TVアニメ『池袋ウエストゲートパーク』対談インタビュー

THE PINBALLS 古川貴之×『IWGP』原作者 石田衣良 特別対談 バンドマンと小説家が語り合う、表現の本質論

『IWGP』にも影響を与えたブルース・スプリングティーン

石田:そういえばTHE PINBALLSは、中学生のときに声をかけたメンツとずっとバンドが続いてるんでしょう? すごいですよね。それは何かニオイがしたんですか、こいつはいいベーシストになる、みたいな。

古川:ギタリストの人間がいまして、そいつは、タカシとマコトの関係にたとえていいかはわからないんですけど、僕がちょっと不良と喧嘩したときとかに、最後までそこに残ってたやつだったりするんです。

石田:ああ、いい話ですねえ。

古川:なんかタカシのお母さんとタケル(タカシの兄)が亡くなっちゃったときに、マコトがずっとついてるじゃないですか(『キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇』のエピソード)。それはちょっと自分にも照らし合わせたというか、子どものときの「こいつ最後まで残ってんな」っていうのは、なんかすごく覚えていて。

石田:それ、曲に書いてます?

古川:いや、書いてないです。

石田:えー、書いてよ(笑)。

古川:そこですよね……! だから、まだまだ自分は、あんまり自分のことを歌うっていう感じというよりは、ちょっと1個ファンタジーっていうか、「こんな俺だったらいいのに」とか「こんな世界に行ってみたい」みたいな。

石田:でも、今の話ってブルース・スプリングスティーンとマイアミ・スティーヴ(スプリングスティーンの相棒のギタリスト)みたいな感じじゃない。もったいないよね(笑)。

古川:なんか、やってみようという気になってきました(笑)。でもそこがいつも悩みで。美しいものは作りたいんですけど、自分をどこまで出すかっていうのが。

石田:でも、出す曲、出さない曲を使い分けられるわけだからね。ストリッパーだって脱いだり着たりするじゃん。今日は気合入れて見せちゃおうかなあ、ぐらいの(笑)。デビューが、何年でしたっけ?

古川:2011年にCDを初めて出しました。

石田:でも10年だと、デビューして以降、CDの市場が上がった年って1年もないじゃないですか。僕も実はそうなんですよ。デビューする2年前が出版のピークで、それ以降25年ぐらいずっと下がり続けている中で仕事している。下りエスカレーターに乗って上ってるだけなんですよね。上っても上っても、高さはあんまり変わらない。そこで何とか生き残っているんで、そこの頑張り感みたいなもの、このつらさみたいなのって、なんかつくづく感じますよね。僕は比較的うまく生き残れてるほうだと思うけど。

古川:僕、どの話でかは忘れたんですけど「最高の泥舟に乗ってる」みたいなーー。

石田:へえ、それはいい表現ですね。

古川:先生のです(笑)。

石田:僕が書いたの? 全然覚えてないけど(笑)。スピーチライターになろうかな。

古川:自分の作品が何か自分じゃない人が書いたみたいに見えることってあるんですか?

石田:あります、あります。小説の場合はやっぱり細部を忘れてしまうので。本当に10年前とか15年前に書いたのをたまに引っ張り出して読むと面白かったりしますよね。

ーー作品を重ねるなかで、そこにご自身の変化が出ているなあと思うこともありますか。

石田:うん、やっぱりだんだん緩くなってるんじゃないですかね。それは良さでも悪さでもあるんですけど、年をとるとだんだんと(文を)短く切れなくなってくるんですよ。なので、これがまた10年経ってもっと切れなくなると、普通に書いた小説が上下巻になる(笑)。そういうのも面白いかなっていう。

ーー古川さんはどうですか? メロディとか歌詞とか書きぶりの変化については。

古川:僕はどっちかっていうと、変わらないようにしてるタイプだと思うんですよ。本当に『池袋ウエストゲートパーク』を読んで思うのが、本当にすごくインプットが広い方だなっていうか、その時々の面白い話題とかを入れて、変わり続けているんですよね。自分はロックンロールとか、バンドでやってるとかってこともあって、変わりたいけど変われない部分もあったりするんですよ。

石田:ロックの場合は初期衝動みたいなものがとても大事じゃないですか。それがなくなってしまうと、どんどんパワーダウンしていく。そこを守りながら、新しいこともやっていくっていうのが必要なんでしょうね。僕も『池袋』を書いてる初期の頃は……僕、スプリングスティーンがすごく好きで、高校の頃初めて聴いて、今でも『Born to Run』はAB面全部歌えるんですけど、ロックの走り出す感じ、勢い、熱い風みたいな感じってあるじゃないですか。ああいう風を小説の中で吹かせたいなと思っていたんです。

古川:僕、ブルース・スプリングスティーンをちゃんと聴いたことがなくて。『Born to Run』、買って聴いてみます。

石田:あれ、1976年だからね。僕が高校1年のときですから。それは聴かないよね。でもね、彼は詞がすごくうまいの。ベトナムから帰ってきて、今テキサスの海辺の小さな小屋でエビ釣りの漁をしている、そこにベトナム難民の親子が来て、船で自分たちのエビを全部さらっていく。で、ある夜、ナイフを持ってその親子を刺しに行くの。でも子どもがお父さんのところに駆け寄るのを見て、やめて帰ってくる……っていう歌(「ガルヴェストン・ベイ」)とかさ。

古川:へえ~!

