらった時にはどう思いましたか?

Kan Sano(以下、Sano):まずは日高さん、TAKさんとご一緒できることがシンプルに嬉しかったです。2人ともプロ中のプロのミュージシャンですし、THE SUPER FLYERSのメンバーが素晴らしいこともわかっていたので。実は、その話をいただく1、2年くらい前にSKY-HIさんのライブでご一緒させていただいたこともあったんですよ。2曲で参加したのですが、それもすごく楽しくて。お話をいただいた時から「これは絶対にいいアルバムになるだろう」と確信していました。

Nenashi:TAKさんのことは、アメリカ人アーティストのサポートをしていた時に知りましたし、知人の紹介で、日高さんのMCも見た事があります。ようやく繋がったなという気持ちです。

ーー「架空のフェス」といえば、奇しくも昨日『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021』の中止が渋谷陽一社長から発表され(インタビューが行われたのは7月8日)、コロナ禍におけるフェスのあり方や国、自治体、医師会などの方針、我々オーディエンスの気持ちの持っていき方など、様々なことを考えさせられたのですが、その辺りアーティストとしてみなさんは今どのようなことを考えているのか、率直に聞かせてもらえますか?

SKY-HI:思うところは色々あって、考えをまとめるのはなかなか難しいけど、今回の件については納得のいくような経緯ではなかったのは確かで。音楽好きとしては憤りを感じるところはありますし、そこはきちんと表明していかなければならないとも思っていますね。そもそもコロナ禍でのフェス開催ということで、主催者側も感染予防対策など万全に備えていたなか、全く関係ない角度からの中止要請があるのはやはり道理に適っていたとは思えないです。ではアーティストとして今何をすべきなのか。「声を上げるべき」というのも、「今できることをやる」というのもどちらも僕は正しいと思いますが、「何も思わない」「仕方ない」みたいなことは絶対に言いたくないですね。

Tak:フェスという、いわば「ハレ」のイベントがことごとく中止になっていくことで、抑圧された気持ちの持っていきどころというか、心を開放させる場がなくなってきていることが何より怖いと思います。ただ、それに対して若い世代から一歩も二歩も先に進んだ意見がどんどん出てきていることに対しては、未来や希望を感じていますね。アーティストとしては、フェスの代わりになるもの、みんなの心を開放させることができるものを率先して作っていかなければいけないし、そういう場が必要なのだということを提示し続けなければいけないと思っています。

Sano:コロナが始まってもう1年半が経つんですよね。もっと最初の段階から感染防止対策をしっかり打っていれば、今頃になってこんなに緊急事態宣言を発出しなくてもよかったんじゃないかと思っています。そこに対する苛立ちとか、もちろんありますし、これからも政府がやっていることに対して国民は注視していかなければならない。おかしい時には「おかしいぞ!」とちゃんと声を上げるべきだとも思うし、批判しているだけでは何も変わらないので、ミュージシャンとして今何が出来るかも同時に考えていかなければならないなと思っています。

Nenashi:みなさんおっしゃる通りだなと思います。自分よりも若い世代から面白い意見やアイデアがたくさん出ているのは僕も感じていて、そこは素直に勉強させてもらって自分と同世代にも「こんな考え方があるよ」と伝えていくことが出来たらいいなと思っています。しかも「ただ伝える」のではなく、そこにユーモアやジョークを挟みながら発信することも大切なことだなと。

全員演奏がうまくて、あっという間に作業が終わった

ーーでは、実際のアルバム作りについて教えてもらいますか?

Tak:時系列で言うと、Shingo SuzukiさんがプロデュースしてくれたM4「Tomorrow is another day feat. Michael Kaneko(Prod. Shingo Suzuki)」がまず出来上がったのかな。そこからアルバム作りがスタートしたという感じです。Kan SanoさんにプロデュースしていただいたM3「Stay In Love (Prod. Kan Sano) 」は、Yuho Yoshioka が作詞に挑戦していて、作曲は僕とYuhoで手掛けています。バンドはホーン隊以外全員参加していますね。コロナ禍で辛い日々を送る人たちを、そっと勇気づけるようなメッセージソングに仕上がったと思っています。M5に収録されている「リインカーネーション」のセルフカバーは、以前からずっとやりたくて日高くんにもことあるごとに言っていたので(笑)、今回こういう形で実現できて感無量です。

SKY-HI:僕もこの曲はいつかまたやりたいとずっと思っていたので、念願叶ってよかったなというのが一つ。どんな状況でもやり直せる、再び生まれ変わることができるというメッセージは、今この状況下で聴くと作った当時とはまた違った響きがあるんじゃないかなとも思いますしね。説得力のあるセルフカバーになったのではないかと。

Tomorrow is another day

Tak:オリジナルの「リインカーネーション」はmabanuaがアレンジを手掛けていますが、それを再びorigamiチームとタッグを組んでアレンジし直す、まさに再生、生まれ変わらせることが出来たという意味でもやってよかったと思いますし、染み込み度合いが違うのかなと僕は考えています。

Sano:僕は「Stay In Love」を主に一緒に作ったんですけど。この曲は確か、TAKさんがデモ作ってくれていて、それを聴かせてもらって最終的にドラムとベースを生に差し替えてもらい、TAKさんに弾いてもらったギターの素材を僕が編集しました。とにかくメンバー全員めちゃめちゃ演奏がうまくて、レコーディングも本当にスムーズに進んであっという間に作業が終わった記憶がありますね。なので大したディレクションもしていないんです(笑)。

 ただ、Yuho君から「歌詞をチェックしてほしい」と言われ、自分もそんなに得意分野でもないんですけど「僕ならこういう言い方はしないかな」とか「これだったらこっちのほうがいいかな」みたいな提案をさせてもらって。その時に彼が「いや、ここは絶対こうしたいんです」みたいな箇所があったんですよ。「これこれこういう意味だから、この言葉を使いたくて」みたいな。彼の中で、作詞家としての自我が生まれた瞬間だったと思うんですけど、そこに立ち会えたことはすごく嬉しかったですね。

Nenashi:僕は今回、「SNFKN」という曲を歌わせてもらいました。歌詞を担当したHiro-a-keyは、日高さんから「北欧の神々しい景色をイメージした」と頂いたようで、イメージを掴むために北欧の映画やスウェーデンのドラマを観たりしたと言っていました。そんななか『ムーミン』もフィンランドの作品であることを思い出し、色々調べていくうちにスナフキンというキャラクターがNenashiにも通じるという思いから、彼の生き様を歌詞に投影させたそうです。

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