『AMUSIC』インタビュー

sumika、喪失から生み出した“最高傑作” 現在に至るまでの葛藤と創作を振り返る

『AMUSIC』によってsumikaの在り方を再提示

荒井智之

ーー先にご自身のボーカル曲を挙げられてしまいましたが、そんな小川さんが挙げる曲は?

小川:またじゅんちゃん曲になっちゃいますけど、「白昼夢」かな。「願い」を作った人がこれ作るかって。

黒田:(笑)

片岡:確かに。

ーー(笑)。「願い」は切なくも心が温まるようなラブソングになってますが、「白昼夢」はダークでミステリアスでカオティックなロックチューンになってます。

小川:「願い」を作った時と「白昼夢」を作った時のメンタリティーは違うと思うんですよね。「願い」はこういうものを作りたいと思って作って、「白昼夢」はこういうものができちゃったっていう作り方かなと。心がそのまま現れた、みたいな感じ。じゅんちゃんの中にある音楽がそのまま出てきたっていうふうに感じとれました。

黒田:自由に作っていいっていうターンだったので、自由に作ったらこうなったていうことですかね(笑)。音がごちゃごちゃって詰め込まれている感じは、心の中のドロドロしてしまってる部分。自分の音楽性というか、好みとしては馴染みが深いもので、自由に作っていいっていうから自由に作ったんですけど、アルバムに収録されることになるとは思ってなくて。選んでいただいて、大丈夫だったのだろうかっていう気持ちもあります。

片岡:(笑)。いや、一番最初に決まったくらいですよ。これは入れましょうって。

小川:三人は即決でした。

片岡:歌詞はじゅんちゃんから「ぐちゃぐちゃにしてください」とリクエストがあって(笑)。

荒井:ある意味で、じゅんちゃんらしいというか。「願い」みたいな一面もあれば、ちょっとダークというか、ディープで攻撃性のある一面もある。音楽的な部分だけじゃなく、もしかしたら実生活でもそうかもしれない。いつもの性格の反動というか、表に出せていない部分もきっとあると思うんですよね。それはおもしろいし、すごく楽しんでレコーディングできました。

ーー最後に片岡さんにアルバムを象徴する1曲をあげていただけますか。

片岡:荒井くんが作った「Jamaica  Dynamite」ですね。「Dress Farm 2020」でメンバー一人1曲ずつ作曲した時は配信だったので、手に取れるアルバムという形で、荒井くんの曲がちゃんとデビューしたかなと思っていて。それが今回のアルバムに入ること自体が、今のバンドのメンタリティーとか、2020年とどう向き合って、2021年にどう進んでいくのかっていうものを表していると思うんです。この曲が『AMUSIC』に入ったことが、今のsumikaを象徴していると思います。

ーー荒井さん曲は「VOICEVoice」に続き、2曲目になります。どんなところから作りましたか?

荒井:特に何も考えずに(笑)、「Jamaica  Dynamite」という言葉とメロディがポンと一緒に思いついて。その時はまだアルバムの話も立ち上がってない時期だったので。好き勝手に作っていたら、あ、いい曲だなって。

ーーすみません、今更ですけど、「Jamaica  Dynamite」ってなんですか?

荒井:僕もわからないんです(笑)。歌った時にはもうできてた。

片岡:誰もわからない。でも、歌詞もそこからはじめました。最初は荒井くんに「Jamaica  Dynamite」を使わなくてもいいって言われたんですけど、僕の希望としては、「Jamaica  Dynamite」を使うべきだって話をして。あと、クールに行きたいっていう希望があったので、夜だったり、ドライブがイメージできるものがいいなと。しかも、ストーリー性があって、先を想起させるものが作れたらいいなっていう話をしていて。この曲はアウトロにいろんなアーティストのプレイヤビリティが見えるもので、そこも一個のストーリーと考えているんです。言葉のストーリーは歌詞の最後で終わるけど、そこから先はどうなるかをみんなで想像していく時にそれぞれの音が入るのが大事だと思っていて。ここに演奏が来るなら、歌詞はここまでで大丈夫かなっていう考え方で書くことはあまり多くないので、自分にとっても新しいアプローチでした。

ーーアルトサックスやパーカッション、ドラムソロなども入った、ファンキーでアーバンな都会のナイトミュージックになってます。

荒井:楽器と歌の比重を半々くらいにしたかったんですよね。

黒田:そういう曲を今までやったことがなかったので楽しかったです。

ーー受験生に向けて書き下ろした「祝祭」、ミュージカル調のジャズとEDMを融合した「惰星のマーチ惰性のマーチ」、sumika初の誕生日ソングでグッドメロディの「Happy Birthday」も気になりますが、「センス・オブ・ワンダー」に続き、2年連続で「進研ゼミ」のCMソングに起用された「アルル」がエバーグリーンな輝きを持った名曲だなと思っていて。

黒田:ありがとうございます。歌ものバンドサウンドみたいなものを目指して作りました。リズムが跳ねてるけど、歌は跳ねないっていうことをやりたいなと思って作り始めたんです。それがちゃんとできてたかどうかはわからないんですけど……。

片岡:できてたよ! 「アルル」はゴッホが目指した街の名前で。ロンドンナショナルギャラリーに行った時、ゴッホのひまわりを見たんですけど、めちゃくちゃ食らっちゃって。すごすぎて、立てなくなっちゃったんですね。ゴッホのヒストリーについては知ってる方が多いと思うんですけど、ちゃんと希望を持って動いていた人なんだなって思ったんですね。ゴッホは様々な絶望の中、アルルは光があふれる素晴らしい街だって言うのを聞いて、そこに行ってみたいと、希望を持って目指した町の名前だった。

