DYGLが試みた音楽的変化 今ロックバンドとして表現する意味

DYGLが試みた音楽的変化 今ロックバンドとして表現する意味

もどかしさや悲しみが反映されてる

ーー歌詞についてもコンセプトノートに書かれていましたね。コロナ禍における世界のムード、静かで暗い感情もここで表現したいと。

秋山:歌詞も今書きまくり中で半分以上できています。やっぱり自分の今までの経験とかについて、1人で考える時間がものすごく増えたので、どうしてもそれは影響していると思いますね。「部屋」という言葉が結構出てきたりして。

ーー「Sink」にも〈in this tiny room〉という一節がありますよね。ロンドンでしばらく暮らしていた立場から見て、コロナ禍の状況を含めて、今の日本に対して思うところがあったりもするのかなと想像しているんですけど、それについてはどうですか。

秋山:あると思いますね。ロンドンとの比較というより、台湾とかニュージーランドの話になるけど政治と国民が信頼し合うことがどれだけ素晴らしいかという例になっている気がしていて。俺は沖縄にしばらくいたから余計に感じるんですけど、今の日本は政治に対する信頼感があまりにもなさすぎて、それが当たり前だから疑うことすらなくなっている。でも、例えばニュージーランドだったら、Zoomまでつないで政策について一つ一つ丁寧に解説してくれたりするから、厳しめの制限を出しても国民も安心して受け入れられる。問題があったらきちんと言えて、一緒に解決していけるという信頼感もあるから、それがどれだけ安心で、なおかつ経済的にも良い影響になっているかを考え始めると、やっぱり日本は残念だなという気持ちは正直ありますよね。でも、それはロンドンに行っていたからというよりは、コロナによっていろんな国を改めて見てみたから感じることなので。正直、イギリスは超問題ありだと思うんです。日本は日本でしっかりしている部分もあるけど、国というよりは、人と人との間で何とかやっている部分が多いのかなって。そんなことをいろいろ考えているので、もどかしさや悲しみが反映されてるかもしれないです。

ーー今話していただいたような世の中の不安や停滞感みたいなことを、日本の音楽がどこまで掬い上げられているかというと、疑問を感じるところもあるんですよ。「頑張ろう」みたいな曲はいっぱいあるけど、それ以外の選択肢がそんなにない。DYGLはそこともしっかり向き合おうとしているように感じました。

秋山:前作だったら「Bad Kicks」とか「Don’t You Wanna Dance In This Heaven?」とか、もう少し直接的な怒りを表現していた曲がありましたけど、今思えばあまり具体的な事象はあげてないんです。イギリスのパンクバンドだったら結構直接的に歌うんだろうけど、僕らは自民党という単語を入れたりもしていないし、もうちょっと感情に落とし込んで、そこから逸脱しない方が良いのかなと思ったんです。なので、海外のアーティストと比べるとまた違うアプローチなのかなと。他の日本のアーティストは正直そんなに聴けていないけど、忌野清志郎さんみたいな人はいらっしゃらないですよね(笑)。

ーー最近つながりを感じている日本のバンドっていたりしますか。

秋山:BOARDという名古屋のバンドですね。ロンドンに俺らが行ってたとき、小さめで雰囲気のいい「Lion」というレコード屋さんでインストアライブをしたんですけど、その日に声をかけてくれた日本人の子たちがいて。「初めて組んだバンドの最初のライブと言ったら、やっぱりロンドンでしょ!」となってなぜかロンドンに来て、偶然俺らがライブをしているのを見つけて来ちゃいました、みたいな(笑)。それからしばらくして、緊急事態宣言が出るよりちょっと前くらいのとき、下北でSugarhouseという嘉本がプロデュースしている若いバンドとBOARDが一緒にライブをしていて。現行のポストパンク・リバイバルみたいなサウンドをめちゃくちゃうまく表現していて。海外のバンドに憧れてやっているというよりは、自分たちの中でしっかり受け取って昇華していて、すごく堂々とライブをしているなと感じましたね。聞いたら、俺らと会った後もしばらくロンドンにいて、向こうのバンドと対バンをしっかりやっていたみたいで。

