KOTORI、2度の延期を経て実現した“KOTORIホール”ワンマン 音楽への覚悟をナチュラルに体現

KOTORI、ホールワンマンレポ

 「明日には世界が変わるとしても」からクライマックスに差し掛かったことを察したのか、多くの観客がその場で立ち上がり始める。「RED」はスローテンポで始まる曲だが、テンポアップとともにサウンドの熱量も上昇していく展開がアツい。そのあとに待ち受けるは「海」。演奏後にメンバー自身が「最近俺らハマってるんすよ」「楽しいっすよね」と語っていたのも納得できるほど、ライブを通じて進化したーーいや、現在進行形で進化し続けている曲だ。本編ラストのMCでは、前日にレーベルメイト・街人の解散ライブを観たことに触れつつ、横山が「ライブをやる、誰かが観に来るという光景が不思議」「こっちは好きなことをやっているのに生活の糧にしてくれている人がいることが不思議」と本心を言葉にする。さらに観客へ改めて感謝を告げると、時間や場所を飛び越えてどこまでも旅していける音楽のロマンにも言及し、「ま、俺たちは一生続く音楽するんで。一生よろしくお願いします!」と締めた。

 絶唱と呼びたくなるほど横山のボーカルの迫力が増すなか、その歌をきっかけにバンドがまた激しくなる。〈思い出はそこにあって/感情が芽生える/僕らは手を取り生きていけるよ〉と歌う「REVIVAL」。〈君に羽が生えて/手を離したなら/君はもうひとりでどこまでも行ける〉と歌う「羽」。ステージ上で命を燃やす4人の音に熱中するこの瞬間、生きる糧を音楽に見出し、ここに集まった個人と個人の心の重なっているのかと思うと、こんなにも素晴らしいことはないんじゃないかという気持ちになれる。ラストの「YELLOW」まで、全部を置いていくように鳴らしきってから4人は去っていった。

 アンコールの「EVERGREEN」では「いつかまた一緒に歌おう!」と未来への願いを託す場面も。その願いが叶う日はいつになるのか分からないが、音楽は鳴り止まないし鳴り止ませない。固い覚悟を、しかしナチュラルに体現するライブにこのバンドの懐の深さを見た。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

■セットリスト
2021.4.17
『KOTORI ”Standing Ovation”@昭島市民会館 KOTORIホール』
We Are The Future
ドラマ
ジャズマスター
unity
トーキョーナイトダイブ
Blue
涙があふれそう
素晴らしい世界
雨のあと
ラブソング
sora
Anywhere
ソングバード
彗星
ふたり
明日には世界が変わるとしても
RED

REVIVAL

YELLOW
春一番
EVERGREEN

KOTORI公式サイト

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