9mm Parabellum Bullet、『BABEL』&インディーズ2作を再現したツアー初日 爆音に乗せて届けた感謝と決意

 本来は2020年9月9日の“9mmの日”を皮切りに、トリビュートアルバム『CHAOSMOLOGY』のリリースツアーとして開催されるはずだった9mm Parabellum Bullet『カオスの百年 TOUR 2020 〜CHAOSMOLOGY〜』。新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となってしまったこのツアーが、年をまたいでついに実現した。しかも、内容は第一部では2017年に未完のままになってしまった『TOUR OF BABEL』をやり切るためにアルバム『BABEL』を、そして第二部ではインディーズ時代の『Gjallarhorn』『Phantomime』の2作品をライブで再現するというスペシャルなものにアップデート。チケットには新曲「泡沫」のCDが付くという、まさに待ち焦がれていたファンにとっては嬉しすぎるスペシャルなツアーである。

 第一部はサポートギターに武田将幸(HERE)、爲川裕也(folca)というおなじみのふたりが揃い踏みし、なんと6人編成(ギター4本!)でのパフォーマンス。劇場のような開演ブザーが鳴り響き、ステージを覆う幕が開く。すると目に飛び込んできたのは前列に下手から順にかみじょうちひろ(Dr)、中村和彦(Ba)、菅原卓郎(Vo/Gt)、滝善充(Gt)が一列に並び、その後ろに爲川と武田が控える、いつもとは違う立ち位置の6人だ。その見た目からしてすでにスペシャルな気分は高まるが、何より驚いたのはその音である。荘厳なSEから、いきなり1曲目「ロング・グッドバイ」の滝による凄まじいリフが空気を切り裂いた瞬間、これはとんでもないものを見せられている、と全身の血液が沸騰するような感覚に襲われる。

 ギターが増えたぶん音が厚くなっているのは当然として、単に厚くなるだけでなく、1曲ごとに緻密にパーツが組み合わされた立体芸術が作り上げられていくような印象なのだ。『BABEL』は滝が徹底的に作り込んだデモから始まったきわめて構築的な作品だが、その複雑で精密な作品をステージ上でもう一度(しかも凄まじいスピードで)構築し直していくようなライブ。「Story of Glory」では中村が大きく手を広げ、超高速でスウィングする「I.C.R.A」では滝がステップを踏みつつ弾き倒す。中村のスクリームも冴え渡っている。

 ポップなギターフレーズとともに軽やかにダンスする「ガラスの街のアリス」から、爲川が弾くアコースティックギターの響きと哀愁漂うメロディが景色を塗り替えていく「眠り姫」へ。再現ライブなので曲順は当然『BABEL』のトラックリストどおり、MCも挟まずに一気呵成に曲をたたみかけていくストイックな展開だが、イメージしていたのとは明らかに違う音がステージ上からは鳴り響いている。のちに菅原は「タネが割れた手品みたいになってないですよね?」と客席に問いかけていたが、実際、そこには初めて体感する『BABEL』、そして初めて体感する9mmがあった。

 「火の鳥」でスモークがステージを覆い隠して不穏な空気を醸し出したあとの「Everyone is fighting on this stage of Lonely」。これがものすごかった。イントロでのギターのユニゾンが楽曲の緊迫感を5割増しにし、高速スカビートが際限なく高揚を煽る。4本のギターにベースにドラム、そしてもちろんボーカル、目まぐるしく変わるテンポと次々と移り変わっていく見せ場。視線を動かしたり聴覚のフォーカスを切り替えたりで観ているこっちも忙しい。滝のギターが歌以上に饒舌にエモーションを表現する「それから」まで、約40分。詰め込まれた情報量と、それを的確に届ける超高性能な処理能力……9mmというバンドの粋がこれでもかと伝わってくる、圧巻の時間だった。

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