神聖かまってちゃん『進撃の巨人』OPテーマ「僕の戦争」がヒット 新機軸の作品として成立させたの子の職人性
構造が新鮮である以外は、「僕の戦争」はの子の作風から大きく逸脱したものではない。加工されたの子の声や、神聖かまってちゃんのライブやレコーディングに参加してきた柴由佳子(チーナ)のヴァイオリンは、神聖かまってちゃんのサウンドにおけるアイコンと言ってもいい。
ただ、今回はヴァイオリンのほか、クラリネットやフルートなどの管楽器、さらにコーラスと、総勢10人以上のミュージシャンが参加している。神聖かまってちゃんの元マネージャーである劔樹人がベースとして参加していることにも驚いた(彼のコミックエッセイを映画化した『あの頃。』は現在劇場公開中)。さらに、イントロにおける性急なパーカッションは、神聖かまってちゃんの作品として異色だ。そして、ヴァイオリンの音色が不穏さと緊張感を醸しだすなか、生音と肉声が重視された厚いサウンドへと流れ込んでいく。
「僕の戦争」で行われたのは、タイアップというシステムをハッキングするかのような手法だ。しかし、それはアーティストとタイアップの関係性の理想形とも言えるだろう。
■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter