ヒトリエ、無観客でも圧巻の演奏を響かせた7周年記念ワンマン 迫力の映像演出&濃密なグルーブで新作への期待も満載に

「世の中はどんどん変わっていって、どんどんおかしなことになっている気がする。そのなかでも変わらないことがありまして。それはたとえば、次にやる曲がとんでもなくいい曲ということだったりします」

 「(W)HERE」を前にシノダが口にした言葉は、ヒトリエとして築いてきた歴史に対する揺るぎない自信を感じさせた。「このビートで踊れなきゃ2021年は生き残れないぜ」という挑発的な口上とともに繰り出された「トーキーダンス」(ミュージックビデオを彷彿とさせるモノクロ映像も印象的だった)での、ゆーまおの高速ダンスビートと速射砲みたいなボーカルワークは、その斬新さが今もなお1ミリも失われていないことを物語っていた。そして「クソみたいな2021年に、wowakaより愛を込めて!」という叫びとともに鳴らされた「アンノウン・マザーグース」。ステージ上のあらゆる角度から狙った9台のカメラの映像が、9つに分割された画面に映し出されるなどの斬新な映像演出も織り込まれ、そのパフォーマンスは触れたら切れそうな鋭さだった。「お客様のなかで踊り足りない方はいらっしゃいませんか!?」。シノダの煽りからイガラシがスラップベースを轟かせると、「踊るマネキン、唄う阿呆」がライブのクライマックスの到来を告げた。

 「皆さまのおかげでヒトリエは7周年を迎えることができました」。息を切らしたシノダが誰もいないフロアに語りかける。東京でバンドをやるという夢を叶え、全力で走ってきた7年という短くない時間。「6周年経った頃にはステージにリーダーがいませんでした。7周年を迎えている今日、フロアに誰もいません。いっそのこと全部夢だったらいいのになと僕は思います」。自分たちに訪れた運命に対して正直な思いを吐露しながらも、「僕たちにはまだやれることがあるような気がして新しいアルバムを作った」と彼は言い切った。「この世のありとあらゆる不条理を肴に楽しんでいただけたら」。そんな彼らしい言い回しには、過去を背負ってバンドを続けていくことへの壮絶な決意が滲んでいたように思う。

 そして鳴らされたのは「青」。ノイジーなギターのサウンドと重い足取りで進むリズム、〈それでも僕らが終わることはないだろう〉という歌詞が、決意のシンボルのように聴こえてきた。その重さを振り切るように、シノダの弾き語りから「ポラリス」へ突入。強烈な余韻を残してライブ本編は終わりを告げた。

 オーディエンスの声が聞こえない代わりに、自らコールをしながらステージに戻ってきたアンコールでは、「今日は新曲はやりません。残念でした」と意地悪な笑顔を浮かべながら「SisterJudy」「モンタージュガール」と初期曲を2連発。メンバーそれぞれにフォーカスしたマルチ映像が、3つの充実した表情を映し出し、ヒトリエの新たな一歩となる記念すべきライブは幕を下ろしたのだった。

■セットリスト
『HITORI-ESCAPE 2021 -超非日常六本木七周年篇-』
1月22日(金)EX THEATER ROPPONGI

M1.センスレス・ワンダー
M2.curved edge
M3. イヴステッパー
M4.るらるら
M5. 伽藍如何前零番地
M6. SLEEPWALK
M7. Loveless
M8. RIVERFOG, CHOCOLATE BUTTERFLY
M9. (W)HERE
M10. カラノワレモノ
M11. トーキーダンス
M12. アンノウン・マザーグース
M13. 踊るマネキン、唄う阿呆
M15. ポラリス
EN1. SisterJudy
EN2. モンタージュガール

ヒトリエ 公式HP

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