加藤ミリヤ、生まれてきた喜びを分かち合った生誕祭 隠れた名曲群で彩った『BIRTHDAY BASH』レポ

 加藤ミリヤの誕生日を祝うスペシャルライブ『MILIYAH BIRTHDAY BASH LIVE 2021』が6月19、20日の2日間、TOKYO DOME CITY HALLで開催された。2018年にスタートし、今回で3度目を迎える生誕祭。リアルサウンドではその2日目の模様をレポートしていく。

 生バンド+DJによるインストに導かれるようにミリヤがステージに現れると、オーディエンスは万雷の拍手やペンライトの光でお祝いの思いを飛ばし、感染予防対策に則った上で会場をハッピーなムードに包みこんでいく。1曲目は「ROMANCE」。ミリヤは楽しそうにカラダを揺らしながら、グルービィな歌声を響かせる。様々な女子の名前をラップしていくイントロで一気に会場を掌握した「新約ディアロンリーガール」では、「心で歌って!」と客席にマイクを向け、かけがえのない瞬間を共有していく。「声が出せないので踊りましょう!」という一言を合図にスタートしたのは「あたしの細胞」。強烈なインパクトを持つタイトルフレーズを何度もリフレインさせる中毒性の高いナンバーに、フロアは大きく揺れた。オープニングから熱量の高いパフォーマンスを立て続けに披露し、ライブアーティストとしての矜持を見せるミリヤ。だが、自身の誕生日というパーソナルなイベントをベースとしたライブなだけに、どこかリラックスしたムードが漂っているのも印象的だ。

「私的には“ミリヤー!”って呼んでもらえないのがすごい切なかったりするんですけど、でも全然昨日も楽しくて。今日は2日目、最終日なので思いきり楽しんでもらえたらなと思ってます。懐かしい曲、あと今このときだからこそ歌うべきだなと思った曲を選んできたので、聴いてもらえたらなと思います」

 そんなMCの後に用意されたパートでは、ミリヤのボーカリストとしての力を改めて実感させる3曲を配置。バラード「空」では、日常に散らばる些細なことにこそ幸せがあるというメッセージを、繊細に紡がれるボーカルの力で聴き手の胸へと柔らかく沁み渡らせていく。ディズニーアニメ『モアナと伝説の海』日本語吹き替え版エンドソングとなっていた「どこまでも~How Far I’ll Go~」では、美しくも力強い意志をその歌に込める。そして、盟友・清水翔太の「花束のかわりにメロディーを」のカバーは、ミリヤならではの圧倒的な歌心をもって届けられた。

 再び挟まれたMCでは、コロナ禍を通してあらためてライブの尊さを実感したと感慨深げに語る。さらに、無事に第二子を出産したというプライベートなニュースも。「直接、ファンのみんなの目を見ながら伝えたかった」というミリヤのあたたかな思いに対し、観客たちはさらなる祝福の思いを大きな拍手に乗せて返していた。

 赤いペンライトの光が客席で揺れる中、心に存在する孤独感と対峙しながら感情たっぷりに歌われた「リップスティック」。〈私は歌うわ/死ぬまで此処に立って〉と炎のようにたぎる決意を力強く叩きつけた「BURN」。アーティストであることを背負って生きていく覚悟を込めた新曲「宿命」。このパートに並んでいたのは、ミリヤ自身のアイデンティティやアティチュードを強く感じさせる3曲と言える。それぞれに注ぎ込まれた鋭いメッセージに、観客たちは心酔しながら圧倒されていた。

 「6月22日の誕生日で33歳になるんですよ。ビックリ。(デビューの時は)16歳だったのに、みたいな感じで(笑)。ずっと一緒に歩んできたので、ファンのみんなはもうほぼ親戚くらいな感じに私は思ってるんですけど。ほんとに感謝しています」と、楽しそうな表情でナチュラルな思いを伝えていくミリヤ。その後はメドレー形式で「PRIDE」「Heartbreaker」「Want You Back」「愛の国」を。今回のセットリストはファンクラブ会員へのアンケートを元に決められ、特にメドレーはその結果を大いに反映したものになっていた。約17年にわたるキャリアの前期楽曲を中心に披露した初日公演に続き、2日目となるこの日は後期の曲たちで構成。「今日は定番の曲があまりないんですよ(笑)」とミリヤは言っていたが、そのコアなセレクトにはファンからの熱い思いがしっかりと滲んでいたし、何よりもミリヤの隠れた名曲群が生で聴ける喜びは筆舌に尽くしがたい。それもまた通常のライブとは少し趣の異なる『BIRTHDAY BASH』というライブならではの醍醐味と言えるだろう。メドレーから流れるように始まった「終わりなき哀しみ」。そこでは、ミリヤがピアノを弾きながら歌うというサプライズも! 

「何気にピアノ弾きながら歌うのはずっとやったことがなかったんですよ。今回、バンドのみんなの一部になれた感じがして、めちゃくちゃ気持ちがよくて幸せでした(笑)。ありがとうございます」

 さらにミリヤはこの日が“父の日”であったことを受け、33歳で亡くなった父親と同じ年齢になることに対しての思いを語っていく。そして、「生きていればつらいこともいっぱいあるけど、与えてもらった命を大事にして幸せに生きていきましょう」とあたたかな言葉をエールとして投げかけてくれた。

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