WEAVERが鳴らした“音楽で前進する意志” 10周年の先へと想い巡らせた『LIVE GAGA』
WEAVERが東阪2公演のツアー『WEAVER 16th TOUR 2021「LIVE GAGA」』を開催した。ツアータイトルの意味はメンバーが話していた通り。“熱狂する”、“夢中になる”という意味を持つ“GAGA”という単語に、夢中になって音楽を楽しんでほしいというメッセージが託された。
「LIVE GAGA」と聞いて、まず思い出したのはQueenの「Radio Ga Ga」だ。同曲が発表された1980年代はMTVの登場、ミュージックビデオの普及により、若者が音楽を聴くためにテレビにかじりついていた時代。ラジオは古いメディアでいずれ廃れていくという向きもあったが、Queenはこの曲で、他とは異なるラジオの魅力やノスタルジーを歌った。
では、2021年のWEAVERはどうか。年2本ツアーをまわるのも珍しくないほど、元々ライブを盛んに行ってきたバンドだ。しかし多くのアーティストと同様、そうはいかなかった2020年がある。2020年はデビュー10周年でツアーも予定していた。後のMCによると、「今度こそライブができるか?」「いや、できなかった……」を繰り返す日々のなかで心が折れそうになることもあったという。今も事態が収束したわけではなく、ライブをやるにも制約がある。ライブはこのまま廃れていくのか。いや、ここででしか味わえない喜びも、ここでしか救われない寂しさも確かにあったはずだ。“不要不急”で切り捨てられては困る人が、この場所を必要としている人が確かにいるはずだ。だからこそ今ツアーを行う必要があった。ライブの価値、素晴らしさを分かち合い、確かめるために。
杉本雄治(Pf/Vo)、奥野翔太(Ba/Cho)、河邉徹(Dr/Cho)がイントロのコーラスをバックに腕を突き上げる。1曲目は「Welcome!」。珍しくない選曲だが、〈歌は全ての準備をして/そうさ 君が来るのを待っていた〉と伝えるこの曲が初めに演奏された意味を今日ばかりは感じずにいられなかった。最初3曲はスタンダードなアレンジで、再会を喜び合うようなオープニング。「Boys & Girls」のイントロを弾きながら杉本が「この音聴いたらみんな分かるよね?」と投げかけていたように、あんなフレーズやこんなフレーズに喜びと懐かしさが込み上げてきた。
「手拍子をしたり身体を動かしたりして楽しんでほしい」「拍手を通して僕たちに伝えてほしい」と何度も伝えていた3人。「S.O.S.」「ティンカーベル」「Another World」と続けたエレクトロパートは、「声が出せない分、たくさん踊ろうよ」というバンドからのメッセージとして解釈できた。一方、中盤では、「制約がある分、今までやってこなかったアコースティックコーナーを逆に作ってみてもいいのかなって」ということで、杉本:アコースティックギター、奥野:アップライトベース、河邉:カホンという編成に。春の曲を4曲のメドレーにして、温かな音色を届けた。アコースティック自体レアだが、奥野がメインボーカルをとる「春に」(2013年の会場限定リリースCD『Just one kiss』に収録)は超がつくほどのレア曲。作曲も奥野が手掛けたこの曲は、WEAVERの他の曲と比べて一筋縄ではいかないところがある(メイン楽器が6弦のベーシストだ、多少の変態性があることは想像つくだろう)。8分の5拍子のリズムをみんなで手拍子する光景は、微笑ましくもややシュールだった。また、「やさしい詩」では杉本が高校時代の歌詞を歌ってしまい、仕切り直しになる一幕が。“ハプニングもまた生のライブの醍醐味”という実感とともに、杉本のキャラクターを思い出させられる。