ーーすごく良い話ですね。かつてのDYGLがそうだったように、新しい世代もDYGLの音楽を聴いて「こんなことをやってる人がいるんだ」って励まされている部分は絶対あるだろうから。でも、今の話を聞いて思ったのは、コロナ禍が長引くと海外アーティストも日本に来られないし、日本が海外の音楽とコミットしづらくなるんじゃないかって。物理的な面だけでなく、気分的にも海外と遠ざかっている感じはありますか。

秋山:それについてはよく考えますね。自分はロンドンにこだわっていた部分もあったんですけど、物理的に行けなくなった以上、じゃあ今ここで何をするかということだなって。自分の体がここにあって、でも人生の時間は否応なく進んでいくんだったら、どこにいようがベストを尽くすしかないとはっきり意識できるようになりました。だから今は、ものづくりのマインドとしては集中できているんです。でもこの状態が長引いたときに、自分が日本で何を感じて、何を作れるかというのは変わり得ることだなという気がしているんですよね。その変化の良し悪しは、一概には言えないと思いますけど。

ーー今の話はきっと、この状況でバンドをやっている意味を問うことにも近いかもしれないですね。そもそも直接会えないという制限自体が新しいクリエイティブを生みだし、新しいシーンを作っているような気もするので。

秋山:できることは本当にいっぱいあると思うんですよ。制限があるから生まれるものも確実にあると思うし。でも、それと社会的な問題はまた別なのかなって。クリエイティブ云々じゃなくて、生活の話とかになってくると、やっぱりそこは切り離してきちんと社会保障をしてもらうよう国に求めるのは大事だと思います。俺もDIYは好きだけど、この時代にDIYを求め過ぎるのは危険だなと。だって、できる人にしかできないから。そもそもリソースがある人はバンドもできるし、「持っている」ことにあまり気づかないんですよ。俺らも意識しないと気づかないけど、マネージメントもあって、すでにファンベースもついていて、そのままの形で家にこもって音楽を作ることも一応できる。でも、仕事を解雇されたり、バンドやってるけどライブできるハコがなくてまだファンベースがついていない若い人たちとか、この状況下に自分の工夫だけではどうにもならないわけで。そういう人もいるというのは、心のどこかで思っておかないといけないなって。バンドの話を越えて、一個人としてやらなきゃいけないことだと思うんですけどね。

ーーよくわかりました。3月からのツアーは日本各地を回るみたいですけど、どんな感じになりそうですか。

秋山:楽しみな感じじゃないですか!

加地:東名阪沖はなかなかないよね。

秋山:正直どうなるかわからない状況でやっているので、もちろん不安はあるんですけど、やると決めて、やれる状況まで持っていけるのはすごく感謝なことですし、実際やるとなったら、みんなも楽しみにしていくれているだろうから。ライブカルチャーの未来は見えづらい状況ですけど、なくなることはないだろうから、焦ったりしなくてもいいと思えたので、それはよかったかもしれないですね。

ーーそしてアルバムは6月に出るわけですよね。今の話を踏まえてどういうふうに語られるのか、非常に楽しみです。

下中:今、「Sink」の反応をちらっと見たんですけど、みんなDYGLにそこまでガレージロックを期待しているんだと思って、ちょっとびっくり(笑)。

嘉本:否定的なコメントが多いっていうこと?

下中:いや、これはこれで好きみたいな。

秋山:みんな、ガレージロックという前提条件があるということね。

嘉本:だとしたら、これから出していく曲はもっと聴きにくいかもしれない(笑)。

ーーでも、それもいいことだと思うんですよね。だって一生ガレージロックを続けていくのも大変でしょう?

秋山:はい(笑)。ガレージに限らず、同じことをし続けるのはたぶん飽きちゃいますから。予想を裏切るっていうのはいいことですよね。

DYGL – “Sink” Official Teaser

■リリース情報
「Sink」
3月3日(水)配信リリース
配信はこちら

■ライブ情報
『SPRING TOUR 2021』
3月14日(日)名古屋 THE BOTTOM LINE
3月15日(月)大阪 BIG CAT
3月20日(土)東京 SHIBUYA TSUTAYA O-EAST (1部)
3月20日(土)東京 SHIBUYA TSUTAYA O-EAST (2部)
3月22日(月)沖縄 OUTPUT 9th ANNIVERSARY

DYGL オフィシャルサイト

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