怒髪天、ライブの原点を再認識したステージ the pillows 山中さわおも迎えたツアー東京公演

怒髪天、山中さわお迎えた東京公演レポ

 こうして後半戦へと突入。「タイムリッチマン」は、ザ・ドリフターズのヒゲダンスのテーマ曲を思わせるイントロ&間奏のアレンジが特徴で、増子がヒゲダンスの振りマネをしてみせる。かと思えば、「星に願いを」では“星に願いよ届け!”と祈るかのように天を仰ぎながら絶叫。他にも“エンターテインメントは自分たちにはかけがえのないもの”と訴える「駄反抗王」など、今を生きる人々の境遇にリンクする楽曲が並び、胸に迫る。恐らく、この場にいたみんなが同じような気持ちを共有していたのではないだろうか。曲が終わってもずっと鳴り止まない拍手が、それを物語っていたように思えてならない。メンバーも「今までのこと(コロナ禍)が嘘だったみたいに普通にライブをやれている」(清水)、「ライブがないと体調が悪くなる(笑)」(上原子)、「健康&安全第一で楽しんでいただけたら」(坂詰)、「ホントにライブってサイコー!」(増子)とそれぞれに熱い思いをにじませる。

 さらに「アルコールが飲める世の中が早く来ますように」という願いを込めて演奏された「ポポポ!」では、“緊急事態”を表すサイレン音を模した上原子のギタープレイなど、粋なウィットとコミカル感で楽しませる。そして本編ラストは、ダメ押しとばかりに、〈ネバー・マインド!鋼鉄の精神!〉と歌う「H.M.A.」でパワー全開。清水と坂詰が行進曲のようなアタックの強いリズムを刻み、増子が力強く拳を振り上げる。すると、観客もそれに合わせて拳を高々と掲げる。その光景は鮮烈で、自ずと気持ちが奮い立った瞬間だった。

 アンコールでは、the pillowsの山中さわおをスペシャルゲストに迎え、コラボ楽曲「グッドモーニング東京」をライブ初披露。増子と山中のツインボーカルから醸し出される“都会感”が心地よく、ファイナルならではの特別メニューを堪能した。

 「30周年で武道館をやって、あそこが『バンドをやってて良かったな』と思うピークなんじゃないかと思ってたけど、違う。今回のツアーがピークだよ。こんなにバンドをやってて良かったと思ったことないよ」としみじみ語っていた増子。結成35年超のキャリアにおいて、怒髪天は、持ち前のユーモアのセンスとパワフルさでオーディエンスの心を揺さぶり続けてきた。観客はそこで感じ取ったものをメンバーに投げ返し、それがまたパフォーマンスに跳ね返る。こうしたコミュニケーションがあってこそ、相互のエネルギーチャージも可能になる。これこそがライブというものだろう。そんな原点を再認識すると同時に、生の音を浴びてその共鳴に身を委ねることの素晴らしさ、尊さを改めて実感した怒髪天のステージだった。

怒髪天公式サイト

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