『関ジャム』出演でも再注目 バンドのフロントマンからトーク力生かした活動まで……Base Ball Bear 小出祐介の現在地
以前から自らの趣味嗜好やカルチャーをプレゼンする際の分かりやすさは、その対象を知らない人をも惹きつける魅力があった。ホラーからドキュメンタリーに至るまでを解析する映画評論、ハロー!プロジェクトを中心とするアイドル評論の分野では定期的に連載や企画の中心的役割を務め、RHYMESTER・宇多丸がパーソナリティを務めるラジオ番組『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)でも『エヴァンゲリオン』や『古畑任三郎』の特集を圧倒的なクオリティで担当し絶賛されていた。ついつい引き込まれていく流暢かつ理知的なトークは、『関ジャム』でも存分に発揮されていたように思う。
小出の評論は、作品を隈なくチェックし、細かい情報も取りこぼさずに関連づけるという点で高い精度が約束されている。聞き手は未体験の作品に惹きつけられたり、既知作品の新たな側面に気付けたりするのだ。また、自身の好みを詳しく掘り下げて紹介してくれることでファンはBase Ball Bearの楽曲に隠された面白みや感情の機微、楽曲の構造にも気づけたりもする。小出が興味関心を示す対象は、Base Ball Bearの楽曲を理解するためのヒントでもあるのだ。
無関係に思えたカルチャーたちが少しずつ繋がりを持ち大きなイメージを描き出す。それこそがBase Ball Bearの楽曲と小出の評論に通じる部分だろう。偏愛を土台とした選択力と、明確な意図を伴う編集力を駆使して作り出されるそれらは、他者の真似できないオリジナリティと記名性がある。その他にも、今年に入ってからはKinKi KidsやTEAM SHACHIに作詞家として楽曲提供を行い、6月には第三弾となる詩集『いまは僕の目を見て』を発表するなど彼の発信する言葉の強度を保証するような作品も多くリリースされているのだ。
Base Ball Bearが6月30日に「プールサイダー」をリリースするにあたって、小出がバンドの公式サイトで発表したコメントにはとても驚いた。これまで苦手としていたものや流行のコンテンツにも手をつけ楽しみたい、という決意が記されていたのだ。これまでの嗜好の範疇でさえも多彩な分野を網羅していたにも関わらず、これまで以上に守備範囲を広げるつもりなのだろう。彼の目がより広大な世界を捉えるようになった時、どんなメロディや言葉が届くのか。期待あるのみだ。
■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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