ーーアルルに向かうときの気持ちってことですよね。ゴーギャンとの共同生活が破綻して、耳を切り落としたりする前の。

片岡:そうですね。ゴーギャンを「いい町だよ」って呼び寄せる時の気持ちってすごく大事だなと思って。暗い気持ちになることが多かった2020年の中で、いい場所だよ、光があるよって、呼び寄せられる場所って、すごく貴重だなと。この曲がそういう場所になってくれたらいいなという思いを決めて、「アルル」にしました。

小川:sumikaらしさが詰まってるなって思います。

荒井:抜群のメロディですごくいい曲だし、僕は個人的にこの曲で3度出てくる、ギターのテーマのフレーズがすごく好きで。頭と1サビの後と、最後に出てくる。あのフレーズが綺麗に聞こえれば、この曲はすごくいいものになるなと思いました。ドラムでもミックスでも最後まで気にかけました。

ーー全16曲が完成して、バンドの今後は見えましたか。

小川:このアルバムが完成したことで、sumikaとはなんぞやっていうのを今一度、提示できたと思うんですね。2021年も継続して荒波に揉まれている状態ですけど、その都度、ちゃんと答えを出していって、sumikaらしく発信していけたらいいなと思っていて。僕たちが作品を発表するたびに心を躍らせてくれるリスナーの方たちに向けて、正しく届けていきたいなと思っています。

荒井:やっぱり、自分たちが納得できる作品をひとつ作り上げることができたことで、音楽家として、また一歩前に進めたとは思えています。これをどういうふうにみなさんが受け取ってくれるのか。僕たちもどういう形でこのアルバムを届けていくことができるのか。相変わらず、模索していきたいなと思っています。

黒田:ライブがしたいですね。2020年3月4日にリリースした『Harmonize e.p.』の中にも、まだライブで披露できていない曲があって。「届いたよ」っていう声は聞いているけど、ライブで一緒に音楽する機会を作れずにいる曲が多くなってきてしまっているので、すごく心苦しいなという気持ちがあって。いろんなライブの形があると思うので、その時の一番いい形で、ライブがしたいなと思ってます。

片岡:オンラインのライブも、やってみたら純粋に楽しかった。ちゃんと繋がってるなっていう気持ちもあった。もちろん、対面で会えるライブの喜びもたくさん知ってる。どちらの形になるのか現状ではまだわからないんですけど、オンラインだからダメで、人と会えるからいいってわけでもないなと思っていて。当たり前のように人と会えていた頃のライブを求めてしまうけど、お客さんが目の前にいても悪いライブをする時もあるから、そこは美化しちゃいけないなと思っていて。いいライブはいいライブで、オンラインであっても、オフラインであっても変わらない。『AMUSIC』というアルバムを持って、ちゃんといいライブを届けていきたいなと思ってます。

※1
2020年5月にsumikaが立ち上げた基金。新曲4曲と未発表ライブ映像4曲を公開し、ユーザーが自由に価値をつけ、身近な人への「ありがとう」や自分自身への「明日も頑張ろう」などの“気持ち”や、あるいは“金額”という形でも、それぞれが自由に設定した“価値”を寄付。その寄付は、医療従事者とエンターテインメント業界の活動支援金に充てられた。

sumika『AMUSIC』

■リリース情報
sumika
『AMUSIC』
発売日:2021年3月3日(水)リリース

<商品概要> ※3形態での発売
【初回生産限定盤A】CD+DVD / SRCL-11720~1 / ¥4,909+税
【初回生産限定盤B】CD+DVD / SRCL-11722~3 / ¥4,364+税
【通常盤】CD only / SRCL-11724 / ¥3,000+税

<CD収録内容 初回生産限定盤A / 初回生産限定盤B / 通常盤 共通>
「祝祭」(森永製菓 受験に inゼリー2021  CMソング)、「アルル」( 『進研ゼミ』CMソング)を含む、計16曲収録
01. 「Lamp」
02. 「祝祭」・・・森永製菓 受験に inゼリー2021 CMソング
03. 「願い」・・・テレビ朝日系土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』主題歌
04. 「イコール」・・・読売テレビ・日本テレビ系TVアニメ『MIX』オープニングテーマ
05. 「Happy Birthday」
06. 「Jamaica Dynamite」
07. 「白昼夢」
08. 「アルル」 ・・・進研ゼミ CMソング
09. 「本音」・・・第99回全国高校サッカー選手権大会応援歌
10. 「ハイヤーグラウンド」・・・アニメ映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』主題歌
11. 「惰星のマーチ」
12. 「Late Show」・・・日本テレビ系 「スッキリ」 2021年1月テーマソング
13. 「わすれもの」
14. 「Traveling」
15. 「絶叫セレナーデ」・・・映画『ぐらんぶる』主題歌
16. 「センス・オブ・ワンダー」・・・『進研ゼミ2020』CMソング

<初回生産限定盤A 特典DVD内容>
sumika Film #7
〜sumika Online Live 「Little Crown 2020」〜
01. Answer
02. フィクション
03. ふっかつのじゅもん
04. イコール
05. ファンファーレ
06. ゴーストライター
07. エンドロール
08. Summer Vacation
09. 絶叫セレナーデ
10. MAGIC
11. 明日晴れるさ
En. 雨天決行
※Behind The Scenes収録、副音声:sumikaメンバーによるオーディオコメンタリー収録
※プレイパス封入(※特典DVD部分 ※2022年3月2日まで)

<初回生産限定盤B 特典DVD内容>
sumika Film #8
〜sumika[camp session] Live〜
01. 知らない誰か
02. アネモネ
03. ここから見える景色
04. Strawberry Fields
05. 願い
06. Lovers
07. 言葉と心
08. オレンジ
※プレイパス封入(※特典DVD部分 ※2022年3月2日まで)

オフィシャルHP

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