“聖飢魔IIの創始者”ダミアン浜田陛下に聞く、Damian Hamada's Creatures始動まで 「曲作りは生涯続けていくつもり」

ダミアン浜田陛下に聞く新バンド始動まで

 聖飢魔IIの創始者で初代ギタリスト・ダミアン浜田陛下が、ヘヴィーメタルバンド・Damian Hamada's Creaturesを始動。同バンドは改臟人間にされた6人の“悪魔の僕”によって構成されており、11月25日に『旧約魔界聖書 第Ⅰ章』、12月23日に『旧約魔界聖書 第Ⅱ章』と大聖典(アルバムのようなもの)をリリースする。発売にあたり、リアルサウンドではダミアン浜田陛下へのインタビューの機会を得た。音楽的ルーツや、聖飢魔II脱退からDamian Hamada's Creaturesの活動に至るまでの経緯などを聞く貴重な内容になっている。(編集部)

私が好きなものばかりを集めたらこういう世界観に

ーーDamian Hamada's Creaturesの話題に入る前に、ダミアン陛下のこれまでの音楽活動についてお話を伺いたいと思います。ダミアン陛下が音楽制作する上でのルーツって、どういったものですか?

ダミアン浜田陛下(以下、ダミアン陛下):初めてハードロックやヘヴィメタルに魅せられたのは、世を忍ぶ仮の姿で14、5歳のときなので、もう45年くらい聴いているわけだが、その間も熱が衰えることは一切なかった。もともと自分の中に、すごく激しいものを求めるところがあったんじゃないかと思う。というのも、世を忍ぶ仮の姿での子供の頃は特撮モノやSFアニメ、スポ根アニメといったものがお気に入りで。そういうアニメの主題歌は激しいものが多く、すごく影響を受けているんじゃないかと思うわけだ。あとは、小学校1年生の頃に買ったクラシックのレコードだな。

 音楽的にはそういったルーツがあるが、それ以外にも『エクソシスト』や『マタンゴ』といったホラー映画、楳図かずお氏や古賀新一氏の作品、永井豪氏の『デビルマン』からの影響も大きい。特に永井豪氏は漫画家の中でも一番というくらいに好きで、彼の描く世界観からは楽曲の中にも影響を受けているんじゃないかなと思う。そうやって私が好きなものばかりを集めたら、こういう世界観になってしまったのだよ。

ーーそれが初期の聖飢魔IIや現在の音楽に反映されていると。

ダミアン陛下:そうだ。そして、それは今でも続いているんじゃないかと思う。多少ホラー的な要素は薄れてきたが、今はそのぶんファンタジーの要素が強まっている。とはいえ、やはり多くを占めるのは昔から好きな激しいものだな。

ーーそういう音楽活動を大学時代まで続け、地獄へ帰還(世を忍ぶ仮の姿で教師になるため、聖飢魔IIを脱退)。一度音楽の世界から退くことになります。教職に就いている間、音楽とはどういう距離感で接していたんですか?

ダミアン陛下:教員は部活動の顧問を持つことになっており、最初の頃は運動部の顧問を受け持っていたのだ。ところが数年後、転勤先で合唱部の顧問を担当することになり、「あなたの経歴からすると、ぴったりなんじゃないか?」ということで、同時に軽音楽部(当時はまだ同好会)も担当してくれないかと打診された。途中から軽音楽部のみを受け持つことになり、以降14年にわたり顧問を務めたのだ。それ以外にも、教員たちとバンドを組んで、文化祭のときに演奏もしたな。

感覚的には子供たちがゲーム機で遊ぶのと一緒

ーーそういう生活をされている中でも、魔暦前3(1996)年と魔暦18(2016)年の二度、聖飢魔IIに楽曲提供しています。それぞれどういう経緯だったんですか?

