宮本浩次、新たな絶頂期に放つエネルギッシュな躍動感 『sha・la・la・la』に詰まった“歌い手としての夢と生き様”

 “夢”というキーワードは「shining」でも重要な役割を演じている。エキゾチックなスパニッシュギターの音色と宮本のルーツをストレートに表現した歌謡曲風メロディが印象的なこの曲は、今回のシングルの中で最も豪華でドラマティックなアレンジが施された曲だ。〈shining 今が俺の目指した場所/そして俺の始まりの場所〉というサビの歌詞には、十三代目團十郎(コロナ禍で襲名披露が延期したため、現時点ではまだ市川海老蔵)の襲名に寄せたメッセージも感じられるが、それと同時に、宮本自身が今どこに立っているのかということの表明でもあると思う。〈ああ風が吹いてる荒野に舞う男の夢〉〈ああ行くしかないな月夜に誓う男のうた〉という、どこまでもエレファントカシマシ的な風景が物語る通り、そこに歌われているのはどこまでも宮本自身のストーリーなのである。

 そして、今回のシングルで筆者が最も好きなのが、NHK『みんなのうた』の「passion」である。『みんなのうた』といえば、宮本がNHK東京児童合唱団に在籍していた当時に歌った「はじめての僕デス」も同番組で放送されていたが、まさにその頃から連綿と続く歌手・宮本浩次の歩みすべてを照らすような名曲だ。軽やかなピアノとストリングスに乗せて歌われる〈どの道 この道 俺の道/行くぜ 転がり続けろ〉というフレーズには、これまでの軌跡と今いる場所、全部を問答無用で肯定するような力強さがある。地声のシャウトからファルセットまで広い音域を伸び伸びと動き回る宮本のフレッシュな歌も、シンプルなロックンロールサウンドも蒼々と輝いている。なんせ〈そう全てはit’s OK 今の俺にhappy birthday〉である。この歌詞を堂々と歌い切る今の宮本の状態が絶好調でなくてなんであろうか。

 そして6月12日、このシングルのリリースを目前に控え、東京ガーデンシアターで宮本のワンマンライブが行われた。バンドメンバーは名越由紀夫(Gt)、キタダマキ(Ba)、玉田豊夢(Dr)の磐石のトライアングルに加え、キーボードはプロデューサーの小林武史がプレイ。ライブのタイトルは『宮本浩次縦横無尽』。これ以外ないというタイトルだ。

 文字通り縦横無尽なセットリストの中で、当然ニューシングルの3曲も披露されたのだが、二部構成の第二部、冒頭と最後に演奏された「passion」と「sha・la・la・la」は本当に最高だった。アクセルベタ踏みでちょっと苦しそうな表情を浮かべながらハイトーンを響かせる「passion」。そして通算24曲目(!)、星空の映像をバックに今にもぶっ倒れそうになりながら歌った「sha・la・la・la」では、オーディエンスの振る手が温かく宮本をサポートした。壮絶なまでに生々しいその光景は、この曲たちに刻まれたものをまっすぐ伝えていたように思う。ニューシングル『sha・la・la・la』。これが宮本浩次の今の生き様であり、ドクドクと脈を打ち続ける夢だ。

※ライブ写真は『宮本浩次縦横無尽』の模様。

■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。

■作品情報
宮本浩次『sha・la・la・la』
初回限定盤(2CD+PHOTOBOOK/スリーブケース仕様)¥2,200(税込)
通常盤(CDのみ)¥1,320(税込)

<DISC1 収録楽曲>
1. sha・la・la・la
2. passion
3. shining
4. sha・la・la・la (Instrumental)
5. passion (Instrumental)
6. shining (Instrumental)

<DISC2 収録楽曲)
『Live from JAPAN JAM 2021』
1. 夜明けのうた
2. 異邦人
3. 悲しみの果て
4. Do you remember?
5. P.S. I love you
6. sha・la・la・la
7. ハレルヤ

※初回限定盤には、岡田貴之撮影の『JAPAN JAM 2021』ライブ&バックステージフォトを収めた20ページにわたるドキュメントフォトブックが付属。

■関連リンク
宮本浩次 HP
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