フォーリミ×オーラル×ブルエンによる『ONAKAMA 2021』初日公演レポ 三者三様のステージで届けたライブへの思い
トップバッターの時点でボルテージは最高潮。そんな中、バトンを受け継いだのはTHE ORAL CIGARETTES(以下、オーラル)。
オーラルのライブではお決まりとなっている4本打ちを行い、ライブ会場に一体感が生まれたところで、最初に披露されたのは「容姿端麗な嘘」。妖艶なベースの音色、キャッチーで刺激的なフレーズを弾くギター、個性的なサウンドを丁寧にまとめあげるドラムサウンド。オーラルらしいトリッキーなアンサンブルで会場全員を虜にしていく。特にグッときたのは、ライブの中盤に披露された「トナリアウ」。今はソーシャルディスタンスの世の中である。「密」というものがもっとも忌避されるご時勢でありながら、あえて数あるシングル曲の中で選ばれた。“ONAKAMAと隣り合う”この日だからこそのチョイスに、ニヤリとさせられるのだった。
山中拓也(Vo/Gt)は、MCでもONAKAMAだからこそのエピソードを披露する。曰く、久しぶりにTwitterを開いたら自分のアカウントから公式マークがなくなっていた。みんなも同様の現象が起きているのかと思い、他のアカウントをみてみると、フォーリミGEN(Vo/Ba)やブルエン田邊は変わらずに公式マークが付いている。それどころか、自分以外の『ONAKAMA』メンバー全員、きっちりと公式マークが付与されているではないか。つまり、自分だけが仲間外れ。「ぜんぜんONAKAMAじゃないやん……」という(色んな意味で)ニヤリとさせられるMCを披露したのだが、このMCでも分かる通り、熱いブルエンと対比すると、オーラルの佇まいは、どこまでもクールに映る。思えば、もっともこの5年でバンドのカラーが変わったのはオーラルだったのかもしれない。5年前の『ONAKAMA』ではソリッドなギターロックバンドという印象も根強く、ライブの魅せ方も今とは大きく違っていた。
実は、この日のセットリストにおいても、5年前の『ONAKAMA』ともっとも内容が変わっていたのがオーラルだった。確かにセットリストの中身は多彩だった。ヒップホップに接近した楽曲もあれば、ファンクやダンスミュージックの要素を取り入れた楽曲もある。ただし、オーラルはロックを捨てたバンドなのかといえば、そんなことはない。というのも、この日のMCでライブハウスについて、そしてダイブやモッシュができるようなライブが一日でも早く戻ってほしいということを、口にしていたのは他ならぬ山中だったからだ。
こういう大きなステージのライブであっても、ライブハウスや、そのカルチャーに目配せしたMCをさらっとするのは、オーラルが紛れもなく“from ライブハウス”のバンドだからだと思う。どれだけ音の幅を広げても、根底にあるのはロックバンドとしての精神。だからこそ、ライブ終盤で披露されたソリッドなギターサウンドが印象的な「5150」は、より眩しく輝いていた。
ところで、この歌、サウンド面でも惹き込まれるポイントが多いのだが、もうひとつ大きなポイントとして、サビ前のシンガロングパートが挙げられる。通常ならここは観客との大合唱となる。が、もちろん、今はそれができない。そこで、あきらかにあきら(Ba)が先導してコーラスを盛り上げていく。確かにそこに観客の歌声は不在だった。しかし、ガイシホールに集った観客の多くが手を突き上げることで、声なき歌声を示し、歌声とは違う何かで会場がひとつになっている感じがした。その光景が、どこまでも壮観だった。ラストは、この日のセットリストで唯一、5年前の『ONAKAMA』でも披露されたオーラル屈指のキラーチューン「狂乱 Hey Kids!!」。リズミカルなサウンドアプローチや、サビで爆発的に上がる音圧などで、ライブの終盤とは思えないほどの熱狂を生み出し、オーラルはステージを後にした。