miwaが見せた弾ける笑顔と大粒の涙 再会の喜びに満ちた2年ぶりの単独公演

 〈あなたがここにいて 抱きしめることができるなら 私もう他になんにもいらない〉そう歌いながらmiwaは大粒の涙をぽろぽろとこぼした。このフレーズが印象的に響いたのは、有観客ライブができなかった2年間、デビュー後に駆け抜けた11年間、その月日の長さと重さが痛いほどに歌声に込められていたからなのかもしれない。「みんなに会えて嬉しい」「本当にありがとう」ステージ上で繰り返し何度も口にしていた。

 3月20日、miwaにとって2年ぶりの単独公演となる『miwa “ballad collection” live 2021〜decade〜』がZepp Tokyoで開催された。生配信も行われた同公演は、アンコール含め冠名の通りバラードを中心とした至極のラインナップとなった。

 ブルーライトの静かな灯りに包まれた会場。白いブラウスに身を包んだmiwaが登場する。幕開けに選ばれたのは、人を一途に想う切なさを綴った「片想い」。ピアノ音と歌声という研ぎ澄まされた構成ゆえなのか、歌詞にのせられた心情がぐっと立体感を持って胸へと迫る。一曲目から圧倒的な歌唱力で観客を引き込んだ。

 続く「Napa」ではギターを抱えた姿に。〈さみしくて泣いたこともあるよ あなたを想うと頑張れたんだ〉の歌詞は、リアルの対面が拒まれた日々を彷彿とさせる。冒頭2曲、距離に寂しさを募らせる心象と重ね合わせた楽曲たちは、ファンに会えなかったmiwaの気持ちが投影されているかのように聴こえた。

 弾ける笑顔で届けられるMC。「こんばんは、miwaです!」そんな挨拶の第一声に続いた言葉は、この状況下で会場へ駆けつけたファンへのお礼だった。一つ空きの席、マスク着用の義務、声援は禁止。多くの制約がある中で実現したライブである。「やっと会えたね」の一言が切実に響いた。「配信をご覧の皆さんも楽しんでいますか?」と画面の向こうにいるファンへの声かけも忘れない。気配りや気遣いに滲む人柄は、楽曲を通じて伝わる誠実さや温かさそのものだ。ライブが当たり前じゃないからこそ一曲一曲を大切に歌いたい。miwaは噛み締めながらそう語った。

 サビの高音と力強いピアノ音が躍動感を生む「SPLASH」を挟み、「Delight」を弾き語りで披露。〈人は愛のために生まれ 夢は叶えるためにある きっと涙の数だけ 花は大地に咲き誇る〉というフレーズで始まる同曲は、この時代に聴くにはあまりにも鋭く優しい。未曾有の事態となった2020年、いったいどれだけの人が涙を流したのだろう。それでも〈大空高く帆をかかげ今進もう 胸の炎いつまでも絶やさぬよう〉と光射す場所を見据える眼差しに、背中を押された気持ちになった。

 その光を引き継ぎ、歌い始まった代表曲「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」。途中、演奏がふと止まった。不慣れな空白の中で飛び込んできた光景にハッとする。そこには涙を流すmiwaの姿があった。バンマス兼キーボードのejiが寄り添い、音を鳴らしたり止めたりする。この2年、そしてこの11年に感じ得た様々な想いが去来していたのだろうか。振り絞るように再び歌い始めたmiwaの声は決して力強さを失うことなく、さらに情感が込められていた。演奏後、観客の拍手が鳴り止まなかった。

 ここが一つの区切りであるかのごとく、次に披露されたのは新曲「神無-KANNA-」。アニメ映画『神在月のこども』(2021年公開)の主題歌である同曲の歌詞〈もう少し あと少しだよ〉は、先の見えない時間を過ごす私たちへのメッセージのようであった。

 思い出と共に大切な人へ語りかける「めぐろ川」、覚悟に満ちた低音ボイスで自分の在り方を問う「Who I am」、一人ひとりの存在を肯定してくれる「We are the light」。本編のラストを飾ったのは、臆病な心を強がりで覆い隠す「don’t cry anymore」。様々な楽曲を聴いた後で改めてデビュー曲に耳を澄ませると、miwaが伝えているメッセージの根源はずっと変わっていないのだと分かる。

 思い出に胸を痛めたり、自分を見失いかけたり、心が折れそうな瞬間に見舞われながらも憂いを憂いのままにはしない。荒波や静寂の中に点る小さな灯りを目印に進んでいこうという柔らかな覚悟。強さと弱さ、屈強と繊細、人間の中にある矛盾した感情を包み込み、視界が明るくなるメッセージを手渡してくれる。そんな世界観に説得力があるのは、miwa自身がこうしてライブ中に涙を流しながらも、最後まで真摯に音楽を届ける姿を見せてくれるからなのだろう。