KinKi Kidsは今日も”音楽の力”を体現しているーーアルバム『O album』で新しい時代に向かって届けるふたりの歌
12月23日、KinKi Kidsにとって約4年ぶりとなるオリジナルアルバム『O album』がリリースされた。クレジットには、おなじみの作家陣のほか、初タッグとなるアーティストの名前も。さらには堂本剛も創り手として参加している。
ここ数年、KinKi Kidsが動き始めたというか、挑みを始めた印象がある。「堂本光一と堂本剛が歌えばKinKi Kids」。ジャンルレスに届けられる音楽が、その定説を確信させる。
濡れた声と哀愁、“個”の強さ、芯に響くハーモニー、第三の声ともいえるユニゾン・“KinKi Kidsの声”。それらKinKi Kidsならではの持ち味を最大限に活かしつつ、幅広い楽曲を表現したチャレンジングな今作。アルバムコンセプトは“Over”。聴いて納得の1枚だった。
KinKiの“イズム”を感じる堂島孝平との楽曲群
1曲目を飾るのは『O album』の共同プロデューサー・堂島孝平による「彗星の如く」。ベースが活きるグルーヴィーな楽曲ながら、サラっと軽やかな聴きやすさがある。ギターサウンド、歌詞にそれぞれ散りばめられた“キラーフレーズ”は、まさに堂島節だ。
スタイリッシュでありながら、Bメロの入りで辿るメロディアスなラインにKinKi Kidsを感じる。耳を離れないこの感覚に、堂島孝平×KinKi Kidsのはじまりである「Misty」がよぎる。
同じく堂島による「DEEP DIVE」は、ライブで聴きたい1曲だ。ギターをかき鳴らすロックサウンドでありながら、不思議な上品さと切なさをもつ。
サビ前の合図的な“So sad”、否応なしに胸は高まる。ボーカルとギターが呼応し、ピアノの旋律が絡みつく落ちサビへと向かう展開は、もうずるいとしか言いようがない。
ロックが映える光一の声とメランコリックな剛の声、高音域のサビを地声で歌いあげるユニゾンにはどこかやるせなさが漂い、苦しいほど歌詞の世界観にマッチする。
「運命論」は、ファンにとってストライクな曲ではないだろうか。KinKi Kidsが歌い続けてきた楽曲ラインであると感じた。サビは壮大でありながらシンプル。だからこそ、沁みる名曲だ。二人のファルセットも美しい。
大切なメッセージを、丁寧な日常の描写で綴っている。4分27秒の楽曲なのだが、あっという間の感覚。何度でも聴きたくなる。
剛と堂島による「Slash」は、個人的にもっともKinKiの“イズム”を感じた曲だ。
尖ったギターサウンドの疾走感に乗った、ドラマティックなメロディ。電子音をこれだけ打ち込んでおきながら、歌謡曲を思わせる懐かしい響きをもつ。
電子音と生音の融合は『A album』や『B album』の時代にも多用され、流行した。KinKiとともに歩んできたファンこそ感じる“なじみやすさ”もあるだろう。温故知新と言うべきか、秀逸な曲だ。
2017年に突発性難聴を患った剛が、入院期間中に制作したメロディ。痛いほどのエネルギーを感じる。“堂島孝平”という詩人の、言葉ハメの上手さとロマンチシズムにも敬服だ。