aiko、あいみょん、藤井風……SSWを支える名アレンジャーたちの手腕

 編曲家という職業について、日本の歌謡界に数多くのヒット曲を残してきた萩田光雄はこう語っている。

「基本、私らアレンジャーは、料理人に例えるのが一番わかりやすい。美味しい料理を作って、お客さんに『美味しい』と言ってもらうことが一番なのだ。『美味しい』と言ってもらうためにアレンジをやっていると言ってもいいだろう」(『ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代』より)

 食材としての曲があり、編曲家はそれをリスナーのために“料理”する。元々の素材の味はもちろん、それを調理する料理人の腕前もまた試されているのだ。味付けはどうするか、どのくらい煮込むか、調味料は何を選ぶ、盛り付けは……。そうした意味でも編曲という仕事は非常に重要な役割を担っている。にも関わらず、編曲家はしばしば忘れられがちな存在である。ここでは近年活躍するシンガーソングライターたちの作品を支えるアレンジャーの存在に注目し、楽曲の魅力を引き出す手腕に光を当ててみたい。

aikoの歌詞世界を鮮やかに色付けする島田昌典

aiko『どうしたって伝えられないから』(通常盤)

 aiko作品のアレンジをデビュー初期より務めているのが島田昌典である。「花火」も「カブトムシ」も「ボーイフレンド」も彼の編曲によって輝きを増した名曲だ。先日リリースされた新アルバム『どうしたって伝えられないから』でも5曲の編曲を担当し、その手腕を存分に発揮していた。

 彼のアレンジの特徴は、時に歌を凌駕するほど“演奏の魅力”が伝わってくる点だ。たとえば「しらふの夢」(以下『どうしたって伝えられないから』収録)。歌が始まる前のピアノのイントロからすでに美しい景色が目の前に広がる。ハープやフルート、クラリネットといった多彩な楽器を駆使して録音された生音の演奏とボーカルの絶妙な絡み合いは、まるで映画のワンシーンのようだ。曲の歌詞世界を鮮やか色付けしている。

 また、aikoは島田のアレンジを聴いて歌詞を変えることもあるという。同アルバム収録の「Last」はそれが起きた一曲で、想像を超えるアレンジに嬉しくなって急遽歌詞を変えたのだとか。歌詞が何よりも重要な上に曲作りにおいては芯の強い一面を持つaikoだが、そんな彼女でも影響されるのだから、それほど島田のアレンジにはパワーがあるのだろう。

歌い手本来の素質をあぶり出す田中ユウスケ

あいみょん『瞬間的シックスセンス』

 今最も支持されている女性シンガーソングライターの一人、あいみょんの作品の多くに携わるのが田中ユウスケである。彼は玉井健二や蔦谷好位置ら腕利きのクリエイター陣が集うagehaspringsに所属し、これまでいきものがかりやYUKI作品のサウンドプロデュースも手掛けてきた。あいみょん×田中ユウスケのタッグはあいみょんのデビュー時期より始まり、以降現在まで続いているが、とりわけ3rdシングル曲「君はロックを聴かない」での化学反応が印象深かった。彼女の凛とした歌声にフォーキーなロックアレンジがぴたりとマッチし、歌い手としてのあいみょんのイメージが出来上がる。

 そして、このタッグが大きく実を結んだのが5thシングル曲「マリーゴールド」だ。夏の終わり頃のイメージを喚起させるノスタルジックな音世界で、冒頭の高らかなギターのフレーズから楽曲全体に至るまでどこか懐かしい響きを持っている。そうした懐かしく切ないタッチが、彼女本来の素質をあぶり出しているように思う。

あいみょん – マリーゴールド【OFFICIAL MUSIC VIDEO】