新しい学校のリーダーズ、ワンマンライブで打ち出したエネルギー 88risingから世界へ羽ばたくグループの現在

 2020年12月27日、18時3分。始業(終業?)のチャイムと煽り映像に続き、「君が代」が流れるステージにMIZYU、KANON、SUZUKA、RIN(登場順)の4人が現れる。照明が切り替わると同時にロックなイントロが流れ、2017年6月のCDデビュー曲「毒花」でスタート。動静のダイナミズムの大きなダンスが壮観だ。「“無名ですけどワンマン~日本から出たことないけど凱旋ライブ~”東京公演、ィよろしくゥ!」というSUZUKAのシャウトから、続くは「席替ガットゥーゾ」。“歌い踊るセーラー服、青春日本代表”の看板にふさわしく、初手からパンキッシュなエネルギー全開である。

 2020年11月に88risingとの契約とATARASHII GAKKO! 名義での世界デビューを発表した新しい学校のリーダーズが、渋谷WWW Xで開催した有観客配信ライブ。僕が見たのは2018年9月以来、2年ぶりである。初見はさらに遡って2015年11月で、そのときのノベルティ的でキッチュな印象から、2度目のエネルギッシュなパフォーマンスへの成長ぶりにーー3年ぶりだったから当然とはいえーー感銘を受けた記憶がある。それだけに、88risingからの海外進出というニュースは感慨深かった。

 日系アメリカ人のショーン・ミヤシロが2015年に設立した88risingは、アーティストマネジメントから音源・映像制作、マーケティングまで手がける総合メディア企業。キース・エイプ、チョンハ(韓国)、Higher Brothers(中国)、リッチ・ブライアン、NIKI(インドネシア)、Sen Morimoto、Joji(日本)といったアジア系アーティストを次々とアメリカ市場に紹介し、Jojiのアルバムを2作続けてUSチャート上位に送り込むなど常に話題の的になっている。

 そんなイケてるプロダクションから世界に羽ばたくわけだから、88risingが彼女たちのどこに魅力とポテンシャルを見出したのか、どう料理してくれるのか、といったテーマを当然のように念頭に置いて、僕は配信を見た。

 卒業式の「呼びかけ」のように「僕たち」「わたしたちは」「個性や」「自由で」「はみ出していく」「はみ出していく」「それが」とリレーしていき、英語なまりの「新しい学校のリーダーズ!」のSEにつなぐのはお決まりの挨拶。そのあとに「A.K.A. ATARASHII GAKKO!」と続くのが世界デビュー決定後の新演出だろう。

 MCを仕切るSUZUKAが「今日はここにいるみなさまだけではなく、配信の人も見ているから、このステージ上で行われるわたしたちの時間は不特定多数の人間が見ている。可能性は無限大だということです。わたしたちはまったく手ぇ抜かずにやるので、みなさんも手ぇ抜かずに見ててくださいね」と徐々に大阪なまりが顔を出すトークで魅了して「まさ毛カンナヴァーロ」。吉澤嘉代子「ケケケ」やあっこゴリラ「エビバディBO」に通じる“ムダ毛”テーマの歌詞が面白い。

 続く「オトナブルー」と「恋文」は2020年5月に3曲連続デジタルリリースしたうちの2曲で、前者はyonkey、後者はMUTEKI DEAD SNAKEの作曲による、H ZETT Mプロデュースのバンドサウンドを離れたエレクトロ歌謡。振付は4人が自分たちでやっているそうだが、ベタなムーブをコミカルあるいはドラマチックなスパイスとして取り入れたフォーメーションが楽しい。揃えた動きの美しさはさすがリアルダンサーだ。

 寸劇コーナーではSUZUKAが好きになった男の子の名前が“ミヤシロくん”という、ちょっとした88risingへのオマージュも。これを前フリとした「恋の遮断機 feat.H ZETTRIO」とMIZYUがリードボーカルを務める「雨夜の接吻」はいずれもH ZETTRIOをフィーチャーしたジャズ歌謡で、4人もジャズダンスっぽいフェミニンな動きでギャップを見せてくれた。

 ステージが暗転してSUZUKAにスポットライトが当たり、先生を好きになってしまったという「恋ゲバ」へのイントロダクションを、噴き出し笑いに引き笑い、奇声に半泣きと、ふざけ表現を総動員して芝居がかりすぎた口調で届ける。同曲はバキバキのダンスが売りのリーダーズの代表曲のひとつだが、SUZUKAの顔芸も圧巻。このころにはもう彼女から目が離せなくなっていた。

 賛美歌風のメロディに乗せて知的な言葉遊びを展開する「知りたい」を経て、もうひとつの看板曲「最終人類」。激越なダンスと組体操ムーブで青春パワーを見せつける。続く「NAINAINAI」は2020年12月2日、88rising主催のオンラインフェス『DOUBLE HAPPINESS Global Holiday Festival』で初披露されたyonkey作詞・作曲の新曲。オールドスクールっぽいファンキーなビートにトラップ的な3連フロウもまじえ、ガヤガヤ感のあるパフォーマンスが4人のリズム感のよさを際立たせる。文句なしにいい曲だ。

 「わしら、88risingと契約をいたし、これから世界へ羽ばたいていく! みんな、“行ってらっしゃーい”とか思ってないよね? あんたらも! わしらと一緒に! 世界へ羽ばたくんやぞーッ!」

 RINがサンプラーを叩いてビートを奏でる中、そう叫んでSUZUKAは彼方を指さす。「わしらは、あんたらがいるからこうしてはみ出せとるんや! まじでありがとうございやす! これからもついてきてや! よろしくお願いいたしやす!」と深く一礼して、本編ラストの「迷えば尊し」。〈本当の自由ってなんだろな? 大人振ったら承知しない 自分で見つけたいからほっといて〉は“はみ出していく”4人らしいマニフェストだ。

 アンコールは2016年7月の配信デビュー曲「学校行けやあ ゙」。「本当に、本当に、来てくださりありがとうございます。これからも、どんな状況になるかわかりやせんが、なんかわからんけどずっと好きでいてくれ!」とSUZUKAが叫んで、4人手をつないで深々と一礼、約1時間10分のステージは閉幕。さらにその後「居残りトーク配信」と称してグッズ紹介や質問コーナーがあり、最後に「ケセラセラ」をスタンドマイクで披露した。

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