常田大希、多くの人を惹きつけるクリエイティブファーストの姿勢 King Gnu、ミレパ……共鳴する仲間たちと創作する理由

 つまり常田とクリエイターはリスペクトの両矢印で結ばれていて、その相乗効果によって生まれた表現が私たちを惹きつけているということだ。社会に接続することを志向しながらも、他人の価値観や従来の常識に左右されず、自分のカッコいいと思った表現を突き詰めていく常田大希とその仲間たちの作品は、結果的に、既成概念の外側にある自由で新しい音楽として受け取られている。NHKのドキュメンタリーや『SWITCH』の特集名にある“破壊と構築”はおそらくそこから来ているが、常田自身はそれを音楽家としての性(さが)というよりも人間の性として捉えているようだ。

「何かを壊して、何かを作り出すということは、俺が考えるアーティストとしての基本姿勢みたいなもの。その姿勢なくして、今の時代に何かを表現することはできないと思う。でも、破壊して創造するということは、音楽や映画、ファッションといったアートの世界にいる人以外にとっても重要なもので、人間が生きているということに直結しているものだと考えていて。会社に勤めている人もそうだし、何かを売るということを仕事にしている人だっていい。破壊と創造は人間の根源的な営みだと思う。俺にとっては音楽がそれを体現するための手段だったというだけのことなんじゃないかな」(⑧)

 常田の生み出す音楽を聴いているときに湧く血の滾るような感覚、あるいは魂を揺さぶられるような感覚の所以はここにあるのだろうか。2020年にはKing Gnuの『CEREMONY』が発表された。2021年には『THE MILLENNIUM PARADE』が発表された。その先を思うと、楽しみでならない。

【引用元】
①、③、④、⑤、⑦、⑧=『SWITCH』 Vol.39 No.2 特集 常田大希 破壊と創造
②、⑥=『GINZA』2021年3月号 いちばん気になる人/常田大希 

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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