The Birthday×THE GROOVERS、1年越しの対バンを徹底レポート 藤井兄弟、夢の共演が叶った特別な一夜に

 『SHIBUYA SPECIAL MATCH』と題して、The BirthdayとTHE GROOVERSのツーマンライブが6月4日に豊洲PITで行われた。ありそうでなかった硬派な2バンドの共演だが、実はこの2バンドには他にはない繋がりがある。The Birthdayに10年前に加入したフジイケンジ(Gt)と、THE GROOVERSのフロントマン・藤井一彦は兄弟なのだ。二人がこんな形で邂逅するチャンスを見逃す手はない。そんなオーディエンスが豊洲PITには集まっていた。

 「Green Onions」が流れるステージに現れたのはTHE GROOVERSの3人。骨っぽいビートに乗って〈どこへ行こうと(中略)おまえのことを 探し当てるぜ〉と歌う「Groovaholic」を幕開けに「無条件シンパシー」を畳み掛け、トリオならではのソリッドなバンドサウンドで惹きつける。一彦が最初のMCでこう言った。

「1年ちょっと、待っててくれて本当にありがとう。今日やれて本当に嬉しいです」

 このツーマンは2020年4月14日に渋谷CLUB QUATTROで開催される予定だったのだが、コロナ禍のため延期になり、さらに会場も豊洲PITに変更されて、この日実現したものだ。

 キレのいいブギをギターで刻んだ「放浪の運命」では曲の途中で「レディース&ジェントルメン! オンベース、高橋BOB」と一彦が紹介すると、BOBは腹に響くベースを鳴らし、オーディエンスがビートに合わせてハンドクラップ。次いで一彦が「ヤスチカ!」と声をかけると、藤井ヤスチカの短いドラムソロをきっかけに軽いセッションになった。この3人で活動するようになって30年、阿吽の呼吸とはこういうことだと思わせる演奏には、無駄なく艶がある。

 「一番新しいアルバムから聴いてください」と一彦が紹介して歌い始めた「THE OTHER SIDE OF THE END」は2019年に出した『RAMBLE』からの曲。同作からもう1曲ファンキーな「FANG」を披露すると、フロアが照明で明るく照らされ、踊る人たちの姿が鮮明に浮かび上がった。拍手の中で一彦が再び口を開いた。

「実はあまり公にしてなかったんですけど、僕には弟がいるんです。今日はこの会場に来ています、フジイケンジ!」

 その一言でステージに登場したケンジが持った古いグレコのギターを指差して、一彦は「これは中3の時に買ったギター。1曲一緒にやろう!」と叫ぶ。ケンジは今もこのギターを愛用し、The Birthdayのレコーディングでも使っているそうだ。ちょっと照れたように二人は並んで軽快なロックンロール・ナンバー「乱気流ガール」を弾き出した。1本ギターが増えるだけでグッと音の厚みが増してカラフルな演奏になる。BOBとヤスチカも楽しそうに二人を見ながら曲を進め、間奏で一彦が「フジイケンジ!」と声をかけるとケンジのソロに。それを一彦が受けて二人で張り合うようにリフを重ねる。フロアから二人に大きな拍手が送られたのは言うまでもない。

 ケンジが舞台を去ると、再びトリオに戻ってパンキッシュな「ARROW」で空気を変え、ブルージーな「奇跡のバラッド」で一彦は熱を帯びていく演奏とともに力強く歌を伝えた。ラストは「狂おしきこの世界」。3人だけでThe Rolling Stonesのような熱量を感じさせ、「豊洲PIT、そして、ありがとうクラブクアトロ! We Are THE GROOVERS! また会おうぜ!」と叫んだ一彦からは、ようやく叶ったライブへの安堵も感じられた。

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