ダミアン陛下:まず、魔暦前3(1996)年の大教典(アルバム)『メフィストフェレスの肖像』は新曲ではなく、もともと手元にあった曲を提供したのだよ。魔暦前4(1995)年にTHE SATAN ALL STARSという形で、聖飢魔IIの地球デビュー(メジャーデビュー)後に初めてダミアンが信者の前に姿を現した。そこで「何曲かダミアン殿下(当時)の曲を入れて教典を作ろう」という話が上がったので、それまでのストックから聖飢魔IIに合いそうな曲をいくつか送り、その中からチョイスされたのが「メフィストフェレスの肖像」と「凍てついた街」。もうひとつの「野獣」はアマチュア時代にも演奏していた曲だ。

 一方、魔暦18(2016)年の小教典(シングル)『荒涼たる新世界 / PLANET / THE HELL』 の2曲は、オファーをもらって一から作ったもの。これは魔暦16(2014)年、ゾッド星島親分邸で忘年会をしたとき、デーモン閣下やジード飯島大将をはじめとした聖飢魔II関係者と、人間の関係者が何人か集まり、その場で翌年の聖飢魔II地球デビュー30周年について話したのだ。私はその頃、曲を書きたかったこともあり、閣下に「再集結にあたり新しい教典は出るのか?」と聞いたのだが、「教典は出すつもりはない」と。しかし、その何カ月後かにアニメ『テラフォーマーズ リベンジ』の作者から聖飢魔IIに曲を書いてほしいというオファーがあり、「もしよろしければ、その曲を書きませんか?」と閣下から聞かれたので、「2曲とも私が作っていいのか?」と返してOKをもらった。そこから『テラフォーマーズ』のコミックを全部読んで、アニメも観て研究し、曲作りに着手して、完成したのが『荒涼たる新世界 / PLANET / THE HELL』だったのだ。だから、忘年会がなかったらあの小教典は別の構成員が作詞作曲していたかもしれないな。

ーーいろんな偶然が重なったんですね。

ダミアン陛下:そうだな。ちょうど私も新しい音楽制作ソフトを手に入れたことで、楽曲制作欲が増していたタイミングだったのも大きい。すべてはルシファーのお導きなのだよ。

ーー音楽ソフトの話題が出ましたが、最近はそういうソフトを使って作業を進めているんですか?

ダミアン陛下:Cubaseを使っているんだが、楽しいものでな。これで意識が大きく変わった。だが、アイデアを思いついてもCubaseを立ち上げるのにはすごく時間がかかるので、まずはスマホのICレコーダー機能に思いついたメロディを鼻歌で録音して、あとで手が空いたときにCubaseに入力するようにしている。サンプリングソフトもまた私の意識を変えてくれた。例えば、クワイヤだとかクラシックのストリングスもサンプリングを使って、リアルな形で表現することができる。ギターの音も昔は嘘っぽいものだったが、今ではサンプリングしたリアルな音源を使って、Cubaseの中でディストーションをかけるなど、普通のギターと同じような形で再現できるのだ。これが楽しくてしょうがないのだよ。感覚的には、子供たちがゲーム機で遊ぶのと一緒だな。

私の中では曲作りは生きがい

ーーそうやってどんどん生まれる楽曲を、世の中に発表することは考えませんでしたか?

ダミアン陛下:開始した時はそういった考えはなかったのだが、去年の春に教職を早期退職してな。そこから自由な時間がたくさんでき、最初はその時間が楽しくて仕方なかったのだが、そのうちすぐに飽きてしまった。飽きた次には、世間から取り残されているような感じで怖くなるのだよ。まあ悪魔だから別に取り残されてもいいのだが(笑)、もうちょっと生産的なことをしようと思い始めて、Cubaseを使って曲作りを再開したらいつの間にやら曲が増えていき、「この曲を公にしたい」と思うようになった。そこで初めて具体的に発表する方法を考えるようになったので、ここ1年くらいの話だな。

 私は楽曲が表に出れば、それがいかなる形でもよかった。もちろん聖飢魔IIでもいいし、スタジオミュージシャンを集めて演奏して、聖典(CD)を作るでもいい。私の中に溜まっているものを消化することになるわけだからな。できたものはやっぱり聴いてもらいたくなるのだよ。

ーーダミアン陛下はソングライターとして、職人気質的な側面が強いんですかね?

ダミアン陛下:いやいや(笑)。曲作りとは、感覚的には謎を解きながらストーリーを進めていき、何らかの目的を達成させるというロールプレイングゲーム(RPG)に似ているのかもしれないな。最初に曲の断片から始まるわけだが、それはRPGでいう布の服と棍棒から始まるのと一緒。やがて兜や鎧を入手するように曲作りも進み、アレンジを考え完成させていく過程はだんだんラスボスに近づいていく流れにも似ている。だから、職人気質と言われるとちょっと照れるな(笑)。

