AKB48、乃木坂46との形勢逆転どこで起こった? 新番組は逆襲の一手となるか

 AKB48の新番組が放送される。タイトルは『乃木坂に、越されました。~崖っぷちAKB48の大逆襲~(仮)』。ユーモアと皮肉と自虐を込めたタイトルである。世間がAKB48に感じる印象は王道女性アイドルグループかもしれないが、もともとはアングラで王道へのカウンターといえる活動を続けてきた。それによって大きなインパクトを与えてファンをワクワクさせてきた。新番組のタイトルも、今では王道のポジションになった後輩である乃木坂46へのカウンターだ。これぞAKB48。久々に攻めた活動内容で世間に衝撃を与えようとしている。

AKB48『失恋、ありがとう』(通常盤)

 活動当初からずっと常識を覆す活動をしてきたグループである。基本的にテレビやコンサートでしか会うことができないアイドルの常識を覆し「会いに行けるアイドル」というコンセプトを作り出した。これは今ではアイドル業界の定番であり常識となった。専用劇場を活動拠点にすることは新しかったし、展示場などを貸し切り大規模な握手会を全国で頻繁に開催することも珍しかった。ファンの人気投票によりシングル表題曲を歌うメンバーを決める「選抜総選挙」というファン参加型のイベントを開催したことは画期的だ。一時期はテレビで生中継されたりと、ファン以外も注目する大規模なイベントになっていた。グループ全体で300人を超えるメンバーがいるアイドルグループも過去に同様の例はない。

 刺激的な活動内容に対し、楽曲は丁寧に作り込まれたキャッチーなメロディの王道J-POPが多い。安心して聴けるポップスである。つまり活動による刺激と音楽における安心の両方が存在し、それが絶妙なバランスで保たれているアイドルグループなのだ。だからコアなファンを取り入れつつも、誰もが知る国民的アイドルグループになったのだろう。

 しかしカウンター的な活動をし続けることにはデメリットもある。「次は何をするのか」とより強い刺激を求められるようになってしまった。「選抜総選挙」や「握手会」が定番化してしまったこと、また前田敦子や大島優子など、世間的知名度が高かった初代神7の卒業が相次いだことによって、グループ全体の人気に陰りが見えてしまった部分もある。さらに指原莉乃や山本彩など世間的知名度が高いメンバーはHKT48・NMB48などのいわゆる地方の“支店”と呼ばれるグループのメンバーだったこともあり、“本店”としてのAKB48の印象が薄くなっていった。次世代のエースとして「サステナブル」(2019年)でセンターに抜擢された矢作萌夏の脱退も痛手だった。NMB48やSKE48のメンバーが選抜やセンターに選ばれる機会も増え、全国のグループメンバーの総合体になったことで秋葉原の「会いに行けるアイドル」というコンセプトが変化したことがファンの間で賛否が分かれたことも影響が強いだろう。

 決してAKB48というグループや音楽の魅力がなくなったとは思わない。昔も今も変わらずに素晴らしいアイドルだと思う。しかし活動に対する刺激はなくなりつつある。そんなタイミングで乃木坂46が頭角を現した。公式が「乃木坂に、越されました」と言っているので、あえてこの表現を使うが、まさに乃木坂46と人気が逆転してしまったのだ。

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