石田:そんなの歌われたら「へえ~」ってなっちゃうじゃん。そういう、普通の人の暮らしをちゃんと書くのが本当にうまいんだよね。

古川:遡って聴いたものもあるし、それこそ今みたいに誰かが言ったものを聴いて好きになったりとか、そういうことはあるんですけど、通ってないものはまったく知らなかったりするんですよね。

石田:そうだよね。でも、なるべく広げた方が本当にいいと思うな。

ーーこれをきっかけに新しい世界を知って、新しいTHE PINBALLSが生まれるかもしれないですね。

古川:なんか今日、お話させていただいて、もちろん刺激も受けましたし、枠をとっぱらっていろいろ柔軟にやってみるのも面白いなって思いました。音楽もそうだし、僕も何か書いてみたいなとか。

石田:小説をね。いいかもしれない。

古川:もともと本を読むの好きなので。今日先生のお話を伺って、そういうこともやってみたいなっていう気持ちにさせてもらいましたね。

■番組概要
TVアニメ『池袋ウエストゲートパーク』
2020年10月6日よりTOKYO MX他にて放送
・AT-X  10月6日(火)21:00〜(リピート放送)
毎週木曜13時00分〜/毎週土曜29時00分〜
・T O K Y O M X  10月6日(火)24:30
・サンテレビ  10月7日(水)24:30〜
・KBS京都  10月7日(水)25:35〜
・BS11  10月7日(水)24:00〜
・静岡放送 10月20日(火)26:40~ ※第二話以降毎週火曜日26:25~

<配信>
・Amazon Prime Videoにて地上波先行・見放題独占配信
TVアニメ公式サイト
TVアニメ公式Twitter @iwgp_anime

■リリース情報
『millions of oblivion』
12月16日(水)リリース
初回限定盤スペシャルパッケージ(CD+Blu-ray+ ポエトリーブック64P):¥4,800(+税)
初回限定盤(CD+Blu-ray):¥3,800(+税)
通常盤(CD):¥2,800(+税)

<収録曲>
01.ミリオンダラーベイビー
02.ニードルノット (※TVアニメ「池袋ウエストゲートパーク」 オープニング主題歌)
03.神々の豚
04.放浪のマチルダ
05.赤い羊よ眠れ
06.マーダーピールズ
07.ストレリチアと僕の家
08.惑星の子供たち
09.ブロードウェイ (※テレビ東京 水ドラ25 「闇芝居(生)」オープニングテーマ)
10.オブリビオン

<Blu-ray収録内容>
2020.10.3 Acoustic session Live “Dress up 2 You” @Motion Blue YOKOHAMA ライブ映像

<ポエトリーブック>
古川貴之・作「前世の記憶の少女」

<初回プレス分封入特典>(全形態共通):"millions of memories"ツアーチケット抽選先行予約シリアルナンバー 封入
その他、店舗別購入者特典など詳細はこちら
http://thepinballs.org/

■イベント情報
『全国ワンマンツアー THE PINBALLS Live Tour 2021 "millions of memories"』
2月5日 (金) 千葉 LOOK 18:30 / 19:00
2月13日 (土) 福岡 CB 17:30 / 18:00
2月14日 (日) 岡山 ペパーランド 17:30 / 18:00
2月 19日 (金) 仙台 MACANA 18:30 / 19:00
2月21日 (日) 札幌 SPiCE 17:30 / 18:00
3月6日 (土) 大阪 Banana Hall 17:00 / 18:00
3月13日 (土) 高松 DIME 17:30 / 18:00
3月14日 (日) 名古屋 Electric Lady Land 17:00 / 18:00
3月27日 (土) 長野 J 17:30 / 18:00
3月28日 (日) 金沢 vanvan V4 17:30 / 18:00
4月8日 (木) 渋谷 TSUTAYA O-EAST 18:00 / 19:00

<チケット先行(抽選)応募期間>
FC最速先行:2020年11月6日(金)20:00~11月 30日(月)23:59〆切
CD封入特典:2020年12月16日(水)12:00~12月 23日(水)23:59〆切
詳細はこちら
http://thepinballs.org/

■関連リンク
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石田衣良 Official HP
石田衣良 Twitter  @ishida_ira
『池袋ウエストゲートパーク』原作公式サイト

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