田所あずさ、『Waver』に刻んだアーティストとしての新たな幕開け 本質を見出したセルフプロデュース作
忘れらんねえよの柴田隆浩作詞作曲のパンキッシュなピアノロック「ころあるこ。」では〈ああうぜー!〉〈ああちげー!〉と舌打ちしながら、私以外はわからない本当の気持ちを“君”=ファンには知って欲しいと絶叫。大事なところは何も変わらないから心配しないでねと伝えながらも、前に進むためには、周りの変化を待つのではなく、〈だったら私が変わるしかないでしょ/だったら自分が変わるしかないでしょ〉と決意する。ころあず自身が作曲、大木貢祐が作詞、神田ジョンが編曲という、本作の根幹を担ったトロイカ体制によるピアノバラード「いつか暮れた街の空に」では、これから始まる新たな旅への期待と、ずっと応援してくれた“あなた”への感謝と共に、“あなた”の手を引いて、先頭に立って引き連れていくという優しくも強い覚悟が込められているよう。そして、タイトル曲で、MVも公開されている「Waver」で、散々迷い、悩み、涙を流した末の孤独が彼女を新たな夜明けへと導いていく。世間の波に振り回されて自分を見失いそうになりながらも、しっかりと地に足をつけて、前を見据え、今、ここにいる自分を見極めようともがいた彼女は、最後に〈変わり続けるわたしと生きてゆく/そう決めたの〉という宣言へとたどりつく。このフレーズに至るためのセルフプロデュースであり、コンセプトアルバムであり、全曲新曲の10曲である。神田ジョンが「4枚目であり、1stアルバムでもある」と言っていたが、自分のことを理解した日を、“セカンド・バースデー”と言ったりもする。そういう意味では、本作は田所あずさというアーティストの新たな幕開けを刻んだ最初のオリジナルアルバムであり、ぜひ一つの作品として、頭から順にじっくり耳を傾け、その世界観に浸って欲しい。
■永堀アツオ
フリーライター。音楽雑誌「音楽と人」「MyGirl」、ファッション雑誌「SPRiNG」「Steady」「FINEBOYS」などでレギュラー執筆中。「リスアニ!」「mini」「DIGA」「music UP’s」「7ぴあ」「エンタメステーション 」「CINRA」「barks」「EMTG」「mu-mo」「SPICE」「DeVIEW」などでも執筆。
■リリース情報
『Waver』
発売:2021年01月27日
価格:¥3,000(税抜)
1.レイドバック・ガール作詞:大木貢祐 作曲・編曲:神田ジョン
2.ちっちゃな怪獣作詞:大木貢祐 作曲・編曲:菊池亮太
3.ソールに花びら作詞:大木貢祐 作曲・編曲:神田ジョン
4.Rest in a Stroke作詞:大木貢祐 作曲・編曲:大和
5.クリシェ作詞:大木貢祐 作曲:五郎川陸快 編曲:神田ジョン
6.死神とロマンス作詞:岩淵紗貴 作曲:一瀬貴之・岩淵紗貴 編曲:神田ジョン
7.徒然恋愛サバイバー作詞:岩淵紗貴 作曲:一瀬貴之・岩淵紗貴 編曲:神田ジョン
8.ころあるこ。作詞・作曲:柴田隆浩 編曲:神田ジョン
9.いつか暮れた街の空に作詞:大木貢祐 作曲:田所あずさ 編曲:神田ジョン
10.Waver作詞:大木貢祐 作曲・編曲:神田ジョン ストリングスアレンジ:神田ジョン・伊藤 賢