 この聖典の制作に入る前、侍従長(事務所のマネージャー)から「ダミアン陛下はなぜ曲作りを始めたんですか?」と聞かれたことがあったが、「私の中では曲作りは生きがいだ」と答えた。人間は年をとるとゲートボールを始めたりゴルフを始めたり、あるいはピアノを習い始める者もいる。悪魔である私はその感覚で、作詞作曲を選んだのだよ。

「もし今後そういうことがあれば、カラオケ聖典を作ろう」

ーーその生きがいの中から生まれた楽曲を、Damian Hamada's Creaturesという新たなバンドを通じて発表することになります。

ダミアン陛下:去年の12月にデモができ、「これを世の中に出したいのだが」と侍従長に音源を送った。すると、1カ月後に返事が来て「これをバンドでちゃんと録って、一回こっきりではなくてライブ活動もできるパーマネントなメンバーを集めましょう」という話になったのだ。悪魔教会(レコード会社)側で“悪魔の僕(しもべ)”となるべくメンバーを探し始めたのが、今年の1月から2月にかけて。その間に侍従長が伊舎堂さくらさんを、悪魔協会が金属恵比須を見つけてきて、2月に初めてミーティングを行ったときに「こういう人たちがいる。この2組をくっつけて、ダミアン陛下の曲を演奏してもらったら面白いことになるんじゃないか?」という話が出てきたわけだ。

 私もYouTubeなりいろいろ世間に出回っている彼らの音源を聴いたが、期待できるものだった。最初、女性ボーカルが私の曲を歌うことに関しては、「キーを変えなくてはいけないのでは?」などの不安もあった。特にハードロックやヘヴィメタルはギターの開放弦を使ったプレイが多いので、キーを変えることで曲のニュアンスも変わってしまう。しかし、彼女は非常に広い音域の持ち主だったので、最初のイメージをほとんど変えることなく世の中に出すことができたのだよ。現在世の中に出回っている彼女の歌の中では、この聖典が最もハイクオリティだと思うぞ。

ーーレコーディングのディレクションは、ダミアン陛下ご自身が行なったのですか?

ダミアン陛下:ああ、かなり綿密に。なにせレコーディング終了までに半年かかっているからな。その間に、ゼウスの史上最大の妨害(コロナ禍)に見舞われたが、スタジオに入るのは演者とエンジニア、悪魔協会の人間の最小人数に絞り、私は音源を送ってもらい、それを聴いて返すという作業を何往復も繰り返した。かなり細かく指示を出して、エンジニアに対応してもらったよ。

ーー今回は11月25日に『旧約魔界聖書 第I章』、12月23日に『旧約魔界聖書 第II章』と、大聖典(アルバム)2作品が連続リリース。興味深いのが、それぞれの大聖典には各収録曲のカラオケ音源も収められていることです。

ダミアン陛下:これは私のアイデアなのだが、24年前にインディーズから個悪魔教典(ソロアルバム)を出したときに、信者(ファン)から「カラオケで歌いたいので、カラオケ業者にリクエストを出しています」という声をもらってだな。結局そのときは10曲のうち、カラオケ化されたのは1曲だけだった。そこで、「もし今後そういうことがあれば、カラオケ聖典を作ろう」と思ったのだよ。今回も、当初は13曲入りの聖典とカラオケ聖典の2枚組にしようと思っていたくらいだからな。

 私も世を忍ぶ仮の姿のときはカラオケに行くこともあるのだが、大好きなRainbowの曲をカラオケで歌うとき、バックトラックは打ち込みで少し物足りない。もしこれが、リッチー・ブラックモアのギターでロニー・ジェイムス・ディオ本人のハモリが入ったカラオケだったら、ファンは嬉しいはずだ。少なくとも私はそうだ。

ーー確かにそうですね。

ダミアン陛下:RainbowやDeep Purple、Led Zeppelinの本人演奏、本人のバックコーラスが入ったカラオケCDがあったら、ファンならば絶対に買うだろう。それは単にカラオケが好きな人間のためだけではなく、バンドでコピーする者にとってもありがたいはずだ。特に楽譜が発売されていない楽曲の場合、細部にわたって聴き込むことができるから、耳コピもしやすいだろうしな。そういう意味でも、カラオケ音源は重宝されるんじゃないかと思い、用意したのだよ。

ーーこれだけ凄腕の方々が演奏しているのだから、演奏面にも注目して聴きたいですし、僕はこのメンバーならではの企画だと思いました。

ダミアン陛下:なるほど。それを金属恵比須の者たちに伝えたら、大層喜ぶと思うぞ。

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