ゆずは強かったーーこの1年を乗り越え『YUZUTOWN』表現し尽くしたオンラインライブ2日間を徹底レポート

『ALWAYS YUZUTOWN』はサプライズの連続

 DAY2は、北川がカメラをセッティングするシーンから始まった。そこは、かつてゆずの2人が路上ライブをやっていた伊勢佐木町の横浜松坂屋前。目の前にはギターケースが置かれていて、まさしく当時の路上ライブの雰囲気。「今は無き松坂屋さんの前からお届けします。まずは新曲を」と、1曲目に歌ったのは明らかに「夏疾風」なのだが、歌詞が少し違う。「え?」「新曲なの?」と、冒頭からコメント欄を大いにざわつかせた2人。歌い終え「新曲の「春疾風」でした」としたり顔の北川に、「ズッル~!」と岩沢厚治。DAY2は、この「春疾風」を筆頭に、サプライズの連続で楽しませた。

 横浜松坂屋前で行われていたゆずの路上ライブは、1998年8月30日にラストを迎えた。あれから20年以上が経ち、当時を知らないファンも少なくない。もし当時見ていたとしたら、きっとこんな感じだったのではないだろうかと想像することができる演出だ。まさしくタイムスリップした感覚。ゆずの2人も、「最初のころは全然お客さんがいなくて。花火大会終わりのお客さんがたくさん流れて来て、その時も「値札」をやったんだよな」など、当時の思い出に花を咲かせる場面もあった。

 前半の楽曲は、事前にファン投票してもらった楽曲の上位が選曲された。「この曲がぶっちぎりで1位でした」という「幸せの扉」、僅差だったという「方程式2」を演奏。懐かしい曲の応酬に、ファンは「「幸せの扉」は『TOBIRA TOUR』の1曲目で印象的」「初めて買ったCDが『ゆずえん』だった」など、コメント欄では思い出大会が始まった。

 2人の飾らないキャラクターと、路上ライブ風ならではのリアルさで楽しませてくれたのは、「日曜日の午後」だ。イントロのハーモニカを岩沢が失敗して、「もう一回やらせて」とやり直し。それも2回。歌い終え、「若い頃作った曲は疲れるよな」と笑う岩沢に、北川は「そんなこと言うなよ。俺も日々痛感してるよ」と笑い返す。そんなやりとりから、20年以上変わらない2人の関係性が見えてうれしくなった。

 「今はコロナで帰宅する人も、その道のりでいろいろな思いを抱えていると思う。そんな今だからこの歌を歌いたいと思います」という北川の言葉で披露した「GOING HOME」。そっと寄り添いながら、やさしく背中を押してくれるしっとりとしたバラード調の楽曲で、〈すべてをなくしても始めれば良い〉という歌詞が、立ち上がる勇気を与えてくれる。

 松坂屋前の種明かしがされたのは、「GOING HOME」の後半。バンドサウンドが重なり、カメラがどんどん引いて行くと、そこに映ったのはDAY1と同じ広大な会場。松坂屋前のセットは、実は客席の真ん中にポツンと立っていたのだった。このサプライズには「鳥肌が立った」というコメントが多数上がった。

 ここからは、スケールが大きくエンターテインメント性溢れるライブが展開された。

「ALWAYS YUZUTOWNへようこそ。先週はもともとやろうとしていた世界観をお届けしました。今日はALWAYS YUZUTOWNとして、この1年間で成長した僕たちのYUZUTOWNを楽しんでください」

 「SEIMEI」「うたエール」「フラフラ」「GreenGreen」など二人のハーモニーを存分に響かせる楽曲が披露された他、DAY1よりパワーアップした演出で魅せたのは、「チャイナタウン」と「イマサラ」だ。DAY1では、敵に捕まり女子に助けられるというストーリーが展開された「チャイナタウン」。DAY2では、北川が、岩沢扮するカンフーの達人に弟子入りし、強くなって敵を倒し、女子を助けてリベンジを果たすという内容。北川が鍛錬をするシーンなどは爆笑だった。「イマサラ」は、冒頭からステージが爆発し火花が吹く豪快な演出。最後は北川が「我に力を!」と叫んで、なんと空中浮遊を披露し、そのまま空に消えていった。

 さらに「公私混同」では、ステージにロボットが登場。2人がそれぞれロボットに乗車し、ロボットでステージを動き回しながら歌うという謎の演出だが、「公私混同」の〈これでいいのだ〉という歌詞が妙に説得力を増した。これらの演出に「やりたい放題」「最高!」と、コメント欄も大興奮の様子だった。

 最後には新曲「ALWAYS」を披露して、ファンをさらに歓喜させた。「今までと生活のペースが変わり、よく空を見るようになって。時々きれいな空に出会たった時、みんなどうしてるかなと考えるようになった。この1年の思いを曲にしました」と北川。

 1コーラス目はピアノと2人のハーモニーで聴かせるしっとりとしたバラード調。歌詞には〈馬車道〉が出てくるなど、ゆずらしさを感じさせる。〈会いたい人がいる 今すぐにでも〉という歌詞は、まさしくファンに向けたメッセージだろう。

 ALWAYSには、いつでも、いつまでも、といった意味がある。今という時代を憂いながら、その中で大切なものを見つけ、また一歩ずつ前へと進み出していくような楽曲。その隣にはいつでもゆずがいて、いつまでも一緒にいてくれる。それはゆずにとっても同じだろう。コロナ禍の今を通して改めて感じる、ゆずとファンのつかず離れず常に思い合う関係性がこの曲には表れていた。

 この日はMIZUの2人が応援に駆けつけたほか、夏に約2年ぶりとなる有観客ツアー『YUZU TOUR 2021 謳おう』を開催することを発表。「このご時世、歌おうと言っても歌えない。でも何かしらの形で、心と心を通わせて歌えたらと考えています」。これにはファンもうれしさを爆発させた。

 1年を乗り越えたゆずは強かった。今回のライブがそれを証明している。ゆずの〈ばかやろ~〉がもっと聴きたい。ゆずの〈これでいいのだ〉がもっと見たい。そう思わせてくれる2日間だった。

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

■セットリスト
DAY 1:YUZUTOWN

1.夢の地図
2.桜木町
3.レストラン
4.まだまだ
5.チャイナタウン
6.公園通り
7.栄光の架橋
8.SEIMEI
9.夏疾風
10.イマサラ
11.夏色
12.NATSUMONOGATARI
13.花咲ク街

DAY 2:ALWAYS YUZUTOWN

1.春疾風
2.値札
3.幸せの扉
4.方程式2
5.日曜日の午後
6.GOING HOME
7.SEIMEI
8.うたエール
9.フラフラ
10.チャイナタウン
11.GreenGreen
12.イマサラ
13.公私混同
14.ALWAYS

ゆずオフィシャルサイト
https://yuzu-official.com/

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