BRADIO、結成10周年ライブで届けた感動と笑顔 パシフィコ横浜をソウル&ファンク一色に染めた夜

 およそ10カ月ぶり、ついにBRADIOが観客のいるステージに戻ってきた。2010年12月12日の初ライブからちょうど10年の記念日、パシフィコ横浜・国立大ホール。チケットはもちろんソールドアウト(収容人数の半数に制限)。ステージの上も下も、裏方もメディアも、誰もが待ちわびたハッピーファンキーパーティーの再開だ。

BRADIO

 三段飾りのステージのてっぺん、バンドの巨大なロゴマークの中からメンバーが一人ずつ呼び出されて登場する、にぎやかなオープニングにいきなり心躍る。コーラスとホーンセクションを加えた総勢13名のビッグバンドを率いる、メンバー3人の衣装はド派手なカメレオンカラーのスーツだ。真行寺貴秋(Vo)の美声ファルセットが炸裂する「LA PA PARADISE」で幕を開けたショーは、「真っ赤なカーチェイス」「語らぬ愛は美しい」と、徐々に熱量を上げて加速する。観客は歓声と拍手の代わりに、あらかじめ配られたスティックバルーンを打ち鳴らしてバンドの帰還を歓迎する。「BRADIO、ただいま戻りました!」第一声を放つ、貴秋の声がはずんでいる。久々の再会シーンならでは、初々しさを感じるあたたかい空気感だ。

「我々のやることはただひとつ、みなさんをパーティーの向こう側に連れていくことです。行こうぜ!」

 ストイックなJB(ジェームス・ブラウン)スタイルのファンクチューン「FUNKASISTA」から、コーラス隊と共に揃いの振付けで盛り上げる「Funky Kitchen」へ。貴秋のアダルトな色気を歌に込めた「Sugar Spot」から、MJ(マイケル・ジャクソン)風のフェイクで決めた「Flash Light Baby」へ、息をもつかせずノンストップ。メランコリックなピアノと、大山聡一(Gt)のキレキレのギターソロが聴きものの「Once Again」を経て、ぐっとせつなくメロウに聴かせる「蝙蝠」、そしてアッパーなロックビートで突っ走る「夢見るEnergy」と、本籍地はファンクだが、それぞれ独自の個性を誇る、バラエティ豊かな楽曲が続々と登場する。パーカッションを加えたバンドサウンドの厚み、4管ホーンズの圧倒的な輝き、男女コーラスのソウルフルなうねり、なんてゴージャスな音だろう。

酒井 亮輔

 3人だけのアコースティックで奏でた「All I Need Is You」では、貴秋が二人にあてた手紙をメロディに乗せて歌うサプライズがあった。拝啓、お二人、10年前にバンドやろうぜと声をかけて、一緒にやってくれてありがとうーー。だいぶ字余りだが気にしない。何も知らされていなかった二人の顔に、思わず照れ笑いがほころぶ、いいシーンだ。そこにピアノを加えて「ギフト」、そして「雨恋」と続く、愛をテーマにしたスローバラードの美しさ、特に「雨恋」のアカペラは、息をのむほどに素晴らしい。ファンキーボーカリストとして、最高のバラード歌いとして、貴秋の飽くなき進化には本当に驚かされる。

 「緊張の緩和」とは、芸人の世界で使われる笑いの基本概念だが、大山もそれを知っていたに違いない。「素敵な3曲のあと、一回リセットしに来ました!」と、一人でステージに登場するだけで観客が笑いさざめく。おなじみのコール&レスポンス「BRADIO!」「フー!」の代わりに、スティックバルーンを使ってのコミカルなパフォーマンスに、やんやの拍手が飛ぶ。貴秋がアコースティックギターを(半笑いで)弾き、大山と酒井亮輔(Ba)が合いの手コーラスを入れるシュールな展開を経て「スパイシーマドンナ」へなだれこみ、ラテンロックなビートに乗って登場した、ビキニと羽飾りのタヒチアンダンサーズが踊りまくる。よくわからない謎展開だが、なんだか無闇に楽しい。

 「Boom! Boom! ヘブン」から「きらめきDancin’」へ。観客を巻き込んだクラップ遊びでとことん盛り上げ、貴秋が得意の「変なおじさん」で笑わせ、最後はもちろん「だっふんだ」。直後の貴秋のMC、「方向性が合ってるかわからないけど、俺たちBRADIO、みんなを笑顔にしたくて精一杯なんです!」という言葉についつい笑いつつ、「それがBRADIOだよな」としみじみ思う。BRADIOは笑顔の伝道師だ。

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