声優 梅原裕一郎、強い存在感示す声色と演技力 出演作やSir Vanityでの活動振り返る

梅原裕一郎フォトブック『梅ごよみ〜観梅〜』(主婦の友社)

 男性声優が数多くデビューしていった2010年代、そのなかでも低音ボイスの魅力を十二分に発揮し、主演でも脇役でも存在感を示してきたのが梅原裕一郎だ。今回は彼の活動や魅力について記していきたい。

 子供のころは静かだった彼は、幼少期にはピアノを習い、中学生の時にはギターを持つ音楽好きな男子だったそうだ。音楽一筋だった梅原が声優に興味を持つのは、大学受験の浪人中、日本語吹き替えの洋画やアニメを見るようになってからだという(※1)。

 「お芝居をやったこともなかったし、人前で演じることにも抵抗があったので、自分は声優に向いてないと思ってました。1年間考えてまだやりたいと思ってたら、ダメ元で養成所に通おうと決めました」と語るとおり、大学での勉学と並行して、大学2年からは日本ナレーション演技研究所にも通い始める。時期にすれば2011年〜2012年ごろ、現在まで続く深夜アニメへの注目と興隆が始まったタイミングだ。

 2013年に声優デビューを果たし、翌年から徐々に出演作品を増やしていく。アニメ『赤髪の白雪姫』(TOKYO MXほか)ではミツヒデ・ルーエン役、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(MBS、TBS系)でのユージン・セブンスターク役などで好演を続け、『ヤング ブラック・ジャック』(TBS、BS-TBSほか)では主人公・間黒男役を演じると、低くセクシーな声色で注目を集めていく。『タイガーマスクW』(テレビ朝日系)では、ダブル主人公の一人、藤井タクマ役を務めるなどして、2016年には『第十回声優アワード』では新人男優賞を受賞した。

 低音ボイスを魅力とする男性声優は多くいるが、男女問わず梅原の声色に唸ってしまう人もいるのではないだろうか。その独自の魅力は様々な形で表れている。

 ピンと張った緊張感のようなものをイメージしがちな低音ボイスだが、梅原の声は寡黙さや落ち着きある性格、または常識人で真面目なムードを持ち合わせている印象だ。だが、コミカルなギャグ作品になってもなお、梅原の声色は存在感を示しているように聞こえる。

 彼が近年務めた主演作品でも、『ゴブリンスレイヤー』(TOKYO MX、AT-Xほか)でのゴブリンスレイヤー役や『慎重勇者〜この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる〜』(TOKYO MXほか)での竜宮院聖哉役など、異世界ファンタジーの戦士役に注目してみよう。シリアスなムードを持った前者では、寡黙さを纏った低音ボイスによって緊張感を作中にもたらし、コミカルかつギャグテイストな後者では、梅原の落ち着き払った声色と予想の斜め上をいく行動とのギャップが作品のコミカルさを引き立てていた。おそらく、梅原ほどの魅力的な低音ボイスでなければ、これほどの両極端なマジックは起きなかったのではないだろうか。

TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』 ティザーPV

 先に述べた『タイガーマスクW』での藤井タクマ役や、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のゴロー役、『クジラの子らは砂上に歌う』(ともにTOKYO MXほか)のオウニ役など、梅原がこれまでに演じてきた役どころからも分かるように、クールなキャラであったり、主人公と正対するようなヒール役を多く務め、それぞれで存在感を強めてきた。主役でも脇役でも、存在感をしっかりと残す声色と演技力を持った梅原が、今後どのような役をこなしていくのかにも注目だ。

関連記事