ゴールデンボンバーら配信ライブの工夫、ジグザグの飛躍、lynch.ライブハウス支援企画……2020年V系シーントピックス振り返る

2020年V系シーントピックス振り返る

“良いものはシェアして、一緒に頑張っていく”方向性へ?

ーー新型コロナウイルスでネガティブな状況ではありますが、様々なアクションを起こしていたバンドもいました。

オザキ:新型コロナウイルスの影響は、音楽業界全体、ひいてはライブハウスには大きな打撃を与えたと思うんですけど、そんな中、V系シーンの中でいち早く動いたのがlynch.だったと思うんです。2020年3月にアルバム『ULTIMA』を出したばかりなのに、4月に『OVERCOME THE VIRUS』をリリースして、その収益を過去出演したことのあるライブハウスに分配する、ライブハウス支援企画を行いました。結果的に1000万円超えの収益を分配したのですが、いち早くlynch.がアクションを起こしたことはヴィジュアル系のファンとしても誇らしかったです。あと、同じくらいのタイミングにDもサブスクで得た収益をライブハウスに還元する企画を行っていましたね。

藤谷:これは憶測ですが、(Dに関しては)アーティストがマネジメント事務所の社長をやっているからこそ、フットワークを軽くできたのかなとも思います。

オザキ:lynch.の葉月さんがインタビューで、収益としては成功したけど、それでライブハウスを救えるとは思っていない、自分たちの行動を見て他のバンドにも真似してもらいたかったと話していましたね。

藤谷:ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんも、今年の一連の配信ライブで生まれたアイデアを真似してほしいと言っていました。バンドの性質的にも、一般的なバンドとは違った規格外なことができるからこそ、良いと思ったものは真似してほしいと。

オザキ:ここまで深刻な状況になると、音楽業界全体で良いものはシェアして、一緒に頑張っていこうという方向性にした方が健全だと思いますね。

藤谷:そういう意味では、sleepyheadの取り組みも面白くて。コロナ以前からやっていたと思うんですけど、「ぼくのじゃないはきみのもの」という曲を権利フリーにして、「#ぼくのじゃないはきみのもの」プロジェクトとして、トラックデータを公開し誰でもカバーしていいとアナウンスしたんです。その上、それを46人のアーティストにカバーしてもらうという試みもやっていましたね。これはチャレンジングなことだと思いました。

sleepyhead Digital Single「ぼくのじゃない original ver.」MV

オザキ:YouTubeには歌ってみた文化がありますし、そこを起点に曲やアーティストが広がっていくことも増えていますよね。権利で削除されることももちろんありますが、そこをあえてフリーにすることは新しさを感じますね。

藤谷:そこから、GOMESSさんと(sic)boy(シックボーイ)さんとで「WHY NOT」っていう曲で共演したり、逆にGOMESSさんのアルバムにsleepyheadが参加してたりとか、新しい人の交流ができることもある。

sleepyhead Digital Single 「WHY NOT feat.GOMESS & (sic)boy」 MV

オザキ:ソロアーティストならではのフットワークの軽さを活かして、誰とでもコラボできるっていう良さはありますね。

ーー現状、先々がまだ見えない状況ではあるので、2021年以降の予想は難しそうです。

藤谷:2021年に関しては現時点で何も予想できないですね。ただ、すでに発表されているところとしては、the Raid.がメジャーデビューします。12月26日には国立代々木競技場第二体育館でインディーズラストワンマンを開催しましたが、明るいニュースかなと思います。the Raid.は、もともとボーカルの星七さんは人気ホストだったんですよね。夜の街をテーマにした曲、例えば「歌舞伎町レイニー」っていう曲がYouTubeで100万再生超えているのですが、それは最近は歌舞伎町にいる若い女の子のファッションやカルチャーが注目されているところに関連しているのかなと。そうやって様々な文化が交わることで広がっていくバンドも出てきていることは面白いなと思います。

the Raid.「歌舞伎町レイニー」MV FULL

オザキ:2月3日に予定されていたlynch.の武道館ワンマンはバンドにとってもファンにとっても念願だったと思うのですが、この度の緊急事態宣言を受けて残念ながら中止となってしました。ただ、日比谷野音で武道館公演の告知を聞いて、このコロナ禍においてファンの人たちの希望になるならキャパを絞ってでもやろうと決断したあの時の気持ちはファンにとってこの時代を生き抜くための救いになったことは間違いないですし、いつになるかわかりませんがlynch.が武道館に立つ日が必ず来ると思うので、それまでしっかり感染対策をして、生きて約束の場所で会えるのを楽しみにしたいですね。

後半へ続く>

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