MAMAMOO『TRAVEL -Japan Edition-』で堪能する日本語歌唱 “韓国語発音との違い”からボーカルの聴きどころを解説

 2021年2月3日、MAMAMOO『TRAVEL -Japan Edition-』がリリースされた。

 昨年リリースされたアルバム『TRAVEL』は、MAMAMOOの韓国での10枚目のミニアルバムであり、初日の売り上げ枚数が10万枚を超えてグループのキャリアハイを更新した。今回の『TRAVEL -Japan Edition-』には、『TRAVEL』に収録されていた6曲と、昨年9月にMAMAMOOが韓国で人気のヨガウェアブランド・ANDARとコラボしてリリースした「WANNA BE MYSELF」、そして『TRAVEL』の先行曲であった「Dingga」とタイトル曲「AYA」の日本語版、さらに日本語オリジナル曲である「Just Believe In Love」の全10曲が収録されており、“遅れてきたお年玉”的な、なんとも嬉しい贅沢なアルバムとなっている。

 今回着目したいのは日本語歌唱だが、もともとMAMAMOOの日本語歌唱には定評がある。2019年8月にリリースされた日本1stフルアルバム『4colors』では、これまでのMAMAMOOのヒット曲の日本語版を堪能することができるのだが、韓国語で聴き慣れた楽曲にも関わらず何の違和感もなく曲が入ってきて、正直驚いたほどだった。

 突然だが、ここで少し“韓国語”についてのお話をしたい。

 日本語の母音が5個なのに比べて、韓国固有の文字“ハングル”の基本母音は10個ある。そして、ハングルは子音と母音の字母を組み合わせて文字を構成させて成り立つ。簡単に言うと、キーボードで日本語の「か」と打ちたい時「K」「A」とタイプするが、ハングルもそんな組み合わせの要領でできているのだ。そして発音が日本語よりも細分化されていて、例えば「ん」と言うだけでも「ㄴ,ㅁ,ㅇ」と発音の種類が3つもある。音に対するアプローチのバリエーションが多い印象を受けることから、韓国人アーティストが日本語を歌うのはさほど難しくないのではないかと思ってしまうが、それはもちろん間違いだ。

 筆者は韓国語を話すことができて、韓国人アーティストの日本語版の歌詞を手がけたり(最近ではJ.Y. Park「When We Disco」)、日本語版のボーカルディレクションをする仕事をしている。そんな筆者が日本語版のレコーディングをしている時、韓国語と日本語の発音の間でどうしても違和感を感じてしまう瞬間がある。

 「つ」「づ」「ざ」「ず」「ぜ」「ぞ」「ん」の発音をする時だ。これらの発音に対する正確なハングルがないので似た音を発することになるのだが、「つ」は「ちゅ」になり、「づ」「ず」は「ぢゅ」、「ぜ」は「じぇ」、「ぞ」は「じょ」、「ん」はいつでも母音や子音に伴う付属音として扱われるので単体で発音することが難しい。〈ずっとずっと永遠に続く〉なんて歌詞に出てきた日には、アーティストの顔は真っ青になる。その他にも「ち」は「つぃ」になりやすかったり、ら行の発音は舌を巻いた強い音が出ることがあり不自然に聞こえてしまう。そして濁音や長音の概念がないため発音が曖昧になり、韓国語独特の発音に変換されて不自然さを生んでしまう。日本のK-POPリスナーがよく口にする「日本語版って違和感あるよね」の要因の一つとして、根本的な発音の相違が考えられるのだ。