中島みゆき、松山千春、山口百恵らカバーで導く望郷の風景 半﨑美子、聴き手に寄り添う豊かな表現力

 北海道出身のシンガーソングライター 半﨑美子が、上京20年を記念して初のカバーアルバム『うた弁COVER』をリリース。同郷の先輩である中島みゆき、玉置浩二、松山千春の名曲のほか、山口百恵や松田聖子のカバー、そして誰もが一度は歌ったことがある大正3年から歌い継がれる名曲「故郷」などを収録。半﨑の語るような優しい歌声で、誰の心の中にもあるノスタルジックな思いが胸に広がる作品になった。

 約17年の下積み経験を経て、2017年にミニアルバム『うた弁』でメジャーデビューした半﨑美子。下積み時代に全国のショッピングモールを回って歌を届け続けた経験から「ショッピングモールの歌姫」と呼ばれ、各地で出会ったファンの人生や涙に触れて、「お弁当ばこのうた〜あなたへのお手紙〜」や「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」などのヒット曲が生まれた。彼女の生き様はさまざまなメディアから注目を集め、2018年には『情熱大陸』(MBS/TBS)に出演している。また、天童よしみに「大阪恋時雨」を書き下ろしているほか、「明日への序奏」は教育芸術社より発売の中学生の音楽教材に掲載されている。

 半﨑はこれまでに『うた弁』『うた弁2』と2枚のアルバムを発表してきた。アルバムをお弁当に見立て、お弁当におかずやご飯など美味しいものがたくさん詰め込まれているように、アルバムにもいろいろな曲が収録されていることが表現されたタイトルだ。「お弁当」という言葉は、さまざまな味が詰まった幕の内的な意味合いだけでなく、聴いた人それぞれのさまざまな思いも呼び起こしてくれる。例えば、父や祖母が作ってくれた、煮物が入っていた、おにぎりが大きかったなど、それぞれの家庭の事情や家族の絆みたいなものが見え隠れする。また遠足で友達と食べたお弁当を思い出す人や、名産品を詰めた駅弁から遠く離れた故郷を思い出す人もいるだろう。さらにお弁当は日本独自のものであることから、半﨑のJ-POPに対する深い思いも感じられる。

 半﨑の最新アルバム『うた弁COVER』は、これまでと変わらないお弁当というスタイルに、J-POPの名曲カバーが詰め込まれた作品になった。ジャケットには、故郷、実家の象徴として12品目の“おせち”が使われている。彼女自身上京20年であることから「故郷」と「青春」をテーマに、昭和の名曲、懐かしい歌謡曲など全12曲が収録され、半﨑自身の半生やルーツともリンクしたものになった。そして聴く人それぞれの記憶と望郷の思いを揺さぶり、ノスタルジックな気持ちへと導いてくれる。

半崎美子「ホームにて」リリックビデオ

 アルバムの1曲目を飾るのは、中島みゆきの「ホームにて」だ。中島のミリオンヒットシングル『わかれうた』のカップリングに収録されていた曲で、近年は高畑充希や手嶌葵もカバーしている。東京で破れた夢を捨てきれず、ばつの悪さもあって地元に帰れずにいる主人公の哀愁と切なさを歌った楽曲で、長い下積み経験を持つ半﨑自身の姿ともどこか重なるものがある。今作での彼女の歌唱は、かつての自分をどこか懐かしく思い出しているようで、夢を追い続けて掴んだ彼女自身の経験も彼女からのメッセージとして感じられる。

半崎美子「大空と大地の中で」リリックビデオ

 本作には中島みゆきをはじめ、彼女と同郷の北海道出身のアーティストの楽曲が多数カバーされている。玉置浩二の「メロディー」は、聴く人それぞれの中に思い出のセットになった歌があることを教えてくれる。松山千春の「大空と大地の中で」は、北海道の雄大な自然を彷彿とさせる。半﨑にとって同郷の先輩の存在は、きっと憧れであり目標であり道しるべだっただろう。そんな大切な存在の楽曲を歌うにあたり、レコーディングではきっと北海道の景色をまぶたに思い浮かべ、かつて抱いた夢に思いを馳せながら歌ったのではないだろうか。

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