DIMLIM、アルルカンからPlastic Tree、清春まで……藤谷千明&オザキケイトが選ぶ、2020年V系ベスト

ライター2氏が選ぶ、2020年V系ベスト

清春とPlastic Tree、キャリアあってこその表現

ーー最後にベテランをお願いします。

藤谷:私は清春さんの『JAPANESE MENU』です!

オザキ:僕はPlastic Treeの『十色定理』ですね。

藤谷:私は今、清春さんに関しては訴えたいことがあって……最近ニュースサイトのPRバナーに表示される電子たばこの広告に清春さんが出てくるんですが、それを茶化している人たちがいて……。見なきゃいいのですが……。そこに注目するくらいなら、ちゃんとアルバムを聴いてほしいんです。今、清春さんはボーカリストとしてすごい境地にいるので。

【清春】「グレージュ」【MV】歌詞付き from『JAPANESE MENU / DISTORTION 10』

オザキ:清春さんにしか歌えないものを歌っていますよね。

藤谷:ここ数年のソロ作品は、どんどん装飾がそぎ落とされてきて、歌ひとつで勝負している印象があります。氏はギター2本とボーカルのみで行う『plugless』というライブを続けているんですけど、既存のバンド編成からも自由になっているわけですね。この十数年でどんどん本人がやりたいことが先鋭化されてきているのかなと。

オザキ:清春さんはコロナ禍でも、配信ライブも定期的に行っていましたし、そういう面では柔軟というか。

藤谷:厳密には配信ライブというか、公開レコーディングのような体裁をとっています。いわば「THE FIRST TAKE」を2時間近くやってるようなものですよ! 収録した音源もダウンロードできるという。どうですか? 気になってきませんか? 配信チケット価格は7,000円(特典付きは12,000円)なんですけどね? その上、単なるレコーディングではなく会場を借りて収録することで、ライブハウスにもちゃんとお仕事が生まれるわけじゃないですか。ただ斬新なだけじゃなくて、周りもちゃんと一緒に仕事ができるような形をとっているという。自分たちのことだけじゃないというミュージシャンとしての矜持を感じますね(早口)。

オザキ:なるほど。自分はPlastic Treeの『十色定理』なんですけど、これまでのアルバムは10曲入りだったらその10曲を使って、1枚の絵を描くようなイメージの作品だったと思うんです。Plastic Treeを構成するいろんな音楽性がアクセントがある中で、統一感のある1枚の絵にできるような、そこがPlastic Treeの美しさだなって。ただ今回の音源に関しては、完成された1枚の絵を10枚作ったようなイメージがあって。もっと簡単に言うと、これまでの音源はいい意味でアンニュイというか、おぼろげな、ぼんやりしたイメージで統一されていた。でも今回のアルバムは1曲1曲がパキッとしている、キャラが際立っている音源なんですね。そこがPlastic Treeとしても新しいなと感じました。

Plastic Tree [十色定理]Special Trailer

藤谷:このキャリアをもってして、できることかもしれないですね。

オザキ:あと今作は完全限定生産盤で、収録されている10曲を全部シングルにパッケージング10枚組にして売ったんですね。各曲ごとにジャケットも作るし、MVも撮影している。すべてシングルとして成立するようなインパクトの強い音源が集まってできたアルバムが『十色定理』なんですけど、それでいて飽きないし、聴いていて疲れない。独立した10曲を集めても、Plastic Treeだと分かるところが彼らのすごいところだなと改めて思いました。

2021年における“暴れる曲”のあり方

ーー2021年はどんな音源を楽しみにしていますか?

藤谷:2021年、どんな音源が出てくるんですかね。配信で1曲ずつリリースしていくバンドも増える傾向が加速するのかも。

オザキ:個人的にはライブができない状況の中で、暴れる曲をアルバムにたくさん詰められてもファンが困っちゃう気がするんですよ。だからこそ、アルバムとしてのまとまりというか、起承転結がちゃんとあって、激しいものも歌ものもっていう引き算ができている音源が重要かなって。そういう意味でも、ライブハウスでもホールでも映えるような音源を作るバンドが出てくるといいなと思ってます。

藤谷:世の中がそういう流れになるのなら、逆に「うちで暴れよう!」と、暴れる曲しか入っていない音源を出すバンドがいたら、それはそれで私はカッコイイなって思いますね。

オザキ:めっちゃ逆張りしますね(笑)。

藤谷:逆張りというか、世の中が同じ流れに行くのはなんとなく気に入らない……(笑)。でも本当に、2020年は厳しい年だったし、ライターとしてもライブレポートなどの仕事が飛んでしまうよみたいなこともちょいちょいあったので。

オザキ:胸が痛い。

藤谷:ね、結局は、アーティストの方々も、音楽業界のみんなも生き残ろうねっていう感じですね。一度撤退した判断を人たちも勇気があるし、生きてるだけでみんなえらい〜。

オザキ:そうですね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる