WEAVERが鳴らした“音楽で前進する意志” 10周年の先へと想い巡らせた『LIVE GAGA』
クライマックスに向けて新旧ライブ定番曲が演奏されるなか、ひときわ印象的だったのが「タペストリー」と「CARRY ON」だ。MCで「過去のライブの記憶や楽しかった思い出が未来へ進むための原動力になっている」という話が出たが、「タペストリー」はまさに記憶をテーマにした曲であり、「CARRY ON」は10周年のその先へ進む意志を歌った曲。ドラマティックなバラードに軽快なリズムのアッパーチューンと、曲調は違うが、実の詰まったサウンドからバンドの想いが伝わってきたのは共通だった。
思い出(=今日明日を生きる糧)を失った状態を「燃料がなくなった乗り物のように、どこかのタイミングで止まってしまうのではないか」と喩え、「だから今日一緒に思い出を作ることができてよかったです」と語ったのは河邉。配信で観ている人に対して「また安心してこの場所に足を運べるようになる日まで、この場所を守っていきたいと思いますので」と伝えるのは奥野。そんななか、杉本が、「音楽をすることさえも正しいのかどうか問われてしまう時代だと思っていて」と前置きしながら、「音楽自体はいつの時代になっても、どれだけ歳をとってもやれると思います。でも、この3人でステージに立って、今のWEAVERの音をみんなに届けられるのは、本当に今しかないなあと思っています。今しか救えない想いがあると思って、僕たちは今日もここに立ってます」と話していたのが印象に残っている。3人が今鳴らす音楽でしか救えないものがある、という趣旨のことは奥野や河邉も違う表現で言っていたが、そう言えるのは誰よりも彼ら自身がWEAVERの音楽を信じているから。それがとても嬉しかったのだ。
「音楽を以って前に進んでいく姿を見せていきたいなあという想いでいます」(杉本)という言葉通り、アンコールでは、4月28日に新曲「LIVE GAGA」を配信リリースすることと、秋にアルバムをリリースすることを発表。早速お披露目された「LIVE GAGA」では、目と目を合わせて音楽を分かち合う喜びが歌われていた。「Radio Ga Ga」で歌われたラジオというメディアは、ご存知の通り、あれから40年近く経った今でも生きている。バンド側に引用の意図がどの程度あったかは分からないが、いずれにせよ、〈You've yet to have your finest hour〉と信じる気持ちが3人を突き動かしたのではないだろうか。
なお、気になるアルバムについては、「曲は揃っているんですけど、こないだのビルボードライブや今回のツアーで感じたもの、みんなと共有したものをもうちょっと詰め込んで届けたいと思っているので、楽しみにしていてください」(杉本)とのこと。それは楽しみだと思いながらふと気がついた。本当だ、素敵な思い出は確かに未来を連れてきてくれるみたいだ、と。
■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。