the band apart 木暮栄一「HIPHOP Memories to Go」第3回 高校時代、原昌和の部屋から広がった“創作のイマジネーション”

バンアパ木暮、“原の部屋”から始まったイマジネーション

同級生と「バンド」をやっているという幸運

 僕たちの趣味嗜好は重なっているようで実は相当バラバラだったので、集まる部屋でも当然いろいろな音楽が流れていたし、いろいろな映画を共に見て、様々な話をした。

 僕は荒井のおかげでサザンオールスターズやCHAGE and ASKAの面白さを知ることができたし、原に勧められて聴いたPanteraやCasiopea(この二者の振り幅もすごいけど)の「I Love New York」、川崎に教えてもらったExtremeの3rdアルバム『III Sides to Every Story』などは今でもたまに聴いている。

 それはまた逆も然りで、僕が勧めたヒップホップ、あるいはそれに準拠したような音楽の中から、川崎はNujabes、荒井はG.Love & Special Sauceあたりを気に入って聴いていたように思う。

 原だけは最初からいろいろなヒップホップを聴いていて、よくWu-Tang Clan の「Bring Da Ruckus」や House Of Pain の「On Point」のようなハードコアな曲のフックを、カタカナ英語で耳コピして口ずさんでいた。そうした下地があったからか、A Tribe Called Quest の「Electric Relaxation」が入ったテープを僕が何気なくかけた時、真っ先に反応したのも原だった。

A Tribe Called Quest - Electric Relaxation

 音楽というのは面白いもので、イントロから一気に耳を惹きつけられる曲もあれば、繰り返し聴くうちにだんだんと好きになっていくものもある。ストリーミングがメインになってからは加速度的に前者が多くなってきている気がするけど、僕たち4人が原の部屋、のちに移動の機材車の中で体験・共有していったのは圧倒的に後者。

 その経験があるから、最初はピンと来なくてもとりあえず形にしてみるクセがついていったのだと思う。

 10代の頃にできた友達というものは、最初は趣味や話が合うとかそんなことはあまり関係なく、同じクラスだったとか、通学路が一緒だとか、そういった些細な理由で仲良くなって関係が構築されていく。

 その関係性の希少性と価値に気付くのは、それぞれの人生の場面が移り変わってしばらくしてからのことで、その頃にはお互いの生活は分かたれているだろうし、年が経つほどに、昔のように仲間とダラダラくだらない話をしながら過ごすような時間はなくなってくる。たぶん一般的にはそんな感じだよな......と考えれば、相も変わらず、中学・高校 の同級生と「バンド」をやって暮らしているなんて、宝くじに当たる以上の幸運でしかないと思う。

 願わくば、そんなボンクラ4人が作る音楽に縁あって触れてくれた人にも、幸多からんことを。もちろん、これを読んでくれているあなたにも。

連載バックナンバー

第2回:海外生活でのカルチャーショックと“A Tribe Called Questの衝撃”
第1回:中高時代、メンバーの強烈な第一印象を振り返る

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木暮ドーナツ Twitter(@eiichi_kogrey)

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